2011年 12月 03日
久しぶりに日本のミステリを読む。樋口有介さんの『ピース』(中央公論新社 2006年8月刊 文庫本もあり、中公文庫 2009年)である。 舞台は埼玉県北西部の秩父。元公安の八田芳蔵の経営するスナック「ラザロ」はいつも常連客でにぎわっている。地元紙の記者の香村麻美、写真家の小長、セメント会社の技術者・山鹿……。男性陣のお目当ては、ここでアルバイトをしているピアニストの成子だ。彼らは毎晩のようにたわいない話に興じている。そんな彼らに出す料理を、カウンターの向こうで黙々とつくっているのがマスターの甥という触れ込みの梢路。 あるとき、美人の成子が殺されてしまう。しかも、以前に寄居でおきた歯科医のバラバラ事件と手口は一緒。警察が歯科医と成子の関係にまとを絞って捜査している間に、両神の山奥でまたしても、同じ手口の殺人事件が起きる。3人をつなぐ糸はまったく見えない。 捜査が難航するなか、県警ベテラン刑事・坂森は被害者の右手のある共通点を発見するが…。 登場人物それぞれに陰影があるし、文章も軽快で、つるつると読み進む。最後犯人が割れてからは、ちょっとなぁ・・・と個人的には大いに不満であったけれど、なんといっても親近感をもって読めたのは、秩父や長瀞、上野村など、何度か訪れたことのある地名がバンバン出てきて、イメージが浮かびやすかったから。秩父弁の坂森がいい味だった。 著者の樋口さんは、1950年群馬県前橋市生まれ。業界紙記者などを経て、88年に『ぼくと、ぼくらの夏』で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビューした人だそうな。
by sustena
| 2011-12-03 21:22
| 読んだ本のこと
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Comments(2)
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mysterydancer
at 2011-12-04 11:15
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あ、先に書かれてしまった。8月によんでいたのにね。
文庫化されて棚に山とつまれてたのが、この夏から秋にかけて。コアなファンがついてる作家です。この作の殺しの動機がオリジナルと思うんだけど、今ひとつ納得がいかなくて、うまく書けないでいるうちに先を越されちゃいました。 個人的に好きな作家です。「風の日にララバイ」なんか二回も買ってしまった。途中で、「あれ?これ、昔一度呼んだなと気がついたときは、すでに半分・・・たしか犯人は、こいつではなかったか。(記憶もいいかげんだ。ものの見事外れていた・・・)結局二度目も楽しめたわけだ。」 てなことをアサヒネットのミステリパラダイス会議室に書いてます。Lololol.
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sustena at 2011-12-04 20:55
ミステリの批評家の本を大昔に編集したころはせっせとミステリを読んでいたんですけど、最近はすっかりごぶさたしてまして、樋口さんの作品も今回初めて読みました。私は動機がいまいちだと、配点が極端に下がっちゃう。この作品では、め捜査側はいろいろ書きこんでるのに、スナック側、とくにマスターがいまいちどんな人かわかりにくかったけど、シリーズなのかしらん??
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