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カテゴリ:読んだ本のこと( 405 )


2018年 04月 14日

広瀬 友紀『ちいさい言語学者の冒険―子どもに学ぶことばの秘密』

c0155474_15275044.jpg東京大学大学院総合文化研究科准教授の広瀬 友紀さんの『ちいさい言語学者の冒険―子どもに学ぶことばの秘密』(岩波科学ライブラリー 2017年03月刊)を読む。

幼い子どもが「これ食べたら死む?」なんて言う。単に大人が話している言葉を聞き間違えてそんなふうに言うのかな?と思っていたら、どうやら違うみたい。
言葉を身につける真っ最中の子どもたちは、耳にする言葉を聞きながら、自分で法則を見つけ言語獲得の冒険に出ているのだ!

この本で広瀬先生は、自身のお子さんや、他の言語学者の子どもの例、ネットで散見する例や、海外の事例をいろいろ紹介しながら、子どもの言語習得の秘密に迫っていく。

最初に出てくるのは濁点=テンテンの問題。
ひらがなに関心を持ち始めたころの子どもに
「●」にテンテンつけたら何ていう?
と聞いてみよう。
「た」にテンテンなら「だ」、「さ」にテンテンなら「ざ」とすぐ答えられる子どもでも、「は」にテンテンと聞くと、「わからない」とか、なぜかga(が)って答えてみたり、ha(は)を力みながら出すようなヘンテコな発音をしたりするんだって。

これはなぜか。
子どもがヘンなのではなくて、実は「ば」が特殊なのだ。
「たーだ」「さーざ」「かーが」のペアでは、口の中で発音に使う場所は同じで空気の流れが異なるだけなのに対して、「はーば」は、喉の奥と唇という、口の中のまったく異なる場所を使って発音されているのである。

子どもはテンテンの機能を、「発音の方法は同じまま、有声音に変化させるもの」としてその一貫性を見抜いているから、「は」にテンテンはとなると、まごついてしまうのだという。
実際、歴史的にみると、かつて「は」は「p」の音で(ひかりが「ぴかり」と光ったり、ひよこが「ぴよぴよ」と鳴くのはそれに関係がある)、その後「ふぁ」みたいな音に変化していき、最終的に現在の「は」になった。このような「は」の特殊事情について、大人は気づきもしないけれど、字をマスターする前の子どもだから気づいたというわけなのだ。

子どもが「死む」「死まない」なんていうふうに「死ぬ」を活用させてしまうのも、
「はさむ」「かむ」「飲む」「読む」という言葉をよく聞くなかで、
「飲んだ」→「飲む」「読んだ」→「読む」という規則を見つけてそれを一般化し、
「死んだ」→「死む」と推測しちゃう、つまり「過剰一般化」してしまうせいだという。

そう、子どもたちは過剰一般化が大好きなのだ。日本の子どもだけじゃない。英語圏の子どもでも、たとえばgoの過去形を「goed」なんて言っちゃう例がたんとあるらしい。

そんなとき、大人が正しい言葉遣いを教えようとしても、彼らはなんとしても自分で法則を見つけたり、自分でナットクしないと、正すことはないらしい。
ふむ。実に興味深い。

自分の子ども時代のことや、息子がどうだったか、もうすっかり忘れちゃったなー。
覚えているのは、息子が「エレベーターにお乗りください」を「エベレーターに乗りくらせー」って言ってたことぐらい。

もったいないことをしたなー。

第1章 字を知らないからわかること
第2章 「みんな」は何文字?
第3章 「これ食べたら死む?」―子どもは一般化の名人
第4章 ジブンデ!ミツケル!
第5章 ことばの意味をつきとめる
第6章 子どもには通用しないのだ
第7章 ことばについて考える力

いつのまにか終わっちゃったハナカイドウ
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by sustena | 2018-04-14 15:28 | 読んだ本のこと | Comments(0)
2018年 04月 02日

