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2014年 07月 30日

ちょっと映画の話────愛蘭土がぶ飲み紀行#10

ロバート・フラハティ監督の話が出たところで、このあたりで映画の話を。アイルランドが舞台の映画はいくつもあるけれど、有名どころでは、独立戦争前のアイルランドを舞台に、片田舎の村の人妻とイギリス人将校の恋愛を描いた「ライアンの娘」(1970)、IRAものとしては、IRAの殺し屋として、スクールバスを誤爆させたことを契機にIRAを去り、警察からもIRAからも追われる身になって・・・というミッキー・ローク主演の『死にゆく者への祈り』(1987)、IRA暫定派のテロがひき起こした事件で犯人として逮捕されたジェリー・コンロンとその父親の、無実を証明しようという戦いを描く「父の祈りを」(あら、3つともイギリス映画だった)、イギリスからの独立をめざした1916年の「イースター蜂起」の立役者を描いた「マイケル・コリンズ」(1996 こちらはアイルランド、イギリス、アメリカの合作)などが思い浮かぶ。

アイルランド映画で最近見た中では、19世紀のダブリンを舞台に、ホテルマンとして男装して一生を過ごした女性をグレンク・ローズが演じた「アルバート氏の人生」(2011年)がヨカッタ。

古いところでは、(これは私は見てないんだけど)、アイルランド移民の子という自らのルーツを作品にダブらせたとされるジョン・フォード監督の「静かなる男」(1952)が有名だ。アメリカ育ちのショーン(ジョン・ウェイン)がルーツであるアイルランドの村を訪れ、そこでメアリー・ケイト(モーリン・オハラ)という娘と恋仲になる。しかしメアリーの兄はショーンを気に入らず、ついに二人は決闘を果たすが、エンエン戦ううちに仲よくなるという話らしい。

この作品の撮影が行われたのがコングという美しい町だった。コングとは、ゲール語で水と水との間の土地という意味で、アイルランドの有名なリゾート地のひとつらしい。ジョン・ウェインがモーリン・オハラをお姫様抱っこしている彫刻があったよ。
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車で10分ほど離れたコリブ湖のクルーズでは、若い時に「静かなる男」に村民の役で出たという老人がアコーディオンを弾いてくれた。こんどDVDを借りてみてみようっと。
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映画の話で思い出すのは、「風と共に去りぬ」の主人公のスカーレット・オハラが、アイルランド移民で綿花栽培で成功した大農場の娘という設定だったことだ。負けず嫌いで、 わがままでジコチューで、情熱的で、いかにもアイリッシュの血が流れていると感じさせてくれる映画。その有名なラストシーンが、南北戦争で北軍に破れ、夫レッド・バトラーも彼女のもとを去ってしまう。そんな絶望の中で、再びキッと立ち上がって誓うのだ。タラに帰ろう、明日は明日の風が吹くTomorrow is another day!、と。

ここでタラというのは、スカーレットの生まれ故郷のジョージア州の架空の地名だったが((それとも農場名だったかしらん? )、アイルランドでタラといえば、古代のケルト人たちが王を選出し、戴冠式を執りおこなってきた「タラの丘」のこと。晴れた日には国土の70%が見渡せるといわれる。7 割はにわかには信じがたいけれど、この小高い丘の上に立つ石に手を置き、その石が震えた人が、王となる資格を持つという伝説があるんだそうだ。風が吹きわたりとても気持ちがよかった。まさにアイルランド人の原風景とされる場所なのだった。
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ところで、映画の話ついでに、もひとつおまけ。
1912年に処女航海で氷山にぶつかって沈んじゃったタイタニック号は、北アイルランドのベルファストにあるハーランド・アンド・ウルフ造船所で建造されたそうな。ベルファストにタイタニック博物館があってそこも見学したのだった。20世紀初頭のベルファストの様子や産業、タイタニック号ができるまでの工程、船内の様子などを実感できる博物館で、なかなか臨場感たっぷりだったよー。

これはバスの中からみた造船所。
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タイタニック博物館
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館内
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当時の船旅のポスター
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ゴンドラに乗って(テーマパークみたい)造船工程を見学。これは狭い場所でのリベット打ち。
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沈んだとはいえ、世界一のものを造ったのは、ベルファストの誇りなんだろうなぁ。
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ベルファストなど北アイルランドは土地も比較的豊かで産業も進んでいたから、イギリスが手放したくなかったわけなのだ。たぶん。

by sustena | 2014-07-30 23:55 | | Comments(2)
Commented by iwamoto at 2014-07-31 06:21 x
「クワイエットマン」のことですが、Wikiしたらイニスフリーという街の話、とありました。
イニスフリーといえば、イェイツの、あのイニスフリー以外にはありませんよね。
もし、映画を見ることがあったら、そこんとこご確認くださいませ。
「タラ」のこと、そういう意味が込められていたのですか、知りませんでした。
「風と共に去りぬ」に、興味が持て無くて、気にしたことがなかったのです。
「タイタニック」では、アイルランド系の音楽をとても意識していましたね。
次の記事は「U2」の特集かしらん、なんて思ったのでした。
あの田舎バンドが世界的名声を得たのはどうしてなんでしょうね。
Commented by sustena at 2014-08-01 22:19
ご指摘の通り、ジョン・フォード監督と脚本家のフランク・ニュージェントは、原作の村の名前をイェーツの有名な詩から拝借してイニスフリーと名付けたそーです。コングで6週間ロケしたうち、一日中晴れた日はわずか6日だけだったそうです。
ところで、音楽については語るべきなーんにも持っていなくて、ビートルズのリンゴを除く3人のメンバーがアイルランドと関係がある、なんて話をいまさらしても・・ということで、次はケルティックタイガーの話です。


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