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2011年 05月 02日

キャロル・オコンネル『愛おしい骨』

キャロル・オコンネル『愛おしい骨』_c0155474_0441565.jpgキャロル・オコンネルの『愛おしい骨』(Bone by Bone 務台夏子/訳 創元推理文庫 2010年9月刊)を読了。なかなか濃密なミステリであります。

カリフォルニア州の田舎町コヴェントリーが舞台。流行に置き去りにされたかのようなこの街に、20年ぶりに主人公・オーレン・ホッブスが帰ってくる。家政婦のハンナが呼び寄せたのだ。
かつてオーレンは、2つ下の弟のジョシュアと森に入った。しかし、家に戻ってきたのはオーレンだけ。いったい森で何が起きたのか? ジョシュアの行方が杳として知れぬまま、オーレンは故郷を離れ、合衆国陸軍の犯罪捜査部で数々の難事件を解決してきた。
その職を辞し、家に戻ってきたオーレンが目にしたのは、夜明けに玄関先に送り届けられる弟の骨だった。しかも、別の骨も混ざっている。20年も経って、いま何が起きているのか? オーレンは捨て去った過去に引き戻されるように、街の人びとにインタビューをし、事件の真相に迫っていく。

登場人物のいずれもが、一癖も二癖もあるのだが、それぞれの性格や行動がじっくり書き込まれて、いつのまにかしっかりとした輪郭をもって、生き生きと動き始める。大邸宅の高い塔に軟禁状態になっているアル中のセアラ夫人は、その高い塔から妄想のバードウォッチングにふけっている。(まるでラプンツェルみたい。)
セアラの娘のイザベルは、オーレンの幼なじみだが、小さいころダンスに誘ってオーレンに無視されて以来、オーレンを強く意識しながら反発をする。ホテルの女主人のイヴリンは、金持ちの夫を裏切り、若いころオーレンと関係を持った人物で、いまは霊媒師を雇って森で降霊会を行っている。家政婦のハンナに頼まれて、オーレンのアリバイを探った元警察官のウィリアム・スワンは、脚に障碍をもち、顔に大きな傷があり、家に籠もっている。このほか夫を殺したとうわさされる街の図書館の司書のメイヴィスやゴシップ・ライター、おばさんじみた物腰なのだが、実はかなり有能な州捜査官など、魅力的な変人が並ぶ。そして何よりも厚みのある造形が、母親がわりにオーレンを育てた家政婦のハンナなのだ。

少しずつ、少しずつ、街の人びとの関係が明らかになり、描かれた人物のもう一面が浮かびあがっていく。謎を解く鍵は、カメラが好きだったジョシュアの撮った何かなのか?そのカメラの行方は? 

ヤナーチェクの弦楽四重奏みたいだったよ。(ところどころ、謎が置いてきぼりになっているような感じがする箇所もあったけど)。最初はとっつきが悪いところがあるけれども、3分の1読み進んだそのあとは、イッキ。
キャロル・オコンネル『愛おしい骨』_c0155474_2319299.jpg


by sustena | 2011-05-02 00:44 | 読んだ本のこと | Comments(4)
Commented by Cakeater at 2011-05-02 16:10 x
Carol O'Connell 。。。おお、積読棚の一番下にKilling Critics が眠ってます。その上には、グラフトン、ブラッドベリ、メグ・ガーディナー、パレツキー、ジョン・ハート。。。半年先かなあ、たどり着くのは(笑い)。
プリンターのインクが切れて新宿ヨドバシへ出て来ました。帰りにコーンタワーの本屋をのぞいたらbone by bone が1200円。税別。高いなあと思って代々木の紀伊国屋に回ったら900円ちょい。やはり、洋書は紀伊国屋か丸善かアマゾンですね。でもこのミス一位なんて日本語が貼り付けてあったので、買う意欲喪失して、Mallory's Oracle を注文してきました。アマゾンの方が早いけど、せっかく回ったんですから。
ちらりと立ち読みした感じでは、非常に読みやすいクリヤでかつ硬質の英語ですねえ(ま、それでたぶんKilling Criticsを買ってた)。しょぼくれ刑事の足長おじさんに育てられた社会不適応(病気だ)長身5'10"金髪緑眼女刑事の冒険小説。。。イメージとしては新谷かおるのキャラですねえ。骨骨の方は、しばらくキャスリーン・マロリィに付き合ってから読むことにします。最初の数頁で気に入りました。紹介ありがとうございます。
Commented by sustena at 2011-05-03 00:04
英語で読んだほうが雰囲気がわかると思うんですよー。(私は読めないけど。なにしろ、ペイパーバックで読み通せたのは、ロアルド・ダールだけ。芝居のペーパーバックはいっぱい買ったけど、それは、いったいあのとき何としゃべったのかな、と確認するため。
新刊をチェックしてるときに予約したのに、なかなか順番がまわってこなかったのは、「このミス」のためだったのね。「6人の容疑者」はあと7人待ち、ジェフリー・ディーヴァーの「ロードサイド・クロス」は76人待ちであります。
Commented by ken_kisaragi at 2011-05-07 13:12
映画になりそうなストーリですね・・・これは当たりますよ!
デヴィッド・フィンチャーかアレハンドロ・ゴンサレスあたりに監督してもらって・・
余談ですがアルバン・ベルクSQのヤナーチェク<ナイショの手紙>がヨカッタです。
Commented by sustena at 2011-05-08 21:09
アルバン・ベルクという文字を見たら、きゅーんって音が聴こえてきそう。私はイーストウッドの監督で、音楽も本人というのがいいなー。


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