高橋源一郎 『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』

c0155474_11333057.png高橋源一郎の『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』(集英社新書 2017年12月刊)を読む。

朝日新聞に以前月に1回掲載していた論壇時評みたいな論考かエッセイかなと思って読み始めたら、小説というか寓話的な社会批評だったのね。

主人公のランちゃんは、ハラさんが経営する一風かわった小学校に通う。ここでは、みんなごろごろして本を読んだっていいし、がんじがらめの規則なんてない。そこでランちゃんは、友達のアッちゃん、リョーマ、ユウジシャチョーと、「くに」を作るプロジェクトを始める。

憲法はどうする?国旗は?名前は?
とりあえず、くにの名前を、『名前のないくに(仮)』と決めて、SNSで広報もスタートし・・・

そんななかで、ランちゃんは自分の家の冷蔵庫に貼ってある憲法のことや、くにって何だろうってことを、高橋源一郎みたいなお父さんや、友達といっしょに考えていく。

カントやルソーみたいな肝太先生や理想先生、皇太子一家やエリザベス女王、南方熊楠みたいなひとも出てきて、不思議な気分。でもふわふわした幸福な気持ちに包まれながら、自分にとってたいせつなくにって何だろうとか、ひととひとの信頼みたいなことを、ゆったりした流れの中で考えちゃう。そんなお話。

目次(最初の3分の1ぐらいまで)

いろんなことを最初に書かなきゃならない
「くに」ってつくれるんだ
最初に「こっき」をつくってみることにした
ぼくたちの学校
ぼくには得意ワザがない
肝太先生
肝太先生のおはなし
ぼくの家の「憲法」たちのこと、そして理想先生のこともちょっと
「憲法」の中にいる悲しいひと
キヨミヤくんのこと
ほか

公園では、猫ちゃんがのんびり
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by sustena | 2018-04-02 11:38 | 読んだ本のこと | Comments(0)
2018年 02月 25日

中川 右介『海老蔵を見る、歌舞伎を見る』

c0155474_11183078.jpg中川右介さんの『海老蔵を見る、歌舞伎を見る』(毎日新聞出版 2018年1月刊)を読む。海老蔵ファン、スター主義万歳を公言する中川さんが、ここ数年の歌舞伎--勘三郎。團十郎がなくなり、歌舞伎座新開場のちょっと前あたりから、現在までーーについて、海老蔵を中心に、歌舞伎の演目や出演する役者がどんなふうに決まるのかや、後ろ盾のいなくなった役者の苦労などを交えながらまとめたもの。

ちょうど10年ぐらい前から、せっせと歌舞伎を見るようになったので、おお、これはあの舞台だったなと、いろんなシーンがよみがえってきて、ワカルワカル、と思いながら読み終えた。

もっとも、私は海老蔵についてはそれほどファンじゃないので、第一部はちょっとかったるかったけど、第2部以降は、そだよねー、とツルツルと読了。

渡辺保的な見方だけが歌舞伎の楽しさではないぞ、という人におススメ。

目次
第1部 海老蔵を見る―現代の貴種流離譚
喪失からの出発/二つの自主公演/歌舞伎十八番の復活/新橋演舞場という解放区/猿之助とのクールな友情/貴種流離譚/歌舞伎座凱旋

幕間 玉三郎スクール

第2部 歌舞伎を見る―春秋戦国役者列伝
猿之助挑戦記/歌右衛門襲名夢譚/雀右衛門奮闘記/音羽屋繁盛記/高麗屋三代記/中村屋兄弟漂流記/新作競作合戦記
付録 歌舞伎座の歴史

写真はぷっくらかわいいエナガさん
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by sustena | 2018-02-25 11:20 | 読んだ本のこと | Comments(2)
2018年 02月 13日

