2021年 04月 14日
なんといっても最高だったのが、36年ぶりとなる仁左衛門と玉三郎コンビによる「桜姫東文章」で、これは早々と全日程売り切れとなったのだけれど、3列目の花道寄りの席をゲットでき、感涙。 この「桜姫東文章」は、四世鶴屋南北が、「隅田川もの」という歌舞伎の定番のお家騒動のストーリーを縦糸に、「僧の清玄が桜姫に恋をして破戒する」という桜姫の恋物語を組み合わせ、面白ければご都合主義だろうと論理が破綻しようとかまわないもんね、演出のワザとセリフで恍惚とさせちゃうもんねという、さすが南北のホンの力で異様な盛り上がりを見せる作品なんだけど、私が初めて2009年勘三郎主演のコクーン歌舞伎で観たときは、ストーリーの予習もろくすっぽしてなかったからハッキリ言ってワケワカメだった(串田演出だったから、かなりのアレンジもされてた)けど、今回はまず前編をコンパクトに約2時間にまとめてあってわかりやすかった。 冒頭、行方不明になった清玄と稚児の白菊丸を探す場面からスタートする。二人は江ノ島で心中しようとしているんだけど、白菊丸が、清玄の名前が書いてある香箱のフタを手に先に海に飛び込んでしまい、清玄もあとに続こうとするけど、足がすくんじゃって果たせない。 そこから17年経って、口上のあと、浅葱幕が落ちて、舞台がパーッと明るくなる。 そこは新清水寺の境内で、桜姫が若いみそらで出家しようとしている。周囲が必死になって止めようとするが桜姫の決意はめちゃカタイ。そこに登場した清玄、桜姫の話を聞いて出家もやむなしと念仏を授けると、その功徳で、それまで固く閉じられていた桜姫の左手が開く。すると、中から出てきたのは清玄と記された香箱のフタだった。桜姫は白菊丸の生まれ変わりだったのか!と驚く清玄。 この桜姫と一緒になろうとしているのが入間悪五郎というお家乗っ取りをたくらむ悪い侍(以前一度婚約の話が持ち上がったのだけど、桜姫がかたわだからダメと断っていた)。もう一度自分と一緒になってほしいという恋文を、権助というイケメンの悪党に渡して取次ぎを頼む、ということで、次の草庵の場面に。 草庵で桜姫は出家の準備をしている。そこへやってきたのが権助。出家のさわりになるから手紙なんか見たくもない、捨ててくれ、という桜姫に、権助があるお話を語ってきかせる途中、権助が片肌を脱ぐと、腕に釣鐘の刺青が。なんと権助は、以前屋敷に忍び込んで桜姫をレイプした男だったのだ。 しかし桜姫は権助が忘れられず、自分も同じ刺青をしていること、権助の子供を産んでいまは別の人に預けてあることを話し、出家をやめるから夫婦にと、権助に迫る。ジャーン、ここからが濡れ場の始まりー。 そこに、清玄を失脚させて自分が後釜に座ろうと考えている悪い坊さんの残月と、桜姫お付きの女中の長浦、そして入間悪五郎たちがやってくる。権助は逃げたけど、桜姫の相手は誰?となって、落ちていた香箱のフタから、清玄が女犯の罪を問われることに。清玄は桜姫をかばおうとして、自分じゃない、と否定せず寺を追われる。桜姫も清浄な場を汚した罪で追い出され、二人の転落と流浪の人生がスタートする。 このあと、お家乗っ取りの秘密が書かれた密書や桜姫の産んだ赤子がいろんな人の手に渡るだんまりの場面や、赤ん坊を抱いた清玄と桜姫がすれ違う場面が出て、ああ、このあと二人はどうなるのー!!、ってところで幕。次回、下の巻は6月公演。 仁左衛門と玉三郎の若々しさ、みずみずしさったらない。 とくに仁左衛門は、清玄のときの高貴なこと! それが一転、釣鐘権助になると、悪の香りが華やかに匂いたつキケンないい男に。玉三郎の桜姫は、出家を決めたときの気品にみちた雰囲気から、相手が権助だと気づいてから目が異様な輝きだし、みだらになっていくその変化がすごい。 