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2013年 02月 14日

隈 研吾『小さな建築』

c0155474_2305894.jpg「負ける建築」や「弱い建築」を唱えている隈研吾さんの『小さな建築』(岩波新書 2013年1月22日刊)を興味深く読んだ。

冒頭、隈さんは、画期的な発明や科学技術の進歩、天才の個人的な才能や創意の結果として建築が前に進んできたのではなく、実は大きな災害こそが建築を転換させてきたのではなかったかという事実を指摘する。
たとえばリスボン大地震。ロンドンやシカゴの大火、関東大震災・・・。こうした災害を契機に、建築は「強く合理的で大きな」世界へと突き進んできた。

しかし、3.11によって、この強さをめざして、近代合理主義で突っ走ってきた大きなシステムそのものが、大自然の前ではまるで無力だったことが誰の目にも明らかになった。しかしその予兆は前からあった。建築や都市計画の世界は気づくのが遅すぎたのである。新しい未来は、巨大なインフラに頼った砂上の楼閣ではなく、生物が自ら巣を作り、自らエネルギーを手に入れる能動的な小さな存在を志向していくなかにこそある。

ではいま求められる「小さな建築」とは何か?どんな単位が適切なのか?

そこで隈さんは、人間がハンドルしやすい大きさとしてレンガを思い浮かべる。自由に重さを変えられるレンガがあったら・・・。そして工事現場のポリタンクを見てひらめくのである。水を出し入れでき、レゴみたいに組み立て自由なウォーターブロックのユニットはどうか?

こうして2004年にパシフィコ横浜で開かれたデンタルショーのブース用につくられたのが初代ウォーターブロック。その後2007年のミラノサローネで、積み上げられたブロックに蜷川実花の「さくらん」を映写したり、MOMAのハウスデリバリー展では、その発展形として、壁だけでなく木が枝をのばすように斜めにのびていき、屋根をかけることもできるウォーターブランチを開発。さらには、内部で水を循環させることのできる実験住宅につながっていく。

こんなふうに、隈さんが実際にトライした「小さな建築」の実例が、「積む」「もたれかかる」「折る」「ふくらます」といったキーワードを軸に紹介される。

たとえば、大きなものに「もたれかかる」ことによって、やわらかで自由な形が出現する。しかし、樹木や崖のような垂直な部材がある場合はいいが、地面そのものにもたれかかろうとすると屋根裏のような窮屈な空間しかつくれない。そこでひらめいたのが、トランプでつくるカードキャッスル。フィレンツエでは、なんと石を10㎜まで薄く切り出して、石のカードキャッスルをつくってしまったのである。高岡ではアルミを使い、どんな方向にも三角形の一辺をのばしていけるジョイントをつくり、ポリゴニウムの棚や家を考案。

2枚の壁を斜めにもたせかけると、構造的には安定するが頭が壁にぶつかるような窮屈な空間になってしまう。かといってコの字を寝かせたようなトンネル状の構造は、壁と屋根の接合部に弱点ができ、倒れやすい。しかし、二枚の壁を平行ではなくちょっと斜めにずらして向かい合わせると、強さが生まれる。この平行-直角をちょっとずらし、紙でつくったハニカム構造を芯にしてFRPでくるんだ現代版韓流障子でつくったペーパーパビリオンはまるで蛇のように森の中にのびていき実に楽しい。

このほか、飛騨高山の木のおもちゃの千鳥をヒントに3本の木の棒をジョイントして木を織る技術を工夫して、2010年のGCミュージアムや太宰府のスターバックスで角材を織り込んだ空間に活かした話、タイルを2枚貼り合わせて平べったい雲のようなオブジェに仕上げた話、そして二層の膜構造の白いピーナッツのような茶室をつくった話・・・・。