やっと完結したクリフトン年代記

昨晩ジェフリー・アーチャーの「永遠に残るは」クリフトン年代記第7部の下巻を読み終えた。
第1部の「時のみぞ知る」が新潮文庫から出たのが、2013年5月だったからおよそ5年。半年から1年に一度続編が出て、それぞれ上下巻。かなりのボリュームであります。

最後のほうは、善人のほうの登場人物がみな功成り名を遂げ、順風満帆でいまいち面白みに乏しいのだけれど、いったいこの長編にどう幕を下ろすのであろうかという好奇心で、そして少々もたれたとはいえ、稀代のストーリーテラーのアーチャーのことだから、悪役にもそれなりの花をもたせてて、満足感イッパイ。

寝食も忘れて読み耽っちゃうのは第3部ぐらいまでだけど、昔ながらのすれ違い、姦計、ワナ、機知と勇気と、運命のアヤがてんこもりで、アーチャーの術中にハマって、のせられるのを楽しむのが正解かな。

第1部 時のみぞ知る Only Time Will Tell 2013年5月
第2部 死もまた我等なり Best Kept Secret 2013年10月
第3部 裁きの鐘は The Sins of the Father 2014年4月
第4部 追風に帆を上げよ Be Careful What You Wish For 2015年4月
第5部 剣より強し Mightier than the Sword 2016年7月
第6部 機は熟せり Comes the Hour 2017年1月
第7部 永遠に残るは This Was a Man 2017年11月

この写真は2月3日のもの。日当たりの悪い場所で雪かきで山になったところ以外はもうほぼ雪はなくなった
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by sustena | 2018-02-13 22:12 | 読んだ本のこと | Comments(2)
2018年 01月 08日

こわいもの知らずの病理学講義

c0155474_11504727.jpg阪大の仲野徹先生の「こわいもの知らずの病理学講義」(2017年9月刊)が、この手のホントしては異例のベストセラーだという。

仲野先生はhonzなどでもせっせとレビューを書いていて、いったいいつ研究する暇があるんだろう???とまったくナゾなんだけど、大学では研究のほかに、学生相手に「病理学総論」なる講義を行っている。その内容を「近所のおっちゃんやおばちゃん」にもわかるようにまとめなおしたのがこの本で、先生の種本である本文が900ページあまりの『Basic Pathology』のうち、第2章の細胞の損傷、適応、死、第4章の血行動態の異常、血栓症、ショック、第6章の腫瘍と、身近で大切な3章をピックアップし、生命科学を知るためのDNAや遺伝子、ゲノムと染色体、突然変異など、分子生物学の基礎知識を加えて、それだとめちゃむずかしそうになるところを、脱線に次ぐ脱線を繰り返しながら、すぐ目の前で講義してくれているようなトーンで解説してくれるのだ。病の成り立ちや人のからだが実によくできていることがすーっと頭に入ってくる。
ところどころ、ムズカシイ名前が出てくるけれど、病気の成り立ちの理屈そのものはとてもシンプルなので、ムズカシイ因子の名前なんかは無視して、ナルホドーと思いながら読み進めることができる。とくに、がんについては、がんもどき理論がいかにトンデモなのかということが、がんの多様性や進化についてきちんと説き起こされている。

ちなみに「こわいもの知らず」というのは、この本を読むと病気がこわいものではなくなるというような意味ではまったくなくて、病理医でもないくせに、大胆不敵にもこんな本を書いちゃう、しかもフツーだとつまらないので、批判承知で思い切ったことも描いちゃうもんねという仲野センセイがこわいもの知らずってことであります

この本が売れたら続編を出すと宣言してるので、続編に期待しませう!

