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2011年 07月 05日

志の輔らくごリバイバル『大河への道───伊能忠敬物語』

志の輔らくごリバイバル『大河への道───伊能忠敬物語』_c0155474_2211415.jpg4日夜に、テアトル銀座で「志の輔らくご リバイバル『大河への道』-伊能忠敬物語-」を聞いた。

今年1月に渋谷のPARCO劇場で演ったのが好評で、伊能忠敬のことをもっと知ってもらいたいとリバイバルと銘打ったのだという。いったい伊能忠敬がどんな落語になるのか興味を持ったことと、昨年やはりテアトル銀座で聞いた志の輔の新作落語(東野圭吾の短編をもとにしたブラックコメディ)が傑作だったので出向いたのである。

まず、予定通りに幕を開けることができたというのはそれだけでたいへんなことと、きょうびの世相を盛り込みながらひとくさり。チラシができあがったとき、計画停電があるかもしれないのに、昼間やってていいのかとスタッフが言い出した話から、15%節電の話になり、お父さんが品切れ続出ののゴーヤを買ってきて奥さんから誉められたけど、実はゴーヤなんて大嫌いだとか、節電しなきゃというので、冷蔵庫を開けるのは1時間に1回40秒と決めた家族が、目覚ましにあわせて冷蔵庫をあけるけど、スダレで中のものが見えない・・・なんて、てんやわんやで、聴衆は共感で大笑い。

ところで伊能忠敬をなぜ落語にしようと思い立ったか。最初に手がけたいと思ったのは、佐原の伊能忠敬記念館で、宇宙からとらえた正確無比な最近の地図と、伊能忠敬が日本中を徒歩で測量した地図が、寸分違わずと言っていいほど、ピタッとあったのを見て鳥肌がたったことから。

でも、落語というのは、こんな伊能忠敬のようなカンペキな人は主人公にならない。だって、婿養子に入った酒屋で経営の手腕を大いにふるい、伊能家を再興し、天明の大飢饉で私財をなげうって貧民をすくい、名前が知れ渡っていたのに、50歳で隠居し、第2の人生を歩もうと、幕府天文方の高橋至時に弟子入り。地球が丸いということを確かめたいと、子午線1度の長さを実測するために、測量の旅に出る。そのために、1年かけて、歩幅が一定になるように訓練したんだよ!で、沖縄を除く日本全国を4万キロも踏破しちゃうのだ!!

やるやると言いながら、新作づくりに難儀し、途中やめようと思いながら、5年がかりでようやくめどがたった。それは龍馬ブームにわく長崎に行ったこと。

なんと、「大河への道」とは、大河ドラマへの道、であったのだ。

国宝に指定されたこともあって、没後200年の2018年に忠敬ブームを巻き起こすべく、千葉県にNHKの大河ドラマをを呼ぶためのプロジェクトがスタートした。若手ライターに委嘱して「伊能忠敬物語」をつくり、NHKに売り込もうというのだ・・・・。

明日が関係者を集めての大プレゼンテーションという日に、ライター先生が問題発生を告げに来る。幼年時代に予定していた加藤清志郎君がNGになったんだろうか?ワーッ、7年後には清志郎君は子役じゃない~。俺は晩年は西田敏行がいいと思うなあ。でも、江戸時代にしちゃ、栄養状態がよすぎませんかね?? 上司と部下は、どこが問題なのかをあれこれ予想しあう。

ライター先生が到着して詫びることには、伊能はどうしてもドラマにならないのだ。ひたすら4000万歩歩くだけでは、旅番組である。行く先々でおいしいものを食べるのはグルメ番組。そして最大の問題は・・・と、ここで1818年、73歳で病没した伊能忠敬の死を、天文方の高橋景保や、チーム伊能の弟子たちが隠しとおし、地図の完成をめざした際のドラマにうつってゆく。
そしてついに地図が完成して、江戸城大広間でお披露目したのが1821年。

将軍はじめ幕府の重鎮たちが居並ぶなか、景保は問い詰められる。伊能忠敬はどこじゃ。
ここにござります。御前に・・と、「大日本沿海輿地全図」、3万6000分の1の大図が214枚、21万6000分の1の中図が8枚、43万2000分の1の小図が3枚がズラリ。

圧巻のシーン。でも、主人公の忠敬はいない・。
ライターは許しを請うのである。どんなに苦吟しても、忠敬を主人公にはできなかったと。それを聞いたプロジェクト推進役の上司とヒラは・・・。

なるほど、落語にする苦労と、大河ドラマにする苦労をダブらせつつ、伊能忠敬のすごさを描写したのだ。長崎の楽屋で、福山雅治のお母さんと2ショットの写メした話なども、みーんな伏線だったのか。

たしかに落語かというと、ふむむ?と思わないではないけれども、なんとまぁ見事な話の芸だったことか。仲入りなしの2時間ぶっ通しでだれるところがいささかもない。

話が終り、舞台が暗くなって、スクリーンに映像が写し出された。蝦夷の海岸や忠敬が歩いたであろう日本の遠くのかなたを上空からなめるように撮った映像。そして、最新の地図と、伊能忠敬の地図が重なる。
佐原でも見たはずなのに、あらためてこの偉業に打たれたことだった。

拍手のあとふたたび出てきた志の輔が、震災以来やっているという一本締めで太鼓。
志の輔らくごリバイバル『大河への道───伊能忠敬物語』_c0155474_22223218.jpg

ロビーには日枝神社に奉納予定という笹飾りがあって、ここでも願い事をしたよ。

by sustena | 2011-07-05 22:22 | Theatre/Cinema | Comments(0)


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