2011年 10月 21日
上田一生さんの『ペンギンのしらべかた』(岩波科学ライブラリー182 2011年7月刊)を読む。 鳥類は約9700種いるといわれるが、ペンギン目ペンギン科は18種(16または17という説も)しかいない。でも、鳥類の中でペンギンはもっともよく研究されているグループのひとつという。 その理由は、かわいいこともあるかもしれないけれど、とにかくまずペンギンが扱いやすいから。ペンギンは「飛ばない」「怖くない」「弱くない」。飛ぶかわりに海中での捕食を選択した彼らは、もっとも速いジェンツーペンギンでさえ、人間と競争したら勝ち目はない。怖くないというのは、ペンギンのフリッパーで叩かれたってアザ程度ですむ。そして何よりも彼らは少々手荒なことをしても丈夫。岩場で3-4m落下しても、せいぜいが脳震盪を起こしてフラフラするぐらい。油で汚染されても長時間の洗浄に耐え、1カ月程度の絶食にだって耐えぬくことができるのだそうだ。 しかし、1970年代の中ごろまで、ペンギンの採餌生態に関する知識は希薄だった。なぜなら、広い海に出てしまうと、観察のしようがなかったからだ。 しかし文明の進歩によって、位置や深度を記録するデータ記録装置は飛躍的に軽く小さくなった。デジタルマイクロデータロガーの登場で、研究者は研究室にいながらにして、多彩なデータをゲットできるようになったのである。 そうして得た最新の知見をふまえつつ、上田さんは、ペンギンの捕まえかた、泳ぎかた、食べかた、旅のしかた、見分けかた、暮らしかた、見守りかたをレクチャーしていく。 何を食べているかを正確に調べるには、フンや食べ残をチェックするか、し食べたものを全部吐き出させる「フラッシング法」を用いる。ペンギンを抑え込んで胃の中にカテーテルを入れ、喉元まで海水を注いで、足をもって逆さにするんである。かわいそー。 楽しかったのはペンギンの見向けかた。やっぱり個体識別はたいへんで、白髪染めを利用して色をつけたり、フリッパーにつけるバンドを工夫したり、顔認証システムを導入したり、上空から撮影してカウントしたり、マイクロチップを装着して衛星回線を活用してチェックしたりと、実にさまざまな工夫を凝らしているんだって。 いろんな話題が詰まっていて、120ページ程度のスリムな本だけど、発見がいっぱい。 上田さんのサイトもおもしろそう。
by sustena
| 2011-10-21 22:16
| 読んだ本のこと
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Comments(2)
micro data logger ってのは、怖い技術ですねえ。ペンギンでやってるうちはいいけど、前科がついたものに強制装着(10数グラムだもん)つけようなんてとこから始って、犯罪対象になりそうな人にセキュリティでつけてもらおうなんてエスカレートして、ある組織・会社に属してる間は認識センサー兼務でつけていなきゃいけなくなって、最後は国民総センサー埋め込み。。。SFカルトですねLOLOL.
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sustena at 2011-10-23 09:50
こういう生物の行動観察もハイテクだよりになると、どことなく味気ない気も・・。スプレーでの識別は実に素朴です。いまや発明は必要の母だそうだから、こんなぎじゅつがあればこれもできる・・・って拡大しちゃいそうですねぇ。
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