序 章 病理学ってなに?
第1章 負けるな!細胞たち──細胞の損傷、適応、死
第2章 さらさらと流れよ血液──血行動態の異常、貧血、血栓症、ショック
インターミッション 分子生物学の基礎知識+α
第3章 「病の皇帝」がん 総論編─その成り立ち
第4章 「病の皇帝」がん 各論編──さまざまな進化の形

ジョウビタキが久しぶりに下池にいた
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上池ではいつもの枝でカワセミが小魚を狙ってた。ゲットしたあともすぐ飲み込まずに5分ぐらいくわえてたなー。
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by sustena | 2018-01-08 11:08 | 読んだ本のこと | Comments(0)
2017年 12月 25日

『働く君に伝えたい「お金」の教養-』

c0155474_17141326.jpgライフネット生命の創業者で、2018年1月から立命館アジア太平洋大(APU)の学長となる出口治明さんの『働く君に伝えたい「お金」の教養-人生を変える5つの特別講義』(ポプラ社 2016年1月刊)を読んだ。

もう老年にさしかかっている私が、今さら20代向けのお金のハウツー本をなぜ手に取ったかというと、博識でいつも論理がすごく明快な出口さんが、お金に関してどんなことを言っているのか興味があったから。

数年間、某金融の広報誌の編集を担当していたので、投資の話やお金に関するリテラシーをいかに高めるか、みたいな話はイヤになるほどチェックしたけれど、この本が日本にゴマンとあるマネーのノウハウ本と違うところは、投資や貯蓄の手法のあれこれを解説するのではなく、もっとも価値が大きく、成長性の高いのは自分への投資だと断言していること、そして、自分で一次データを見て、数字とファクトを把握して、自分の頭で考えることの大切さを口酸っぱく伝えていること。

ターゲットとなる若い読者と同じぐらいの編集者とライターが、出口さんに質問をぶつけそれに対する回答という対話式でめちゃ読みやすい。

大切なことがスッキリ、ストレートに語られていて、ストンと腑に落ちる。
読むと元気になって前向きな気分になれることウケアイ。
もっと若いときに、こんな本を読んでいたら、百人力だったなぁ。
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第1講 「知る」編―なぜ、お金には不安ばかりがつきまとうのか?
お金の不安はじつは「思い込み」だった!/日本って借金ばかり増えているらしいけれど大丈夫?/お金の正体ってなんだ?/不公平をなくすためのたった2つの方法 ほか

第2講 「使う」編―幸福かどうかを決めるのは貯蓄額ではない
知っておくべきセオリーは「財産三分法」だけ/バブルおじさんにだまされるな!ほか

第3講 「貯める」編―不安は貯めることへの執着から生まれる
本当にその「貯蓄」は必要か?/まずは貯蓄額を決めよう!/将来のためにいくら貯めておけばいい?ほか

第4講 「殖やす」編―希望は長期投資から育まれる

なぜ、投資が必要なのか/自分への投資で最大のリターンを/自分に投資すれば、人生の選択肢が増える ほか

第5講 「稼ぐ」編―働き続けるからこそ自由になれる

若者は「金の卵」である/やりがいのある仕事、やりたい仕事/一生働いて「フロー」を止めない生き方/ ほか



by sustena | 2017-12-25 17:15 | 読んだ本のこと | Comments(0)
2017年 10月 19日

上村修孝『昆虫の交尾は、味わい深い・・・。』

c0155474_22093019.jpg慶應義塾大学商学部・上村修孝准教授の『昆虫の交尾は、味わい深い・・・。』(岩波科学ライブラリー 2017年08月刊)を読む。

ページを繰るとまず目に飛び込んでくるのが6枚の写真だ。オニヤンマ、大カマキリ、ミンミンゼミ、アゲハチョウ、コクワガタ、クロヤマアリのオスの交尾器がどれかというクイズで、くねったチューブや左右非対称なトゲのついたもの、整然と並ぶノコギリの歯など、いずれも実に奇ッ怪な形で、それぞれまったく違う! 

