2012年 03月 21日
とゆーわけで昨日国立劇場で見てきたのが、 三月歌舞伎公演「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」であります。通常は「熊谷陣屋」だけが上演されることが多いが、国立劇場は、通し狂言は無理でもなるべく前後の段も入れて話の筋がよくわかるように、ふだん演じられることの少ない場面も上演するのが常なので、今回も、序幕「堀川御所の場」、二幕目「兎原里林住家の場」(通称、流しの枝)、そして、三幕目に「生田森熊谷陣屋の場」という構成。 平家物語の熊谷次郎直実と敦盛、岡部六弥太忠澄と薩摩守忠度という二組の源平の武将についてのエピソードを題材にとったドラマで、源義経の命令によって、わが子を殺して首実検に差し出した熊谷次郎直実の悲劇(熊谷陣屋)と、歌道に秀でた忠度の和歌が〝よみ人知らず〞となって『千載和歌集』に選定されることになった経緯を描く(流しの枝)、その発端となる「堀川御所の場」がつく形で、たしかに制札「一枝を伐らば一指を剪るべし」を義経が熊谷次郎直実にわたす場面などがあってわかりやすいといえばわかりやすいんだけど、二段目と三段目は全然別の話なのに、同じ役者がやるので、けっこう印象がごっちゃになってしまいがちなウラミが残る。 でも、陽性の明るさでもって舞台を華やかにするけれども、陰影のある芝居はへたくそなのではないだろうかと思っていた團十郎の熊谷が、驚くほどすばらしく、すっかり見直してしまった。とくに、最後の花道で、陣太鼓がなってハッと身構えて、ああ、自分は出家したのだとすぐには悟れぬ自分を見つめながら、わが子を思い、戦場で出合った敦盛など胸中によぎらせながら「十六年は一昔」「あ夢だ、夢だ」とひとりごちる場面。じーんときたよー。 魁春の相模(熊谷の奥さんね)、わが子が身代わりとなったことを知ったときの悲しみが抑えた演技でヒシヒシと伝わって感動♪。 三津五郎の義経は、上品で雛飾りのお内裏さまみたい。彌十郎は、二幕目の自宅に盗みに入る太五平がいい味。 巳之助もからだのキレと口跡のよさ、最近いつももおお!と思っちゃう。 (出演) 市 川 團 十 郎(熊谷/忠度) 坂 東 三津五郎(義経/六弥太) 坂 東 彌 十 郎(弥陀六/太五平) 市 川 門 之 助(俊成卿菊の前) 坂 東 巳 之 助(郡次) 片 岡 市 蔵(梶原平次) 坂 東 秀 調(菊の前の乳母 林) 市 村 家 橘(平大納言時忠) 中 村 東 蔵(藤の方) 中 村 魁 春(相模)
by sustena
| 2012-03-21 23:15
| Theatre/Cinema
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