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2008年 11月 12日

大西成明写真集『ひよめき』『ロマンティック・リハビリテーション』

c0155474_019797.jpg大西成明さんの写真集を2冊味わった。
1冊は、「世界で一番美しい『脳』の写真集」と銘打たれた『ひよめき』(ピエ・ブックス 2004年12月)

「ひよめき」とは、幼児の頭蓋骨の頭頂部、骨と骨がまだくっついていないため、呼吸のたびにひくひくと動く部分をさす言葉。「泉門」とか「おどりこ」とも呼ぶらしい。

折口信夫の『死者の書』で、二上山に葬られた大津皇子の霊が墓穴でめざめ、岩を伝う雫の音を意識しながら、少しずつ覚醒していくさまを記した冒頭の部分

    足の踝が、膝の膕(ヒツカゞミ)が、腰のつがひが、頸のつけ根が、
    顳■〔需+頁〕(コメカミ)が、ぼんの窪が──と、段々上つて来るひよめきの為に蠢いた。

その「ひよめき」である。

ここに載っているのは、さまざまな角度から撮影された脳。側面、左右の半球、上面、底面……。ヒトの脳だけでなく、イルカの脳、ブタ、ウサギ、ウシ、サルの脳もある。

理科の時間に習ったのは、模式図だった。 理科室に置いてあるガイコツは、たたくと乾いたポコンポコンという音がしそうなもの。どちらも現実感はなかった。
人間ドックで見せてもらう脳のCTスキャンも、なーんてことはない。単にX線で輪切りされたコンピュータ画像じゃないか。。

それがどうだ! ここに並んでいるのは、さわるとぐにゅ、となりそうな、白子なんかよりずっと生々しい、ぬめぬめしたホルマリンにつけて保存された脳。思わず、キャッと目をそむけたくなるのに、不思議な磁力でひきつける。まじまじと見てしまう。きれいだけど、こわい。こわいけど、また見たくなる。

なんだって、ここが人間の中枢なんだろう!

『ロマンティック・リハビリテーション』(ランダムハウス講談社 2008年6月)は、先般、epSITEの個展で見て、感動したのでゲットしたもの。

見返しのあとの最初の見開きのセンター部分にそれぞれ

リハビリテーション

夢見る力

と入っている。

あれこれ書き記すよりも、20のリハビリの物語、それぞれの見出しを拾うのがいい。

音楽が生かしてくれた命  左手のピアニスト 舘野泉さんの冒険
壊れた脳とともに生きる   山田規畝子さんの暮らし
わが心、慰めかねつ    多田富雄さんのリハビリ闘争
この子たちの知性がわたしの腕の中に降りてくる   人見眞理さんと子どもたち
わたしのからだをさがして   小川奈々さんと中里瑠美子さんのリハビリテーション
詩が「もっと生きろ」とつぶやいた   須藤洋平さんの詩作
遊びをせんとや生まれけむ   金沢大学附属病院精神科の患者さんたち
身体は世界とのきずな   摂南総合病院での認知運動療法
医療への愛   森之宮病院でのリハビリテーション医療の構築
明日はきっと本当の路上に   運転シミュレータを利用する人たち
氷上の格闘技に燃える   アイスレッジホッケー「東京アイスバーンズ」の人たち
道具に命を吹き込む   中村ブレイスのものづくり
変えられるものは、変えていく勇気を   沖縄ダルクリハビリテーションセンターの人たち
語りあう、伝えあう   平澤哲哉さんと失語症の人たち
タッチしてごらん、ハグしてごらん   藤井輝明さんの課外授業
ロマンティック・サイエンスからの出発   森岡周さんの研究と授業の毎日
「病院」に五感の世界を取り戻したい   内藤久幹さんの「ホスピタリティ・デザイン」と関西リハビリテーション病院
移りりゆく命を舞いながら   出雲で暮らす人々
馬を命の使者として   琉球インフォメーションセンター「みちくさ牧場」のホースセラピー
再生への巡礼   玉川温泉・岩盤浴の人たち

A4サイズの写真集なので、当然、epSITEの展示よりずっと小さい。でも、あのときは見過ごしていた写真もあるし、展示されていなかったものもある。あらためて、文章を読み返すことで、新たな発見がある。

安易な言葉で使ってはいけないといましめつつ、この写真集から伝わってくるのは、希望である。

写真は公園の植物と、家の近くの木。曇天で見上げた枝がシナプスのようにも思えたのでぱちり。
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by sustena | 2008-11-12 00:09 | 読んだ本のこと | Comments(2)
2008年 10月 30日

epSITE「大西成明写真展」「亀山 仁写真展」

きのう、新宿に寄ったついでに、epSITEで、大西成明さんの「「ロマンティック・リハビリテーション」と亀山 仁さんの「水の回廊」 を観てきた。
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亀山仁さんの写真展は、ミャンマーのこどもたちや僧侶などの表情をとらえたもの。まっすぐこっちをみる眼にひきこまれてしまう。(10月30日まで)

大西成明さんは、1952年奈良県生まれ。1992年、動物園の動物たちのパーツから35億年の生命の記憶を伝える『象の耳』で日本写真協会新人賞を受賞。2004年には「世界で一番美しい脳の写真集」と銘打った『ひよめき』を出版。フライデーに連載した『病院の時代』では、日本全国の病院をたずね、医療空間で紡ぎだされる生命の物語を描いた。

そして、今回の「ロマンティック・リハビリテーション」では、重い障害や後遺症と日々格闘しながら、明日の可能性を信じて、人間のまるごとの存在をかけた真剣な営みとしてのリハビリを写し出す。リハビリは単なる機能回復ではなく、「夢みる力」なのだと、希望をひらく力なのだと教えてくれる。

高次機能障害を息子とともに生き抜く山田規畝子さん、左手でピアノ演奏を続ける舘野泉さん、免疫学者の多田富雄さんのキーボードに向かう手、失語症の患者の言葉を自分のもとに引き寄せようとする訓練……、彼らを支える医師や、療法士、家族の人たちとの生活に寄り添うように撮影された1枚1枚のなかから、選び抜かれたショットに(陳腐な表現で恐縮だけれど)胸を打たれる。笑顔がしみる。後ろ姿にふるえてしまう。

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by sustena | 2008-10-30 00:43 | Art/Museum | Comments(3)