正解は本文を読んでいく途中でちょっとずつ明かされていくが、読み進むうち、生き物にとって性とは何かやオスとメスそれぞれの遺伝子を残す戦略のユニークさ、進化の不思議に「おお!」と感嘆せずにはおれない。

ちなみに、交尾器の進化は、形の進化の中では最も速いんだそうだ。このため交尾器を観察しない限り種を見分けられないことも多いという。1000万種といわれる昆虫それぞれがオンリーワンの交尾器を持っているわけ。
            
形だけじゃない、昆虫の交尾姿勢もさまざまだ。例えばカブトムシはオスがメスの上に乗る。逆にコオロギやキリギリスの仲間の多くは、メスがオスの背後から背中に乗る。するとオスはフック状になった交尾器でメスの腹部をひっかけて自分の体に引き寄せる・・・と、今度はこれが刺激になってメスは小さなペニスみたいな突起をオスへと押し当てて精子の詰まった精包を受け取るのだ。

バッタの交尾は、メスの上にオスが乗っかるのだが、オスの腹部はS字を描き、その先端がメスの下側に絡み合っているし、トンボの場合は特有のハート型の姿勢だ(みんな、見たことある? これは、メスの腹端の交尾器とオスの副性器(ここに精子が移動している)がかみあって、オスが腹端でメスの頭部をつかまえるとこの形になるんだって。こう書いても、絵がないとわからないよいね。

交尾を成立を知るために「お尻にも眼がある」アゲハチョウのオスの話や、今年イグノーベル賞にも輝いたメスにペニスがあるトリカヘチャタテなど、へーえと思う話題がいっぱいだ。

上村先生が昆虫の交尾の研究にハマったのは、腹部の先にはさみを持つ、ハサミムシというマイナーな昆虫に出会ったこと。このハサミムシの交尾を邪魔すると、あわてて交尾を中断した二匹の間に何やら極細のピアノ線のようなチューブが見える。これはいったい何か?を探ることから研究がスタートした。それこそ、メスに挿入されて精子を渡すための射精管端枝だ。この先端を電子顕微鏡で見ると、耳かきのようなカエシがついている。研究の結果、これで別のオスの精子をかき出しているのだが、メスの受精嚢は細長くくねくねした迷路のようにひたすら長く、カエシはすべてをかき出せるほど長くはない。それはなぜなのか・・?

マレーシアに留学してトコジラミの交尾器を研究したときの話も興味深かった。
オスは動くものに見さかいなくとびかかって交尾を挑む。そしてメスの背中に乗った状態で、メスの右わき腹のスリットがある副生殖器めがけて、腹の先をカールさせ「スパーマリッジ」と呼ばれる器官に精子を注入する。ここは精子を捕食して消化する血球細胞のいるところなのだ。

さて、トコジラミの研究にあたっては、飼育するために必要なものがある。それは血! それまでは飼育担当の学生が血を提供していたのだが、就職で研究室を離れたため、先生が研究をしたいならご自分の腕を差し出さなければならなかった! トコジラミにさされながら研究を続けるうち、上村先生は左右にスパーマリッジのあるトコジラミを見つけ、左側のスパーマリッジの役割の探求にチャレンジする。有力な仮説を立てたところで、マレーシアを去ることになり、時間切れで仮説は検証できなかったらしいが・・・

ところで、交尾を研究するときどうするか。液体窒素を用意して、交尾のさまざまなタイミングでターゲットの昆虫を瞬間凍結するのだ!! 昆虫の身になると可哀そうなのか、交尾の途中での昇天でシアワセなのか・・・?


最終ページは袋とじ。ネコやイヌ、イノシシ、ヤマアラシ、ヒツジ、ワラビー、ガラゴの交尾器のイラストとその謎が載っている。でも哺乳類の交尾器の形の謎を解き明かすのは、寿命サイクルや交尾時期なども関係しているから、相当ムズカシイだろうな。
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この写真は、アミメが世界一美しいといわれるクモらしいんだけど(サツマノミダマシ?)、アミがきれいに撮れなかった。秋はジョロウグモの大きなメスが目立ちますね。近くに小さいオスが交尾のチャンスを狙っているけど、メスは動くものをすぐ食べちゃうので、食べられないようにメスの食事のときの交尾を狙うんだって。おっと、クモは昆虫じゃなかったっけ。



