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2013年 01月 31日

『生命のサンドウィッチ理論』

『生命のサンドウィッチ理論』_c0155474_1254520.png人工生命や半生命から「生命とは何か」についてアプローチしている複雑系の科学者で東大大学院教授の池上高志さんの文章に、画家の植田工さんが2年がかりで絵をつけた科学絵本『生命のサンドウィッチ理論』(2012/10/20 講談社)をわくわくしながら読んだ。

冒頭、世の中は非線形なシステムでできているということから語り始める。非線形システムとは部分がわかっても、それが組み合わさった全体はよくわからないシステムのこと。そこに物質やエネルギーが流れてくると、予想もつかないパターンが出現する。たとえば熱いみそ汁の入ったお椀を上から見たときの蜂の巣のような六角形、川の流れのところどころにある石のうしろにできるカルマン渦列。そういったパターンを「散逸構造」と呼ぶ。

考えてみると生命も非線形システムだ。このシステムが音や光や触覚などの情報の洪水にさらされ、その結果、つくり出されるパターンが感覚とか知能、記憶、意識をつくっていく。ってことは、そもそも生命も一種の散逸構造なの???

意味や情報はソフトウエアで、からだはハードウェア。でも生命にあっては、ハードウェアとソフトウェアはもともとは同じ材料でできていた。ソフトウエアが自発的にパターンを生成してそれがまたハードウェアにフィードバックされる。つまり生命は非線形なシステムが自律的につくるパターンなのだ。生命を理解するには、ソフトウエアとハードウェアのパンに挟まれたサンドウッィチの具である自律的なパターンこそ大事。

ということで池上先生は、まるで生き物のように動く油滴や、PCの中で生命のように動くライフゲームに代表されるオートマトン、ビデオカメラとスクリーンを組み合わせて自分で心の時間をつくり出すMTM(Mind Time Machine)と名付けたシステムなどを考案し、それを観察して生命の謎に迫ろうと考えてる。

DNAや生命を構成している分子・原子から語るのとは違うアプローチで生命とは何かについて考えている池上先生の口癖は、「ラーメンの具全部入りで見えてくる世界がある」。

文章はバックグラウンドを知らないと、ときどきハテーと思うところもあるけど、なんたって絵がすばらしい。おすすめです。
『生命のサンドウィッチ理論』_c0155474_21462974.jpg


by sustena | 2013-01-31 21:47 | 読んだ本のこと | Comments(8)
Commented by higphotos at 2013-02-01 11:03
んー、非線形?、カルマン渦列?
まるで寿限無寿限無と唱えているような。

頭の良い人が難しいことを研究するのは当然だし、ありがたい。
問題はそれがどう役に立つのかが凡人には理解できないないので、
なかなか素晴らしさを共有できないこと。

ラーメンの具全部入りならは共有できそう。
Commented by iwamoto at 2013-02-01 20:09 x
台所で洗いものしてると、水がつくる色々な形が面白いですね。
洗いもの、得意です。 料理を作るほどの才能はありませんが。
役に立たないことを考えるのは、人間の特質、そして特権?
Commented by Lucian at 2013-02-01 20:53 x
科学は生命現象の物質的な一部分しか説明できないと思います。
本質を理解するには形而上学的な思考と洞察を必要とします。
外堀を埋めるヒントにはなりそうですね。
Commented by jmiin at 2013-02-03 21:39
こりゃぁ公共に時刻を刻んでいる鞄なのですか?
なんだか不思議ですが奇特な感じもしますね^^;
Commented by sustena at 2013-02-03 23:19
higphotosさん、この先生の「動きが生命をつくる」という本は、まったく意味不明でした・・・・。なので、同じ先生がよくぞこんな科学絵本を書いたものだという驚きのほうがハッキリいって大きかったデス。
Commented by sustena at 2013-02-03 23:20
iwamotoさん、ワタシは、洗濯は好きじゃないけど洗濯機がぐるぐる回ってるのをボーッと見てるのはけっこう好き。
Commented by sustena at 2013-02-03 23:23
Lucianさん、生命科学関係の取材をしていても、生命の全体性はちょっと別物なのかしらーと思うことはたびたび。iPS細胞にしても、どーして初期化されるのか原理がわからないそーですし・・・、再生医療も、成長因子などがどのタイミングできくかわからないけどドバッとまとめていれたら、なんとなく目的の細胞や組織になったなんて話もあったり。
Commented by sustena at 2013-02-03 23:28
jmiinさん、あまりに目を引いたのでつい撮ってしまいましたが、これはホンモノではなくて、プリントしてあるんです。このブランド、時計だらけのプリントのバッグもあるみたいです。


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