2008年 01月 17日
東京都写真美術館監修の『写真の歴史入門』 の4部作のうち、第3部「再生」-戦争と12人の写真家を読む。(新潮社 とんぼの本 鈴木佳子・著 2005年7月) これは、写真が誕生してから現代までの写真の歴史を、誕生-創造-再生-混沌に分けて読み解いたもので、第3部は、1930-1960年代、太平洋戦争を経て、敗戦体験を表現の原動力した12人の写真家の代表作を紹介しながら、フォトジャーナリズムの勃興を綴ったもの。 12人は、次の通り。 小石清、河野徹、木村伊兵衛、林忠彦、植田正治、浜谷浩、桑原甲子雄、熊谷元一、中村立行、大束元、福島菊次郎、東松照明 いずれも日本の写真の歴史を語るうえで欠かすことのできない写真家で、一度見たら強い印象を残す写真ばかり。見たことのあるものも多かった。とはいえ、それぞれの写真家が、太平洋戦争にどう向き合ったのか、一人ひとりの足跡をたどると、知っているつもりの写真が、そうでなかったことに気づかされる。 たとえば、誰しも名前だけは知っている木村伊兵衛。合成写真と修正写真が当たり前だった軍の参謀本部肝入りのプロパガンダ雑誌『FRONT』では、木村が撮った完璧なフレーミングの作品も無残にも切り刻まれたが、そうであればなおさら、木村はどこを切ろうとしても切れない写真をめざしたということ。 大束元は、最新鋭の偵察機に搭乗してB29を追跡し、400ミリの望遠レンズで機体番号を撮ることが任務だったという。その後アメリカ軍の超低空からのじゅうたん爆撃がはじまるが、その間も空からの撮影を続けていた大束は、「上空から見た炎上の光景は言い尽くせないほど美しかった」と述懐していたという (だが、彼は空襲で両親を失うという経験をしているのだ)。そんな体験を知ればこそ、彼の「東京雪景」や「雪の幻想」の美しさは、格別なものと思える。 著者の鈴木佳子さんは、ニューヨーク大学大学院Studio Art専攻修士課程を修了し、現在は東京都写真美術館のキュレーターを務める。先日の「土田ヒロミのニッポン」も、彼女が企画を担当。土田さんのギャラリートークを仕切っており、土田さんにも負けぬオーラを放っていた。すごい存在感で圧倒されてしまった。 こんないい写真を見たあとでは、下手くそな写真はあまりにブサイクなので書影だけにする。
by sustena
| 2008-01-17 22:40
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