2014年 01月 02日
このところ恒例となっている1月2日の恵比寿の東京都写真美術館詣で。この日はタダなのである。東京都現代美術館も東博も無料なんだけど、写真美術館だと展覧会3つが無料となるので、おトク感が増すのであります。 いまやっているのは「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ-写真であそぶ-」「路上から世界を変えていく日本の新進作家vol.12」「高谷史郎 明るい部屋」。 植田正治は1913年に境港に生まれ、中学校時代にカメラを入手。生涯アマチュア写真家として、故郷の山陰を舞台にさまざまな写真表現に挑戦 (扉の一部が顔に見えるような写真もあったっけ)。ことに、鳥取砂丘で家族をオブジェのように配置した演出写真で有名になる。 一部カラー写真もあるけれども、大半がモノクロ。「童暦」シリーズの、家や駅、遠くの丘がシルエットになった写真が好き。降る雪の音や、風の音だけ聞こえるような静謐な世界。 一方のジャック・アンリ・ラルティーグは1894年フランスの裕福な家庭に生まれる。4歳のころに父親に買ってもらったカメラに夢中になり、幸福な一瞬が失われていくのを留めたいと家族や知人たちとの日常生活を熱心に撮る(なんと8歳のころに撮った写真もあった)。1963年、ニューヨーク近代美術館での個展で世界的な評価を得るが、基本はアマチュア写真家という。植田と比較して大きく異なるのが、植田の写真が時間を永遠に閉じ込めて凍りつかせたような風合いなのに対して、ラルティーグの写真は「動」の写真だということ。テニスや水泳、ボブスレーなどのスポーツをしている写真を撮ったものだけでなく、人物も常に動き、表情が豊かで、プリントされた写真も、今にも迫ってきそう。そして、いいものを見続けてきたひとらしいスタイリッシュさがある。 二人ともけっこう長生き。植田は2000年没。ラルティーグは1986年没。 「路上から世界を変えていく」で紹介されるのは5人の作家(大森克己・林ナツミ・糸崎公朗・鍛治谷直記・津田隆志)。 林ナツミは「本日の浮遊」のひと。今回はビミョーに違う2枚の写真を並べて左側の写真を左の目で、右の写真を右で見ながら寄り目をして立体視させるものが何点かあったんだけど、私はうまくできずざーんねん。 大森克己はピンクの半透明なアメリカンクラッカーを風景とレンズの真ん中において、それによって起きるハレーションを取り込んだ風景写真のシリーズ。ピンクの丸い光がいつもの風景を異化せさせる不思議。 津田はひとびとに「あなたがテントを張れそうだと思う場所」を訪ね、そこに宿泊して記録した写真シリーズで有名なひとだが、今回は、組み写真のとなりにQRコードで読み取るように指示があって、ガラケーでは面倒なので、素通りしちゃったからよくワカラナイ。 鍛治谷は、全国あちこちの地方の裏通りや歓楽街に見かける、ちょっとへんてこでキッチュでシュールな看板、装飾、ショーウィンドウやチラシといった風景の断片を壁イッパイに貼り出したもの。あるある~と思いながら眺めた。 いちばんおもしろかったのが、糸崎公朗さん。「非人称芸術」という独自の概念を提唱して、どこにでもありそうなゴタついたお店や街の一角、ちょっとさびれた商店街、看板や人々を立体物にする「組み立てフォトモ」を手がけるひと。写真を何枚も組み合わせて視点をずらしていき、たどっていくと昆虫のクローズアップになる 「昆虫ツギラマ」、身長3センチ、1/60スケールの人形を路上に置いて撮った「60倍の惑星」では、道標やマンホール、遊具が、異なる惑星の不思議な物体に見えてくる。 いちどきに3つ見るのはしんどくて、最後に見た「高谷史郎 明るい部屋」は、意図はわかるんだけど、なんだかアタマが時化つけるのを拒否しちゃったよー。
by sustena
| 2014-01-02 23:39
| Art/Museum
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Comments(2)
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