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2010年 08月 26日

二つの宙乗り狐六方

この8月は2つの「義経千本桜」を見た。いずれも、川連法眼館(四ノ切)で、ケレン味たっぷりの宙乗りの狐六方を演る。

ひとつは、市川亀治郎。夏の国立劇場の第8回亀治郎の会はいい席が取れずに断念し、かわりに、eプラスの特別公演を見た。これは、道行初音旅と川連法眼館の場の二幕にアフタートークがついたもの。
亀治郎が佐藤忠信(実は源九郎狐)で、芝雀の静御前、そして染五郎が源義経と、個人の会としてはなかなかの顔ぶれ。(清元連中の顔ぶれも、歌舞伎座でよく見るひとたちで、ちょっとびっくり)。そうそう、国立劇場で個人の会のために宙乗りをやるのは、初めてのことなんだって。

もうひとつが、市川海老蔵が忠信、静御前が七之助、源義経が勘太郎という新橋演舞場の8月花形歌舞伎の第一部。今回は海老蔵のヨーロッパ凱旋公演ということで、道行と四ノ切の二幕の前に、静御前に初音の鼓を義経が与える鳥居前がセットになっていて、佐藤忠信のこのお話がひひととおり頭に入るよう場面がチョイスされている。ただし、あちら向けにちょっと簡略化してることと、鳥居前からそのまま道行に移るので、荒事の格好をした海老蔵が着替えて顔をつくる間に、七之助が一人で躍っているという変則な道行であった。

アフタートークで亀治郎のいうことには、「四ノ切」には、6代目菊五郎から当代の菊五郎と、当代の勘三郎に伝承されている「音羽屋型」と、もうひとつは、猿之助が当たり役としたアクロバティックな動きと派手な宙乗りの2つの型があるんだそうだ。音羽屋型は、キツネの心の動きを、抑えた動きで情感豊かに演じる。もうひとつは、今回、亀治郎も海老蔵も演じた、ここと思えばまたあちら、身軽に動き、最後は宙乗りで環境句を驚かす、いかにも歌舞伎、イヨッ日本一ッて声をかけたくなるような大ワザ。でもこんなふうに激しい動きをしながらも、狐だから静かーに息をしなきゃならない。最後の宙乗りなんてただでさえキツイのに、にぎにぎしく笑顔で狐六方をやらなくちゃならない。実に体力勝負の世界であって、亀治郎はそのためにジムで呼吸法をせっせと鍛えたんだという。

亀治郎はさすがに、身のこなしが軽く、源九郎狐がくるくる回るところなんて、なんてまぁ速いと、驚くばかりである。でも、うますぎるかなー。器用な感じがちょびっとしちゃうんだなぁ。

一方の海老蔵は、こちらのほうがガタイはいいと思うが、やはり運動神経はいいのであろう。同じように階段をひょいと飛んで、かるがるの身のこなし。(でもスピード感と体のやわらかさだけをとったら、圧倒的に亀治郎のほうが天然狐)。

海老蔵の特徴は、あの容貌でニヤーッとブキミに笑うところ。なんだか妖術使いの狐っぽい。親子の情というよりは、デレデレした狐に見えるところがちょっとマイナスだけど、存在感はすごーい。
一方、道行でお雛さまに見立ててキメルところは、さすがに御曹司って感じで品があったなぁ。(そして私が好きな勘太郎は、なかなかしっとりと気品のある義経だった。私は勘太郎には甘いのかもしれない)。

どっちも最後桜吹雪のなかを宙乗りで消えていくシーンは圧巻。

●eプラス特別興行-市川亀治郎宙乗り狐六方相勤め申し候
道行初音旅  清元連中
川連法眼館の場
    佐藤忠信/佐藤忠信実は源九郎狐 市川亀治郎  
    源義経    市川 染五郎
    亀井六郎   中村 亀 鶴
    川連法眼   市川 寿 猿
    法眼妻飛鳥 上村 吉 弥
    駿河次郎   市川 門之助
    静御前    中村 芝 雀

●新橋演舞場 8月花形歌舞伎

訪欧凱旋公演
義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
  鳥居前
  道行初音旅
  川連法眼館
       佐藤忠信実は源九郎狐  海老蔵
             静御前  七之助
            駿河次郎  市 蔵
            亀井六郎  亀 蔵
            早見藤太  猿 弥
              飛鳥  右之助
            川連法眼  家 橘
             源義経  勘太郎

ひらひらと舞った花びらを、もっか読みかけの本にはさんでいる。
二つの宙乗り狐六方_c0155474_21224890.jpg


by sustena | 2010-08-26 22:54 | Theatre/Cinema | Comments(3)
Commented by sustena at 2010-08-27 09:33
鍵コメさま、その方のブログには以前コメントを書き込んだことがありますが、1年半以上も前だったような気がします。ネットの世界は、ひとことで傷つく場合もあるけれど、出会いもあり興味深いです。自分の立ち位置を忘れないようにしながら、楽しんでいきたいなって思っています。
Commented by higphotos at 2010-08-27 10:38
これは粋な栞ですね。
私の場合、「犬の耳」にしちゃいますねぇ。
っていう程、最近、本を読んでません。
Commented by sustena at 2010-08-29 10:11
higphotosさん、紙吹雪は和紙でつくるとゆっくり落ちるんですよー。お試しあれ(って、いったいどんなときにトライするかは??ですけれど)


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