2008年 08月 03日
写真評論家の飯沢耕太郎さんの『写真を愉しむ』(岩波新書2007年11月)を読む。写真を「見る愉しみ」「読む愉しみ」「撮る愉しみ」「集める愉しみ」と4つの愉しみ方を解説したもの。 「見る愉しみ」では写真展や写真ギャラリーをまわるおもしろさと、インターネット時代のwebの愉しみ方を、「読む愉しみ」では、写真集の歴史と写真集の形式を、「撮る愉しみ」では、写真を撮って表現するということがどういうことか、またポートフォリオにまとめることを勧めていて、「集める愉しみ」では、生のプリントの魅力を教えてくれる。 新書判なので、いささか記述は物足りなくて、そんなこと、アタリマエじゃない、と思うことも多いのだけれど、最近撮ることにハマっている私としては、やはり撮る愉しみについてまとめた章が心ひかれたのであります。 2つ印象に残っているコトバがある。 ひとつは、飯沢が、撮る人へのメッセージとして紹介した、ドイツの写真家アウグスト・ザンダーの「見ること、観察すること、そして考えること」という信条。 そしてまた、1920~30年代に、大阪浪華写真倶楽部、丹平写真倶楽部の中心メンバーとして活躍した安井仲治の「写真家四十八宜(しゃしんをうつすひとよんじうはちよろし)」という、いろは四十八文字から始まる写真家心得。その全文を書き写しておこう。 い いつそスラムプは大なるがよろし ろ ろくでもないもの感心せぬがよろし は ハツと感じたら写すがよろし に ニツコリ微笑む自身はよろし ほ ほんとに自分を生かすがよろし へ 下手な上手、上手な下手、どちらがよろし と 撮れぬものは撮らぬがよろし ち チクリと痛い批評はよろし り 理窟倒れも時にはよろし ぬ 塗つた薬は銀乳剤、時節柄無駄せぬがよろし る 類を以つて集ると雖も類作はせぬがよろし お 煽てられたら少しは乗つてみるがよろし わ 判るまで勉強するがよろし か カメラ自慢はせぬがよろし よ 夜るも写つるフイルムはよろし た 誰も出来ぬ事せぬがよろし れ 例会は真剣にやるがよろし そ ソツと控ゑ目、内容ある作品よろし つ 常にカメラと離れぬがよろし ね 熱心、粘り、は最もよろし な 夏の暗室出た時よろし ら ラクに出来てもいゝものはよろし む 無理よんにやつてもいゝものはよろし う 写るのはあたりまへと心得るがよろし ゐ 井の中の蛙、自惚れぬがよろし の のぼせた写真家冷すがよろし を 女の写真家もつと増へてよろし く 首にかけたカメラ伊達じやないと知るがよろし や やめたい人はやめるがよろし ま まるで下手でも根気ある人よろし け けつして油断をせぬがよろし ふ フイルムの供給円滑なるがよろし こ 斯の道ばかりと思ひ込むのはよろし え 英気養ふ日曜よろし て 敵も適度にあるがよろし あ アマチユアーとて甘やかさぬがよろし さ 醒めたる人々振ひ立つがよろし き 嫌ひな作品学んでよろし ゆ 夢をもつ作家大いによろし め 眼の肥ゑた人多い程よろし み 水あらひは叮寧(ていねい)にするがよろし し 失敗位は恐れぬがよろし ゑ 縁あるモデル手荒にせぬがよろし ひ ヒカリの画集は売行よろし も もう少しで推薦、残念なのもよろし せ セメテたまにはホメられてよろし す すぐに天狗にならぬがよろし 京 きようの写真より明日の写真よろし 飯沢は写真家になれなかったわけとして、「メカニズムを使いこなす能力」「場をコントロールす能力」「撮り続ける情熱」という3つの条件が欠けていたことを挙げていた。単に写真を撮っていることが好きでブログを続けている当方は、ハナからこんな条件には当てはまらないけれど、撮るワクワクは持っていたいなぁ。 下の写真は大泉学園。シネコンに行く途中、ひまわりがすっくと伸びていた。
by sustena
| 2008-08-03 17:14
| 読んだ本のこと
|
Comments(2)
Commented
by
nuts-co
at 2008-08-03 21:39
x
いろはの写真家心得。本を片手に写し取っていくのは、きっと楽しいひとときだったでしょうね。いろんなことを思ったでしょう。本の丸写しって、ちょっと考えるとただ面倒で退屈なだけのようだけど、どっこい、結構刺激的ですよね。これをこつこつ打っていたsustenaさんを思い浮かべると、いい日曜日って思います。この本、読んでみます。せっかく新しいカメラきたけど、勉強不足でうまく使えない。取説は不親切だし。
0
Commented
by
sustena at 2008-08-03 23:16
私はいつも読みっぱなしで、すぐどんな本だったかとか忘れちゃうのよね。なので、せめて書き留めておくことでボケ防止になるかと・・。ところでこの本、カメラのことに詳しくなるためにはまったく役に立たないよ。図書館あたりで大判のムックを借りるのがおすすめです。
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
全体 GRDIIレッスン LX3 カメラ・レンズ・写真レッスン 看板・サイン・ポスター Theatre/Cinema/Music Art/Museum 読んだ本のこと 食べ物 旅 小さな自然 まち散歩 つれづれ 以前の記事
最新のコメント
お気に入りブログ
みてみてリンク
タグ
銀座(597)
花(373) 鳥(226) GRDII(189) ランチ(172) ショーウィンドウ(164) 顔(133) 酒肴(88) 京都(88) モノクロ(83) 公園(81) 西荻窪(76) 空(74) 工事中(57) 桜(52) 中国(48) 建築(47) 新宿(47) 夕景(44) 渋谷(41) 記事ランキング
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||