2013年 01月 04日
東京都写真美術館で1月2日から4日まで無料上映されていたのが『ハーブ&ドロシー─アートの森の小さな巨人』。2008年にたしかユーロスペースで公開され話題を呼んだので覚えていらっしゃる人も多いだろう。 郵便局員のハーブと図書館司書のドロシーの二人は、30余年の歳月をかけ、夫のサラリーで現代アートの収集を続ける。その基準はといえば、1LDKのアパートに収まるサイズであること。 二人は毎日のように美術館や画廊をめぐり、気に入った作品があれば、作家のもとを訪れ、全部の作品を、それこそなめまわすように見つめ、気に入った作品を買い求める。 彼らが現代アート作品を収集するのは、転売して儲けるためではない。身の回りに置き、アートと呼吸していたいのだ。 そうして集めた作品はなんと4000点を超える。そのメインは、ミニマルアートとコンセプチュアルアート。決してわかりよいものばかりではない。でも独自の美意識で現代アートの初期から集め続けた作品群の資料的・美術的価値はきわめて高く、ついにはナショナルギャラリーから寄贈の申し出を受け、二人はそっくり寄付してしまう。 ヴォーゲル夫妻の熱意たるやすごい。クリスト夫妻も猫の世話を条件にただでプロジェクトの原画をあげてしまったくらいだ。人懐っこく、美術を愛し、作家のまるごとを理解しようとする二人は、作家からも愛されていた。 『ハーブ&ドロシー』は、NYで映像制作の仕事をしていた佐々木芽生さんがそんな2人を追い、作家やキュレーターにインタビュー重ねてまとめたドキュメンタリー。 その続編が、もうじき公開される予定という。ナショナルギャラリーだけでは収容しきれず、全米50州にコレクションが広がることになった50×50プロジェクトと二人のその後を追ったドキュメンタリーだが、全国公開する予算を捻出するため、webでクラウドファンディングの手法で資金を集めている。 http://motion-gallery.net/projects/herbanddorothy5050 この手法で、アメリカでは制作費をまかなったという。 「『ハーブ&ドロシー50×50』(原題)を製作するにあたって、この4年間、アメリカの多くの財団に助成金を申請したり、企業協賛をお願いして廻りましたが、その大変さは、ここでは言い尽くせないほどです。興味を持ってもらえるのは、20~30回に一度、という状況。そんな中で救われたのが、クラウドファンディングという資金調達の方法でした。アメリカで2011年の秋に、キックスターター(Kickstarter)というサイトを通じてご支援をお願いした結果、世界中の730人ものサポーターの皆さんから、8万7千ドルを越える資金援助を頂きました。そのおかげで、製作がストップしていた映画は、撮影を終え、編集をスタートすることができたのです」 参加は500円から可能とのこと。鑑賞券とひきかえと思えば、悪くない支援方法だと思うな。 写真はハーブともドロシーとも関係がない。越後妻有のボルタンスキーの「最後の教室」の入口近くのもの。
by sustena
| 2013-01-04 21:40
| Theatre/Cinema
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Comments(2)
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by
Lucian
at 2013-01-06 21:17
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美術館といえば、十和田現代美術館で奈良美智の特別展をやっていたので行ってきました。
ttp://towadaartcenter.com/web/exhibition.html 何と、フラッシュを焚かなければ撮影OKでした。 ある人が「ブログ掲載はいいのか?」と訊いたら、 「思い出として載せるならばいいんじゃないでしょうか。」 との回答を頂いたそうなので、会場の雰囲気だけわかる感じなら記事にできるかもしれません。
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sustena at 2013-01-06 21:22
最近少しずつ撮影OKのところが出てきましたね。ブログやfacebookなどでの宣伝効果を狙ってのものはアップしてもいいかなーと思うんですけど、著作権はたしかに悩ましいです。
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