第1章 オスとは? メスとは? 交尾とは?
 [コラム] そこまでするか! ゲニタリ屋

第2章 交尾をめぐる飽くなき攻防
 [コラム] 昆虫の性転換と雌雄モザイク

第3章 パズルは解けるか? 長―――い、交尾器の秘密

第4章 北へ南へ、新たな謎との出会い
 [コラム] 現場をおさえろ! 交尾中の昆虫の固定法・観察法

第5章 主役はメス!――交尾器研究の最前線へ

あとがき
付録 昆虫の交尾器・精子を見てみよう



by sustena | 2017-10-19 22:10 | 読んだ本のこと | Comments(4)
2017年 09月 30日

ベストセラー2種

このところ小説から遠ざかっていたんだけど、話題になったものを2つ読んだ。

一つは、(ようやく今ごろになって・・・図書館の予約がやっと回ってきたのだ)村上春樹の『騎士団長殺し』。第1部「顕れるイデア編」第2部「遷ろうメタファー編」(新潮社 2017年2月刊)。

道具立てなど、さすがうまいものであります。ちょうど3か月前にイタリア旅行でドン・ジョバンニを観たこともあって、騎士団長を登場させたことに興味を惹かれたし(でも、プラハで観た人形劇のドン・ジョバンニのほうがイメージに近いな)、妻に去られた絵描き(肖像画専門)に、リッチな謎めいた依頼人、夜中に鳴る鈴・・・。
そして穴を通り抜けて・・と、ちょっと中期の作品に近い感じ。

比喩なんかはいつもの村上節で、つるつる読めるんだけど、絵解きをしようとするととたんつまらなくなる。パズルのピースは途中までするする埋めていけるけど、最後になんだか、ぽっかり穴が開いたまま、凝りすぎのピースが残っちゃうみたいな。
それと、ナチスの暗殺事件にかかわった老画家についても、ちょっと通り一遍というか、食い足りない部分があったなぁ。
でもこれだけ長いのに最後まで読ませはするのだった。

もう一つは、燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社 2017年6月刊)
燃え殻さんは、テレビ美術制作会社に勤めている人。昼休みに始めたtwiitterが共感を呼んで、13万5600人ものフォロワーを持つ。この小説もweb連載に加筆修正を行ったというが、140字ではないけれど、10行程度の段落ごとに、ひとつの情景が浮かんでくる感じ。

エクレアの工場でバイトの休み時間に文通欄を観ていた主人公が、釣り文句にひかれて文通を始める。相手のブスの元カノや、テレビの字幕制作会社で出会った仲間との思い出などが、たんたんとしたつぶやきみたいに綴られていく。90年代っぽいー。

目次は
最愛のブスに“友達リクエストが送信されました”
暗闇から手を伸ばせ
ビューティフル・ドリーマーは何度観ましたか?
好きな人ってなに? そう思って生きてきたの
そしてまたサヨナラのはじまり
「海行きたいね」と彼女は言った
1999年に地球は滅亡しなかった
ギリギリの国でつかまえて
東京発の銀河鉄道
雨のよく降るこの星では
東京という街に心底愛されたひと
あの子が知らない男に抱かれている90分は、永遠みたいに長かった
ワンルームのプラネタリウム
ボクたちはみんな大人になれなかった
君が旅に出るいくつかの理由
やつらの足音のバラード
永遠も半ばを過ぎて
必ず朝が夜になるように
バック・トゥ・ザ・ノーフューチャー

「初めて入る古本屋で立ち読みをした。店構えがいいラーメン屋を見つけてはふたりでよく食べた。美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたい」

