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2016年 06月 28日

Retrace Our Steps ある日人々が消えた街

銀座のシャネルネクサスホールで、「Retrace Our Steps ある日人々が消えた街」という写真展をやっている。
タイトルでははーんと思うだろう。東日本大震災直後に発生した福島第一原発の事故によって、"no man’s land - 無人地帯"となってしまった地域をテーマにした写真展である。
なにをいまさら、さんざん写真があふれ返ったではないか、なにゆえシャネルでわざわざ?と思ったのだが、カルロス アイエスタとギョーム ブレッションの二人は、オリジナルな視点で、あの時間が封じ込められたような場所をおさえていた。
二人は何度もあの地域を訪れ、途中で資金が枯渇し、このドキュメンタリーとアートを融合させたプロジェクトが頓挫しそうになっていたとき、シャネルの支援を得ることができたんだって。
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5つのセクションに分かれる。
「不穏な自然」・・・取り残された家を自然が飲み込んでいく。「夜ノ森」というなんだか意味深に思える鉄道の駅、植物に覆われてほとんど隠れそうな車、緑のインベーダーである。

「光影」・・時が止まったゴーストタウンを暗闇のなかで人工光で照らして撮影。がらーんとした寒々した光。
「悪夢」では、無味無臭で目にも見えない放射線という脅威を示すために、住民に、汚染されたものとそうでないものに境界線を描いてもらい、薄いセロハンのシートで境界を可視化してみせたもの。

「パックショット」は、しょうが焼きや卵、魚など、スーパーに取り残された品々や靴 血圧測定器や床屋さんのクシとハサミなどを、まるで商品写真の物撮りでもするように撮ったシリーズ。といってもスタジオで撮ったのではない。コンクリートの上。3・10製造で消費期限が3.13付のアサリ、干からびて変色したブロッコリーや葉物、カビが生えて、元はなにだったかわからないような肉・・・。現代のポンペイ。

「回顧」は、5年経っても帰れないわが家や工場、カラオケ店、ファッション、パチンコ店etcに地域住民に訪れてもらい、まるでなんでもなかったように、かつての日常の様子を再現してもらい、撮影したもの。
しかし、かつての牛舎は牛の骨が地面に転がっていて、プラネタリウムはがらーんとしている・・・。もう戻れない、こんな撮影の機械がなければ、ここがどうなっていたかも知らなかった、とそれぞれ語る浪江町をはじめとする帰還困難区域の住民たち。ごき撮影のメイキングビデオは、淡々としていながら、喪失感がぐぐっと迫ってくる。

今回のプロジェクトの二人のユニットの写真はこちら。
http://www.fukushima-nogozone.com/#!portfolio-japanese/clfx
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by sustena | 2016-06-28 23:32 | Art/Museum | Comments(2)
2016年 03月 17日

五代目中村雀右衛門襲名披露 三月大歌舞伎

c0155474_21172923.jpg3月の歌舞伎座は、五代目中村雀右衛門襲名披露興行で、3階のA席で昼の部・夜の部をともに見た。

3階A席は6000円で、1等席は1万9000円もするのに対してコストパフォーマンスはいい。もっとも、私の視力では役者の表情は見えないので、双眼鏡が欠かせないが、ずっと双眼鏡越しも疲れるし、そもそも舞台全体が見られない。したがって、どんな筋の話か知っておきたい、というときには、最近3階席にしてるケースも多いのだけれど、1列目、2列目あたりのいい位置をゲットするのは、なかなかむずかしい。毎回見に行くような熱心なファンが、やはりこの席を買うことが多いようなのだ。

それはさておき、五代目雀右衛門である。私が歌舞伎に葦を運ぶようになって、最初のころにみたのが、この人の引窓だったと思う。古風な雰囲気の耐え忍ぶ女、という役がぴったりなのである。

今月の雀右衛門は、昼の部は鎌倉三代記の時姫、夜の部は金閣寺の雪姫で、なんといっても雪姫がよかった。私が見た昼の部の時姫は、あいにく三浦之助義村が菊五郎の代役となった菊之助で(凛としたきれいな若武者ではあったものの)練習のときと勝手が違ったのかもしれないけれど。

襲名興行を見るのは初めてで、幹部俳優がズラリ並んで壮観。
左から、中村吉右衛門、片岡我當、中村東蔵、中村鴈治郎、中村橋之助、中村時蔵、尾上松緑、大谷友右衛門、松本幸四郎、芝雀改め五代目中村雀右衛門、坂田藤十郎、片岡仁左衛門、片岡秀太郎、中村歌六、中村扇雀、中村又五郎、中村魁春、中村梅玉、尾上菊五郎(午後の部を見たときは、菊五郎が復帰してた)

3階席からだから、とくに床にへばりつくように見えるのが可笑しい。東蔵はもっと自分を演技で出してもいいんじゃないか、仁左衛門は、サングラスをかけ、ハーレーダビッドソンにまたがった四代目のカッコよさを求めるのは無理だが、芸で負けない女形になってほしいという意味の挨拶をしてたっけ。先日、テレビで四代目の晩年の舞台を見たが、いやはや、ジムに通い、きれいで実にカッコよくて驚いたことだった。

久しぶりに仁左衛門の舞台を見てハッピーな気分に。夜の部の関三奴も、楽しい踊り。
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一、寿曽我対面

