2008年 09月 13日
今頃なんだって「人形の家」?最初はちょっとアナクロでは~なんて思っていたけれど、堤真一と宮沢りえときいて出かけたのだけれど、ああ、原作もろくすっぽ知らずに……と、不明を大いに恥じたのだった。 実に現代的でスリリングで緊張感があって、すっかり引き込まれてしまった。 センターのステージ。舞台奥にも客席があり、四角いステージを取り囲むように観る。 幕があく前、 舞台を囲む白い帳の中で、子どもたちがボール遊びに興じている。突然の音楽。舞台に照明がつくと、そこはヘルメル家のリビング。ソファやクッション人形が散らばっていて、一家の幸せなくらしを、四方からじっと見ているわけ。 宮沢りえは、なんだかお金のことばかり気にしているかわいい小さなひばりちゃん。夫のトラヴァルが来月銀行の頭取に就任するので、やっとお金の気苦労から解放されるのが心底うれしくてたまらない様子。で夫のトルヴァルときたら、なんだかあまり威厳がなくて、なんだか仲良し夫婦みたいな感じ。 れれっ、こんな話だったのかしら? と思っているうちに、夫に先立たれて、苦労を重ねてきた親友のリンデ夫人が、就職の斡旋を頼みに訪ねてきて、なんだか甘ったれなノラのことを揶揄すると、いやいや私だってそんなに苦労知らずじゃないの。夫が大病したときの金策でたいへんな思いをした、なんて話をほのめかす。 そんなとき、詐欺を働いてトルヴァルに馘首にされそうなクロクスタがわけあり顔でやっくる。ここからだんだん舞台に緊張感がただよってくる。ノラはこの男に大金を借りていたのだ。しかも、父の同意が必要だったため、サインを偽造して。自分を取り立ててくれと夫に頼まないと、秘密をバラすと、クロクロタ。 夫に知られないように必死のノラ。あーあー、どうなっちゃのかしら……。 舞台は休憩を二度挟んで3幕。最後のシーンしか知らない私は、いったいいつノラが目覚めちゃうのか不思議でならない。でも、この圧倒的な緊迫感のただよう展開に固唾をのんで舞台を見守る。 3幕目後半。、自分が単に庇護されているだけの存在、あやしてもらうお人形さんにすぎず、ひととして見てもらっていなかったことをとことん思い知らされ、決然とこれまでの人生に別れを告げようとするノラの凛とした風情ときたら。 宮沢りえはすばらしかった。クロクスタ役の山崎一も、リンデ夫人のひとことで、ああ、ひとの表情はこれほど変わるのかと、強い印象を残した。 カーテンコールでは、みな普段着。この「人形の家」がいまのビビッドなテーマであることを伝えていた。 作:ヘンリック・イプセン 演出:デヴィッド・ルヴォー 美術:礒沼陽子 照明:小川幾雄 音響:高橋巌 衣装:伊藤佐智子 出演: 宮沢りえ :ノラ・ヘルメル 堤真一 :トルヴァル・ヘルメル 山崎一 :ニルス・クロクスタ 千葉哲也 :ドクター・ランク 神野三鈴 :クリスティーネ・リンデ夫人 松浦佐知子:アンネ・マリーエ(乳母) 明星真由美:へレーネ(メイド) +子役 LX3 夜景も手ぶれ補正が賢いのか、あまりブレない。
by sustena
| 2008-09-13 14:22
| Theatre/Cinema
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