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2020年 07月 13日

3つの「ラ・ボエーム」

新型コロナで「ステイホーム」が基本となって以来、ワタシの無聊をなぐさめてくれるのが、欧米の劇場のオンライン配信である。とくにNYのメトロポリタンオペラ(MET)は毎日日替わりでオペラをやっていて、時間帯も日本で鑑賞するにぴったり。

オペラに疎いワタシだったけれど、常識を広げる意味で聴き始めたら、昔は耳にきんきんとくるようで苦手だったソプラノの高い声をわーっと響かせるところも、おお人間の声はどんな楽器よりすごいー♪とウットリするようになったし(もっとも好みの声というのはあります)、なんといっても演出や舞台美術によって大いに印象が変わり、仕事そっちのけで聴いている。

そんな中で、パリ・オペラ座とイギリスのロイヤルオペラハウス(ROH)とMETで、プッチーニの「ラ・ボエーム」が公開され、非常に興味深かった。

「ラ・ボエーム」は有名なオペラの一つ。アンリ・ミュルジェールの『ボヘミアン生活の情景』(1849年)をベースにしたもので、詩人のロドルフォと画家のマルチェッロ、音楽家のショナール、哲学者のコッリーネの4人が暮らすパリの屋根裏部屋が舞台だ。駆け出しの芸術家たちは貧乏で家賃を3カ月もためて、クリスマスイブなのにストーブにくべる薪さえもなく、ロドルフォが原稿を燃やしてあたたまってる始末。あらすじを一挙にはしょると、そのうちの一人のロドルフォがお針子のミミと恋に落ちるが、彼女は病に侵されており、自分と暮らすと病が悪化するばかりだと、ロドルフォはうそをついてミミと別れる。最後の幕で、瀕死のミミが屋根裏部屋に運ばれてきて、二人は出会ったときのことを思い出し愛を確かめるけど、悲しいかな死んでしまうというお話。

こういうボヘミアンの若者たちの恋模様を描いたものなのに、最初に観たパリ・オペラ座の「ラ・ボエーム」は、なんと、宇宙基地が舞台だった!クラウス・グートの新しい発想の演出だそうで、地球との交信が途絶えてしまい、乗組員達はこの広大な宇宙の中のどこかの惑星に取り残されて死を待つしかないという絶望的な状況にあることが、宇宙船の窓の上にテロップで出る。そんな中でロドルフォが、かつてのミミとの愛を回想するというもの。
(どうもクラウス・グートはこのアイデアを惑星ソラリスから思いついたらしい)
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フランス語の字幕だけだったので(涙)、だいたいどんな場面かはわかるものの、元のオペラをどんな風に改変したのかよくわからない・・・。街に繰り出すシーンも宇宙船の船内で、いったい何なんだ??と、ハテーなのだった。

演出:Claus Guth
指揮:Gustavo Dudamel
ミミ:Nicole Car
ムゼッタ:Aida Garifullina
ロドルフォ:Attalla Ayan
マルチェッロ:Arthur Rucinski
ショナール:Alessio Arduini
コッリーネ:Roberto Tagliavini

演奏:パリオペラ座管弦楽団
合唱:パリオペラ座合唱団


ロイヤルオペラハウスの「ラ・ボエーム」は、屋根裏部屋のスタイリッシュなこと。また繰り出す街もカラフルで、歌手たちのアンサンブルが素晴らしい!
ミミを演じるニコール・カーは、オペラ座でミミをやった人。でも断然ROHのほうが訳に入り込めていた感じ。相手役のロドルフォを演じるマイケル・ファビアーノは、すごく熱っぽい演技をする人。(めちゃ勉強家で頭もよいそうだ)。マルチェッロ役のマリウシュ・クヴィエチェンは野生的な役がよく似合う。昨日見たMETの「エフゲニー・オネーギン」でもタイトルロールがばっちりハマッてたなぁ。マルチェッロの恋人役のムゼッタも自由奔放でマル。
演出はリチャード・ジョーンズ。
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Director
Richard Jones

Designer
Stewart Laing

Mimi
Nicole Car

Rodolfo
Michael Fabiano

Marcello
Mariusz Kwiecien

Musetta
Simona Mihai

Conductor
Antonio Pappano

Chorus
Royal Opera Chorus

Orchestra
Orchestra of the Royal Opera House

最後に観たのがMETで、ここでもロドルフォはマイケル・ファビアーノ。演出はフランコ・ゼフィレッリで、18世紀のパリっぽさはMETが一番。ミミはソニア・ヨンチェヴァ。このひともうまくて、先日オンラインで観た椿姫の2人の主役と同じで、息がぴったりあってました。ただ、マルチェッロ役のルーカス・ミーチャムは、売れない芸術家にしては恰幅良すぎのような・・。ムゼッタ役のスザンナ・フィリップスは明るくて華やかだったなぁ。この人の「コジ・ファン・トゥッテ」のフィオルディリージも感じがよかったー。
他にアレクセイ・ラヴロフ、ルマシュー・ローズ
2018年2月上演
指揮は マルコ・アルミリアート
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by sustena | 2020-07-13 16:21 | Theatre/Cinema | Comments(2)
Commented by iwamoto at 2020-07-14 14:52
その宇宙もの、凄いですね。

このオペラを見ると、「葛城ユキ」の「ボヘミアン」を思い出します。
でも歌を辿るといつの間にか「辺見マリ」の「経験」にすり替わってしまいます。
Commented by sustena at 2020-07-15 09:01
葛城ユキの名前はもう記憶の彼方という感じです。
観る順番としては、MET→ROH→宇宙もの
だと、すごくよく分かったんだろうけど。
この2カ月で、同じオペラの違う演出をいくつも観ることができたので、へーえ、と思うところがいろいろです。


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