↑この話をずーっと引き延ばしたようなお話です。といっては身もふたもないか。

「丸山町の坂の途中、神泉に近い場所に安さだけが取り柄のラブホテルがある。そこはかつてボクの憂鬱の安全地帯だった。
あの部屋の中で、彼女と一緒に過ごしていた時は、世界にふたりぼっちだった。
一度、大雨の夜にどうしようもない不安にかられて、誰もいなくなったオフィスから彼女に電話をかけた。「不安でさ、この仕事をずっとやっていける気がしないんだ。どうしよう」まくしたてるボクに彼女は「うんうん」と繰り返し話を聞いてくれた。そしてどんな愚痴でも、最後に「キミは大丈夫だよ、おもしろいもん」と言ってくれた。自分より好きになった人の根拠もない言葉ひとつで、やり過ごせた夜が確かにあった」

こんなセリフで切なくなる読者も多いのかなー

公園ではヒガンバナもアザミもフヨウもオシマイに。
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by sustena | 2017-09-30 17:15 | 読んだ本のこと | Comments(2)
2017年 08月 21日

最近読んだ本

最近、あまり本を読めていない。

大竹昭子『間取りと妄想』(亜紀書房 2017年6月)は、マドリストである大竹さんが、13の間取りから物語を紡ぎ出したもの。

船の舳先にいるような/隣人/四角い窓はない/仕込み部屋/ふたごの家
カウンターは偉大/どちらのドアが先?/浴室と柿の木/巻貝/家の中に町がある
カメラのように/月を吸う/夢に見ました

間取りを見ながら動線や、どんな風景が見えるのかを創造しながら読むのが楽しい。
どれもいろんな仕掛けがあって、ほぉ、そう来たか」、と作者のたくらみにニヤリとしてしまう。

恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎 2016年9月)は、浜松を思わせる架空の都市を舞台にしたピアノコンクールに挑戦する演奏家たちを描く。久しぶりに小説を一気読み。それにしても、よくもまぁこんなにも音楽語りが続くこと! 登場する音楽をもう一度ちゃんと聴いてみたいなと思った。

こだま『夫のちんぽが入らない』(扶桑社 2017年1月)は、タイトルには一瞬驚いたが(朝日新聞に広告が載ったけれども、タイトルは入れられなかった)、読むと、このタイトルしかないよねぇ。
コミュニケーションが苦手な主人公が、地方の大学に通うために下宿したときに出会った男性は、すっと人の心に入り込むのびやかな心のひとで、ひかれあうが、どうしたわけか性生活ができない。二人の出会いから結婚まで、そしてどうにか入れようともがく前半がとてもテンポがいい。
しかし、教師となった主人公が、学級崩壊に見舞われるあたりから、読むのがちょっとしんどくなる部分が。
装丁がとてもきれいー

ヒアリ騒動もあって、ガゼン、蟻がどのように増えるのか興味がわいたので、関連書籍を何冊か読む。
そのなかで、京都大学の松浦健二先生の『シロアリ 女王様、その他がありましたか!』(岩波科学ライブラリー202 2013年2月)は最高!
お恥ずかしいことに、この本を読んで初めて知ったのだが、シロアリはアリの仲間ではなくて、分類的にはゴキブリの仲間なんだって。

松浦先生は、小学校6年で岩田久二雄の『ハチの生活』という本に出会い、炬燵でシロアリを飼い始める、」シャーレの壁を上ることができないので、脱走する心配はないんだそうです。
多くのハチやアリのコロニーが女権社会であるのに対して(オスは巣を飛び立ってメスと交尾すると死んでしまい、メスだけでコロニーを創設する)、シロアリは一夫一妻で巣をつくり、王と女王が存在する。ワーカーや兵アリもオスとメスがいる男女同権社会なんだそうだ。
結婚飛行で同棲カップルが誕生する謎や、単独メスの巣でも卵が産まれる謎、女王が君臨している間、他のメスが二次女王となるのを抑止する仕組み、シロアリの卵に化ける、一見ボールのようなカビの話など、「へーえ」の連続なのだった。
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by sustena | 2017-08-21 11:04 | 読んだ本のこと | Comments(2)
2017年 06月 29日

