2008年 05月 17日
国立劇場の平成20年5月の文楽公演・・夜の部を観る。 「心中宵庚申」と北條秀司 十三回忌追善公演の「狐と笛吹き」である。 ●心中宵庚申 上田村の段 竹本 住大夫/野澤錦糸 八百屋の段 豊竹嶋大夫/竹澤宗助 道行思ひの短夜 竹本津駒大夫/豊竹英大夫 おかる 文雀 兵右衛門 紋寿 半兵衛 勘十郎 お千代 簑助 ほか ●狐と笛吹き 清志郎、鶴澤清治、文字久大夫、咲甫大夫 呂勢大夫 ほか。 「心中宵庚申」は近松門左衛門最後の世話物。旅の途中に妻お千代の上田村の実家を訪ねた半兵衛は、そこで姑のおかるに家に帰されたお千代に会って驚く。家に連れ帰ったものの、おかるは、お千代を離縁せよと迫る。養子の身の上では、おかるに逆らうことができない。夫婦愛と親への孝行の狭間で、二人は死を選ぶことになるのだった。 というストーリー。たったこれだけのことで死ぬなよー,と理不尽にイライラしちゃうお話で、そういう現代の目でみるとなんだかなーのお話なのに、勘十郎と簑助が出てくると、ハッと空気が一転、実にリアリティのある話として、引き込まれてしまうから不思議。 八百屋の段の最後。「去った去った、出て失せい」と言った言葉を取り消してほしいというお千代に半兵衛がいう。「女夫連れでこの家を去る、と思へばよいわいの」このあとの義太夫がよかった。 手に手を取つてこの世を去る、輪廻を去る、迷ひを去る…… 勘十郎の動きは本当にほれぼれしてしまう。簑助は登場するだけで幸薄いお千代そのもの。最後の心中の場面、お千代が死んでも簑助は人形の横にじっとしている。魂がまだそこにじっととどまっているよう。お千代を抱え、かぶさるように死んでいく半兵衛の耳元で何かを語りかけているようなのであった。最後、足がわずかにうごいたような木がしたのも、なまめかしかった。 「狐と笛吹き」は、狐と人間の愛を描く民話。笛の名手・晴方は亡き妻に生き写しのともねに出合う。実はともねは小狐。人間と愛を交わしたら、その人も死んでしまう・・・・。 このホン、セリフが口語だったので、ものすごおーーーーく違和感があった。夢幻のような舞台であってほしいのに、口語になると興ざめ。とはいえ、鶴澤清治の三味線は絶品だった。
by sustena
| 2008-05-17 23:51
| Theatre/Cinema
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