2009年 10月 08日
日本近代建築史の研究者である藤森照信さんの『建築探偵の冒険・東京篇』を読んだのは1986年。その後『明治の東京計画』や『昭和住宅物語』とか、『建築探偵東奔西走』などを読んで、ああ、建築家になるだけでなく、こんな手があったのか、と実にウラヤマシイというか、道を間違えたよなァ・・・なんて思ったのだった。 その後、建築探偵だけでなく、自然素材を大胆に使った、タンポポハウスだのニラハウスだの、ちょっとださくて愛嬌があって、何やら不可思議な建物を設計する建築家としても活躍しているということを知り、ふーむ、藤森さんに設計を頼むとはなんと大胆な・・・とひそかに思ったりもしていたのである。 さて、この『ツバキ城築城記』(日経BP社 2009年4月刊)、知人がわが息子にどーぞ、とプレゼントしてくれたので、かわりに私がウキウキと読んだのである。 ふつー、建築家の文章は、何をお前はいいたいのだ~、わけワカメ~というようなのが大半なんだけど、さすがに藤森センセイの本はおもしろい。 目次を見ただけでわかりますね。 ナマコ壁決戦 夜明け前の土マンジュウ 一人親方焼酎工場の中味 ピサ→コル→丹下→大島? 下屋のヒミツ 足場パイプ構造の誘惑 なんたって四五度の振り 復活したクリ普請 自力仕上げでクリを究める ナマコ壁の行方 屋根にもっと植物を 縄文建築団登場! 左官のケリはライト流 縄文建築団、木と格闘! 本丸“草ナマコ”攻防戦 椿咲き、芝は芽吹いて これは、「植物の建築化」を志す藤森センセイが、お仲間の伊豆大島の焼酎・御神火の蔵元である谷口英久さんの事務所を、彼の友人知人のシロート施工集団であるところの「縄文建築団」とともに、建てたときのあらましを綴ったもの。設計を頼まれ、伊豆大島に出かけ、かの地に伊豆の流れを組むナマコ壁があることを知り、伊豆の長八美術館を設計した建築家の石山修武に対抗して、草ナマコで行こうと決意したお話、なぜかずんぐりむっくりした土マンジュウが好きな話、自然素材を活用するにはどんなツテをたどるべきか、実際の施工の苦労、最初の設計からどんなふうに紆余曲折があって、完成までこぎつけたのか───etcが、実にテンポよく伝わってくる。 日経アーキテクチャ連載をまとめたものだから、専門家が読んでも興味深そうな面もいっぱい。図面も豊富に入っているんだけど、それがシロートでも楽しいのー。 にしても、建築家はタイヘンだわー、とつくづく思ったことでした。 屋根にしても草ナマコ壁の芸壁にしても、生きている自然素材を使うのはメンテも含めてめちゃたいへんそう。石に生えるコケを見てもそう思う。D40x
by sustena
| 2009-10-08 14:45
| 読んだ本のこと
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