2010年 07月 03日
ル・テアトル銀座で立川志の輔の独演会「志の輔らくご ビギン・ザ・ビギン」があった。開演は3時から。「銀座といえば、3時のイメージだったんですよねー」と志の輔。 客層が違う話や、W杯の話やら、旭山動物園の話やら、マクラも軽やかに、イッキに客のココロを掴み、その間のたしかさといい、語り口といい、実にうまい。 前半は、新作落語の「こぶとり爺さん」と2席目は「新釈 猫忠(ねこただ)」 「こぶとり爺さん」の方は感想文を娘にかわって書かなくちゃならないと、教科書にのっている「こぶとり爺さん」の教訓はどこにあるかを問う話。昔話のセオリーがあって,2人おじいさんが出てきたら、1番目はよいひと。2番目は悪いひと。2番目のおじいさんはどこが悪かったのか。踊りがヘタだっから、マネをしたから、グータラしてたから、油断したから、といろいろな教訓をひねりだそうとするんだけれど、そのたびに反論されてしまう。ひょっとして、逆パターンなのか? 一番目のおじいさんは、大事なこぶだからあげたくないと、鬼をだました。鬼も鬼ですよね。大事なものだからというんで取り上げておいて、ヘタクソだったからといって、別のじいさんにくっつけちゃうなんて。支離滅裂じゃないですか。とかなんとか、ご隠居さんと八つぁんみたいな、二人のやりとりが続く。うーん、いくら考えても教訓はわからない。「感想文、どう書きましょうかか?」「取ってつけたような話だと書いておけ」(=取ったたぶをまたくっつけられるから) 2席目の「新釈 猫忠」は、小唄の師匠さんの美貌にほれて弟子入りした仲間が、節穴から、師匠さんとよろしくやっている別の仲間を発見し、そのうちの奥さんに告げ口に行く。でもダンナは具合が悪くてふせっている。まさか見間違いのはずはない、そこで確かめにいくと、なんと、親を三味線にされた猫が化けているのだった。狐忠信の猫版である。 でも、最初はおもしろいんだけど、最後、告白する猫がちっとも猫に思えない。しかもこれがいつの話か、江戸か、現代かどうなんだろうという??の気分が先に立って(もちろん、どっちだってかまわないわけだけど)いまひとつ、この噺に入り込めないウラミが残った。 仲入り後の3席目は「しかばねの行方」。 これは東野圭吾の「怪笑小説」という短編小説集の中の「しかばね台分譲住宅」にヒントを得たもの。振興住宅地に死体が転がっている。このまま警察に通報すると、せっかく転売を当て込んで買ったのに、地下が下がってしまう。それでなくても、新駅ができるアテがはずれたのに・・。そこで、新駅ができてみんなが悔しがっている団地に死体を捨てに行く。ところが死体が発見されたことが一向に報道されない。オカシイ。なんと、死体が戻っているのだ。そこで、もう一度捨てに行って、こんどは相手にスキを与えないように警察に通報。無事死体を置いて帰ろうとするが、すでに見破られていて、カーチェイスが始まる・・・・ 講釈台がセットになって、ペペンペンペンという状況説明と落語がセットになって、抱腹絶倒の志の輔ワールドが展開。終了後、幕がないのでと、挨拶をしてくるりと向うを向いたその背中に、ブッスリと包丁が突きたてられていて、サービス精神も満点なのであった。
by sustena
| 2010-07-03 22:04
| Theatre/Cinema
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