どれも隈さんの巧みなゴタクでへーえ・・と思ってしまう。(もっとも、ゴタクほどにはできたものはいまいちな感じもあるんだけどね。)クライアントはこの隈哲学にナルホドと洗脳されちゃうに違いない。
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写真はこの本でも紹介されていた銀座のティファニーのビル。このビルの改修にあたっては、既存の外壁を壊してはならないという制約があった。そこでアルミのハニカムのパネルを108個、ビルの前面にとりつけた。特別なヒンジによって、自由な角度でコンクリートの壁と接続できるところがミソという。

目次
■はじめに──悲劇から始まる建築士
■積む
小さな単位/水のレンガ/小さな住宅―ウォーターブランチ/流れ、自立する建築
■もたれかかる
強い大地にもたれかかる/生物的建築―アルミと石の「もたれかけ」/蜂の秘密―ハニカムが生み出す空間
■織る
木を織る―「千鳥」のミュージアム/雲のような建築―タイルを織る/カサ・ベル・トゥッティ―ウラー・ドームから傘のドームへ
■ふくらます
フランクフルトのふくらむ茶室/空間を回転し、開く

by sustena | 2013-02-14 23:06 | 読んだ本のこと | Comments(10)
Commented by ken_kisaragi at 2013-02-14 23:57
自分もね、LEGO住宅は考えた事があるんですよ
大工ノウハウの無い人でもLEGOチックに組み立てられるログハウス!
建て方だけではなく、暮らし方迄含めた研修をパッケージにして販売する、
売れそうだと思いませんか?
しかし諸々の認可や規制の壁、障害やアフター・ケアー等の販売責任を考えると、なかなか難しい。

そう遠く無い老後、固定資産税0円に近い田舎に引っ越し、LEGOハウスを作ってみたいですね、
オモチャじゃないけどオモチャみたいな小さいお家・・・ええなぁ〜。

Commented by sirokabu2011 at 2013-02-15 19:22
好い雰囲気のカットとと思いました、最後はいろんな顔がありますね(笑)
Commented by esiko1837 at 2013-02-15 20:22
建築物を撮ったのに、全く歪んでいませんね。
素晴らしいです。
爽快な写真です。
Commented by Lucian at 2013-02-15 20:24 x
円形のステージのような構造物の製作を引き受けたことがあります。
部材を全部ロール曲げするとコストがかなり高くなるので、
考えた末に12角形と9角形の組み合わせにしたら、
機能が同じでコスト削減ができ、予算に合わせることができました。
Commented by sustena at 2013-02-15 22:37
kenさん、家はメンテが肝心。レゴをポコッとはずせるように取り替えられるといいとは思うけど、そのレゴにしても大きなお城を組み上げて、途中をちょこっと色を変えたいときなど、えー、また崩すのー、って面倒になっちゃう。いかに任意のパーツを簡単に取り替えられるかが大事かもしれません。
Commented by sustena at 2013-02-15 22:39
sirokabuさん、最後は、元の外壁と取り付けたパネルの隙間から覗いたもの。ピンが合いにくかったです((;^_^A)
Commented by sustena at 2013-02-15 22:40
esikoさん、1枚目などは、パネルがあちこちの方向を向いてるから、単に目立たないのかもー。
Commented by sustena at 2013-02-15 22:43
Lucianさん、いつも感心するのは、隈研吾や伊東豊雄にしろ、ああいう設計を施工しちゃう職人技。構造計算のひともすごいですけど。職人技をどう継承していくかが大きなテーマだと思います。
Commented by iwamoto at 2013-02-16 20:28 x
サステナさんの文章が上手いです。
すらすらと頭に入り、そして再構築される。
いかにも推敲されてない文章なので、元のセンスですよね。
Commented by sustena at 2013-02-16 22:52
iwamotoさま、推敲してないどころか、意味不明なままほったらかしにしているお見苦しい文で申し訳ありません~。
最後の茶室の話では、自然素材をつかわずに茶室をつくれってオーダーだったそーです。そこで、使うときだけふくらます茶室を思いついたんだって。
個人的には、別の本にも出てた傘のドームが好き。震災のときなど、傘を持ってきてつなぎあわせてシェルターにしちゃうの。


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