濡れ場が美しかったなぁ。権助が足を桜姫にのっける場面は実に色っぽかった。 仁左衛門はどの場面もすばらしいんだけど、清玄が白菊丸の生まれ変わりの桜姫を守らなければならないという思いから、それが嵩じてさらに桜姫に恋することが自分の運命だと、狂うほどまでに一途に思い詰める、その変化が実に説得力があった(36年前は見ていないけど、たぶん、今のほうが伝わる演技だったんじゃないかなぁ)。赤子を抱いて桜姫の片袖を持って「桜姫、ヤァーイ」と道をかけていく場面は悲痛で胸に迫る。 すばらしい舞台だった!かぶりつきでウットリ―♪ 下のポスターは若いときのもの。一瞬で、年月を飛び越えちゃう。 さて、今月の第一部は、猿之助目当てにいったのだけれど、個人的には勧進帳の幸四郎が大収穫。幸四郎は弁慶ってニンじゃないと思うけど、智略にすぐれた弁慶の大きさや胆力、繊細で豪快な感じがよく出ていた。義経が見破られたかと、富樫と対峙する場面も迫力。最後の飛六法もまだ若いだけに元気。これまで以上に客席が湧いていたような気がする。 絵本太閤記は扇雀の久吉が存在感があった。菊之助の武智十次郎の死の覚悟もいい。光秀役は芝翫。(3階席からだとやはりちと遠くて、迫力がいまいちだったように思ったけど、これは前日遅くまで仕事をしていて、私がフラフラだったからかも) 桜姫つながりで桜の写真を。 第一部 ■小鍛冶 童子実は稲荷明神猿之助 三條小鍛冶宗近中車 巫女壱太郎 弟子笑三郎 弟子笑也 弟子猿弥 勅使橘道成團次 ■勧進帳 [B日程] 武蔵坊弁慶幸四郎 富樫左衛門松也 亀井六郎友右衛門 片岡八郎高麗蔵 駿河次郎廣太郎 常陸坊海尊錦吾 源義経雀右衛門 第二部 ■絵本太功記/尼ヶ崎閑居の場 武智光秀芝翫 武智十次郎菊之助 初菊梅枝 佐藤正清彌十郎 真柴久吉扇雀 皐月東蔵 操魁春 ■団子売 杵造梅玉 お臼孝太郎 第三部 ■桜姫東文章 上の巻 清玄/釣鐘権助仁左衛門 入間悪五郎鴈治郎 粟津七郎錦之助 奴軍助中村福之助 吉田松若千之助 松井源吾松之助 局長浦吉弥 役僧残月歌六 白菊丸/桜姫玉三郎
by sustena
| 2021-04-14 10:10
| Theatre/Cinema
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Comments(2)
写真を先に見てから文章を読むタイプなんで、え、ちと二人とも若すぎないか。この弁慶、昔の幸四郎そっくりじゃないか。親子って、そっくりになるんだなあと思って、本文を読んでなるほど、早とちりだったか。haha
女形に限らず舞台化粧というのは若いころは下の素地が浮き出してきて幻想的なんだけれど、爺婆になると素地の劣化が仮面マスクに化けて芸になるんだと思ってます。 南北は去年、器用作家芦辺拓がミステリの単行本を出して、買おうか買うまいか悩んで、まあ、二年くらいで文庫になってからでいいかと思ってたんですが、この記事読んで今日は高輪の亀塚古墳と芝の芝丸山古墳をまわってから、丸善・紀伊国屋と回る予定だから、買ってしまおうかなとまた迷いだしました。haha
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sustena at 2021-04-16 17:14
「鶴屋南北の殺人」ですね。歌舞伎関連のミステリって、戸板康二と松井今朝子しか読んだことがないな。ちと興味が。
南北だと、おどろおどろしそうな話かしらん? |
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