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2008年 09月 13日
平松剛さんの『磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ』(文藝春秋 2008年6月)を読む。平松さんの前作『光の教会 安藤忠雄の現場』で、建築の現場のことをよーくわかっている人(なんたって早稲田大学理工学部建築学科卒業後、修士課程を修了し、木村俊彦構造設計事務所に勤務していた建築業界の人なのだ)対象に肉薄してまとめたその取材の深さに舌を巻いたのだけれど、今回の作品も、磯崎新と丹下健三という二人の天才建築家の資質の違いや、コンペにかける思い、戦略、スタッフとのかかわりなどが、建築史の文脈の中で縦横自在に語られ、実におもしろかった。白状してしまえば、私は磯崎新の建築をかっこいいとか、美しいと思ったことはただの一度もなくて、頭でっかちな難解なキーワードをあやつる人という感じが強く、つくばセンタービルもこの都庁の案もいっこうに好きにはなれないのだけれど、すぐれた建築家で時代を拓いていくひとというのは、コンセプトをどう打ち立てるかが勝負みたいなところがあって、そのプロセスがわかったのは発見だった。 一方、「ぶっちぎりで勝とう!ぶっちぎりで勝とう!」と、連呼して突き進む丹下健三も政治の世界に強いひとぐらいとか捉えていなかったけれど、軸の構想力のすごさや、実に人間的なふるまいが印象的。 (ちなみに平松サンときたら、丹下健三のことを「三木のり平にちょびっと植木等をブレンドしたような風貌」だなんてしゃあしゃあと書くし、デザインとは建築における革命とはなんてことに悩む磯崎のことを「まこと、インテリとは、常人には考えも及ばない『悩み』をわざわざ生み出すものである」と、読者の気持ちを代弁してくれる)。 お台場のフジテレビ新本社ビルのキャプション。 「おい、磯崎、あそこに君の都庁が建ってるじゃないか!」 「いや、違うんだ。あれは丹下さんの仕事なんだよ(笑)」 フジテレビを磯崎の都庁だ(ほんと似ている)と指摘したのは、オランダのレム・コールハースである。 第1章 東京大戦 第2章 ぽんこつエリート 第3章 右往左往漂流記 第4章 帝国の逆襲 第5章 磯崎新の帰還 第6章 錯綜体 第7章 冬の王 第8章 遡行 第9章 反撃 第10章 都会のマジックアワー エピローグ 建築喜劇 これは、磯崎新の「山口情報芸術センター」。 山口出張のおり、タクシーから見たこのうねうねした屋根のフォルムが気になったので、タクシーを停めてもらって、パチり。運転手さんの曰く、「有名な建築家の先生が設計したんだけど、台風で屋根がめくれて壊れて大騒ぎになったんですよ」。迷惑そうに話していました。 ![]()
by sustena
| 2008-09-13 15:13
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