村上慧『家をせおって歩く』

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アーティストの村上慧さんは、1988年生まれ。2011年3月に武蔵野美術大学を卒業したものの就職する気になれず、バイトをしながら芸術活動を続けようと仲間とアトリエを探し、格安の物件を見つけた。その契約日が、くしくも3月11日。当時、ツイッターなどでは「この震災から日本は変わる」という言説が飛び交っていて、村上さんも「ここから日本が変わるのか」と思いながら、家の改装・ペンキ塗りを進めていたという。

しかし原発事故は泥沼化し、次第にみんなその状態に慣れ、あんなにタイヘんなことが起きても日本はちっとも変わらない。でも、「震災でもこの国は変われない」とぶーたれるのではなく、村上さんは、社会のありように対する根本的な問いに対するアクションとして、発砲スチロールで家を作り日本のあちこちを歩いてゆく。

この絵本は、2014年4月から2015年3月9日まで、180回もの引っ越しをした記録だ。

目次は———

     はじめに
     家の紹介(高さ150cm、80cm×120cm)
     持ち物の紹介
     土地を探す
     間取り図を描く
     食べる
     眠る
     家の絵を描く
     歩く
     出会う
     乗り物を使う(トラック、フェリー、電車)
     家を守る(台風をやりすごす、家の修理)
     家を置いたところ全集
     いくつかのできごと
     わいちさん(大船渡市の片山和一良さんが自分でつくった大津波資料館の話)
     地図
     おわりに(大きさを155×135×80にしたことetc)


家に住むために大切なのは眠ることで、そのためには家を置く土地を借りなければならない。見知らぬ土地での交渉から始まるわけだが、幸いどの町にも協力してくれる人が現れる。
発砲スチロールの家にはお風呂もトイレもないので、銭湯や公衆トイレやコンビニを探すことになる。トイレやお風呂を見つけたら、それを間取り図に落とし込んでいく。お風呂場まで電車で20分ぐらいかかることも。とっても大きな間取り!

歩くときに注意しなければならないのは、自働車と風だ。歩いている時は視界が狭いので景色はあまり楽しめないのだが、のぞき窓となる通気孔ごしの写真も2点あった。ふーん、こんなふうに見えるのか。

「ナルホド」と思ったのは「家を守る」というパートである。台風をどうやり過ごすか?
「普通は台風などから身を守ってくれるのが家というものですが、この家の場合は私が台風から守ってやらないといけません」

家や土地って何だろう、ってことを考えながら読んだ。

おわりに、で村上さんは言う
「土地を借りる交渉をするということは、地域の中に入り込んでいくことです。それまでの生活との違いを感じながらも、そこに適応するために自分を変えるということです。
・・・(略)・・・新しい土地には新しい世界があります。そしてその新しい世界はまた、誰かにとっての故郷なのです。私たちはそれぞれに違う故郷を持ちつつも、ともに生きているのだと思います」

毎夏に、地元の小学校で行っている「まいまいハウス」のイベントがある。当初は自分で作った段ボールを背負い、近くの公園や神社の駐車場で過ごしたが、参加人数が増え、歩くのが危ないこともあって、体育館でのお泊りイベントになってしまったが、スタート当初、段ボールを背負った子どもたちが歩く風景はちょっと良かった。
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それと、近くの公園で毎年秋に開催しているアートイベントで、2004年にアーティストの高島亮三さんが「ジンネル」という作品を出したことも思い出した。
ケンネルならぬ「人寝る」で、入り口には犬マークならぬ人マークがある。ちょっと中で休んでみて、というわけである。アートもいろいろだー。
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村上慧さんのサイトはこちら→http://satoshimurakami.net/


by sustena | 2017-06-29 16:54 | 読んだ本のこと | Comments(2)