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2008年 04月 05日

宮部みゆき『楽園(上下)』

なんと7カ月半もかかって、ようやく図書館から借りることができた宮部みゆきの『楽園』(2007年8月 文藝春秋)を読了。 c0155474_0442510.jpg

『模倣犯』でも登場したフリーライター・前畑滋子のもとに、事故で死んだ12歳の息子が、予知能力を持つ超能力者だったかもしれないので調べてほしいという依頼が舞い込む。16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、絵を描いていたというのだ。

息子の生きた軌跡をいつくしむ母。娘を手にかけざるをえなかった夫婦、殺された娘の妹、その友達、弁護士……、いろいろな人間が登場するが、いつもながら、まるで古くからの知り合いのようにたしかな存在感で描き分けられており、性格までも「ああ、あの人」と眼前に思い浮かぶよう。

ところで、私は「模倣犯」は、読みかけて投げてしまった。今回も、超能力という設定(「魔術はささやく」とか、こういう設定をけっこうは宮部は好むフシがある)がピンとこなくて、しかも、いつの間にか、少年に心や記憶を読む能力があったことが前提になっていることにはじめはかなり違和感があったのだが、読み進むにつれ、人間の業がしんしんと迫ってきて、結局イッキに読んでしまった。

なんといっても、死んだ少年の母の、萩谷敏子の造形が見事だ。おろかしそうに見えて、実は、物事の本質をスッとつかんで、どこまでもまっすぐな母。終章のエピソードが、いつまでも心に残る。

もうひとつ、フリーライターである滋子が、前の事件に傷つきながらも、再び書くことを選ぶ、その書かずにいられない作者の性が、溢れ出ているようだった。


写真は、明治神宮前近く。
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by sustena | 2008-04-05 00:44 | 読んだ本のこと | Comments(2)
Commented at 2009-06-19 05:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sustena at 2009-06-19 21:25
宮部みゆきという人は、すごくじっくり、積み上げていくひとだなーと思います。けっこう好き嫌いがわかれるようで、うちの息子は、東野圭吾のようなスピード感がないのはダメみたい。


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