2013年 01月 23日
『鴨川ホルモー』『プリンセス・トヨトミ』の万城目学さんと、『キッドナッパーズ』の門井慶喜さんの二人が、5大都市(大阪・京都・神戸・横浜・東京)のオススメ近代建築をめぐって紹介する『ぼくらの近代建築デラックス!』(文藝春秋 2012年11月30日刊)を読む。 万城目さんは1976年、大阪府生まれで京都大学法学部卒業。門井さんは1971年、群馬県生まれで同志社大学文学部卒業。二人ともそれほど近代建築に詳しいとは思えないが・・・。 実際、あとがきの対談を読むと万城目さんは大阪市の中央公会堂ぐらいしか知らないレベルだったそうな。でも、門井さんはなかなかの博覧強記で勉強熱心。たぶん近代建築を見たりその関係の本を読むのがお好きなんだろう。建物の意匠についてはともかく、建築家のこと、どんな経緯で建てられたか、といった方面の蘊蓄をタップリ聞かせてくれる。そこに、万城目さんが突っ込んで、ミーハーチックだけどにぎやかしい対談となっている。オールカラーで、建物の中や前での2ショットも臨場感があって楽しい。 たとえば大阪では、旧シェ・ワダ、大阪市中央公会堂、難波橋、高麗橋野村ビルディング、新井ビル、堂島薬師堂、大阪府庁本館、大阪城天守閣、旧第四師団司令部庁舎、芝川ビル、大阪農林会館、綿業会館と行った具合。交互にオススメ建築を紹介しあいながらそこの現場でおしゃべりする体裁。 (このあとの京都から訪問する建築は10個になる)。ラインナップに天守閣が入ってくるところがちょっとフツーのガイド本とは違っている。だってこれも昭和6年に建てられ、中が鉄筋コンクリートのビルだから、分類として正しいんだって。 京都では京都大学の近くの進々堂からスタート。門井さんが学生時代は百万遍に下宿していて、古書店をあれこれ回ってこに到着するころにはおカネがなくなってしまうい入ることができなかったなんて想い出話が披露される。24万円もする全種毛雨を買って、2カ月間食パンとマーガリンと塩だけで暮らしたこともある、なんて話が欄外に補足されていて、イッタイこれは建築ガイドなのかーなんてゆるーい雰囲気。 そうそ、以前、京都で泊まったときに散歩して何だろう?思っていた建物が九条山浄水場ポンプ室であることがわかった。蹴上から阪をのぼったところから見える宮廷建築風建物で、設計は片山東熊。琵琶湖の第二疏水が明治45年にできたとき、御所まで水を引いて紫宸殿に万一のことがあったときに備えようとしたんだけど、紫宸殿は周囲の建物に比べて高くて、その藁葺き屋根に水を届かせるには琵琶湖疏水の水圧では足りないことがわかって、山の高い場所にため池を造ってポンプで水をくみ上げて一気に地中管でバーッと落とそうと考えてつくっただって。でもって、疏水に向かって玄関ポーチがついているのは、大正天皇の即位のときに琵琶湖側から舟で疏水を通って京都にやってくるという計画があったから。(結局実現しなかったんだけど)。 こんなふうに、軽いノリの話にフムフムケラケラと読み進むうち、ときどき、そうだったのか!って話が出てくる。横浜のドックヤードガーデンは、犬の散歩コースかと思ってたなんて万城目さんがいうそばから、クレーンがなかった当時、船の甲板から二本のロープを降ろし、ロープに板を渡して足場にして作業していたのだが、そのとき40フィートの高さから落っこちたのが若き吉川英治だった、とかね。 大阪や神戸など知らない建物も多いので、ぜひいつか行ってみたいなーと思ったことでした。 2010年から2012年まで、とびとびで『オール讀物』に掲載したものを書籍化。
by sustena
| 2013-01-23 23:16
| 読んだ本のこと
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Comments(2)
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