工藤祐経・・・・・・・・・・・・・橋之助
曽我五郎・・・・・・・・・・・・・松緑
曽我十郎・・・・・・・・・・・・・勘九郎
化粧坂少将・・・・・・・・・・・梅枝
近江小藤太・・・・・・・・・・・廣太郎
八幡三郎・・・・・・・・・・・・・廣松
喜瀬川亀鶴・・・・・・・・・・・児太郎
梶原平次景高・・・・・・・・・橘太郎
梶原平三景時・・・・・・・・・錦吾
大磯の虎・・・・・・・・・・・・・扇雀
小林朝比奈・・・・・・・・・・・鴈治郎
鬼王新左衛門・・・・・・・・・友右衛門

二、女戻駕/俄獅子

〈女戻駕〉
吾妻屋おとき・・・・・・・・・・時蔵
浪花屋おきく・・・・・・・・・・菊之助
奴萬平・・・・・・・・・・・・・・・錦之助
〈俄獅子〉
鳶頭梅吉・・・・・・・・・・・・・梅玉
芸者お孝・・・・・・・・・・・・・孝太郎
芸者お春・・・・・・・・・・・・・・魁春
    
  
三、鎌倉三代記
絹川村閑居の場

時姫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・芝雀改め雀右衛門
佐々木高綱・・・・・・・・・・・・・・吉右衛門
おくる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・東蔵
富田六郎・・・・・・・・・・・・・・・・又五郎
母長門・・・・・・・・・・・・・・・・・・秀太郎
三浦之助義村・・・・・・・・・・・・菊五郎(私が見た日は菊之助)
   
四、 団子売

杵造・・・・・・・・・・仁左衛門
お福・・・・・・・・・・孝太郎
    
    
夜の部

一、双蝶々曲輪日記

角力場
濡髪長五郎・・・・・・・・・・・・・・・橋之助
藤屋吾妻・・・・・・・・・・・・・・・・・高麗蔵
平岡郷左衛門・・・・・・・・・・・・・松江
三原有右衛門・・・・・・・・・・・・・亀寿
茶亭金平・・・・・・・・・・・・・・・・・橘三郎
山崎屋与五郎/放駒長吉・・・菊之助

二、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)

三、祇園祭礼信仰記
金閣寺

雪姫・・・・・・・・・・・・・・・・・・芝雀改め雀右衛門
松永大膳・・・・・・・・・・・・・・幸四郎
狩野之介直信・・・・・・・・・・梅玉
松永鬼藤太・・・・・・・・・・・・錦之助
春川左近・・・・・・・・・・・・・・歌昇
戸田隼人・・・・・・・・・・・・・・萬太郎
内海三郎・・・・・・・・・・・・・・種之助
山下主水・・・・・・・・・・・・・・米吉
十河軍平実は佐藤正清・・歌六
此下東吉・・・・・・・・・・・・・・仁左衛門
慶寿院尼・・・・・・・・・・・・・・藤十郎
    
四、関三奴

奴駒平・・・・・・・・・・・・・・・・鴈治郎
奴勘平・・・・・・・・・・・・・・・・勘九郎
奴松平・・・・・・・・・・・・・・・・松緑
    
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by sustena | 2016-03-17 21:18 | Theatre/Cinema | Comments(0)
2016年 03月 13日

第10回 shiseido art egg その2 GABOMI.展

資生堂ギャラリーで「第10回shiseido art egg」の第二弾、「GABOMI.展」を開催中で、リピーターズカードでスタンプを3個ゲットしたらもらえるマグネットがほしくて、さっそく出かけてきた。

今回のGABOMIさんは、1978年生まれ。
2008年から独学で写真で表現してるとのことで、GABOMIさんの考案した、TELENSで撮られた作品が実にきれいなのだ!

ちなみに、TELENS=手レンズは2011年に編み出した撮影技法で、市販のレンズのかわりに自分の手を使い、手で光を調節することで、独自のイメージをつくり出す。手の皮膚の血流が透けて赤色が写り込んだりもするんだそうな。

NO LENS というシリーズでは、カメラレンズを外して、完全なアウトフォーカスで草花やアスファルトなどをマクロ撮影し、被写体の色を抽出。色見本のようでありながら、微妙なトーンの違いがあって、すごくきれい。不思議な色を味わう展覧会。
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下の写真は、art eggとは関係なくて、資生堂ビルの壁面の小さなスペースのもの。
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by sustena | 2016-03-13 15:20 | Art/Museum | Comments(0)
2016年 02月 08日

「第10回 shiseido art egg」川久保ジョイ展Fall

新進アーティストを対象に、資生堂ギャラリーを発表の場として提供する「アートエッグ展」が、今年も始まった。
10回目の今回は、全国から370件の応募があり、その8割が20代~30代の若手だったとのこと。3人のアーティストが選ばれ、最初が1979年トレド生まれの川久保ジョイさん。

川久保さんは、写真、映像、光や音などを用いて世界をとらえるインスタレーションを制作するひとで、金融トレーダーとして働いた経験の持ち主なのだとか。「日常生活の中に自分なりの原理を見出し、そのロジックを試す」という点において、トレーダーとアーティストは似ている」と語っているそうだが、その言葉をあらわすように、展示室に入るやまず目に飛び込んでくる≪ダイダロスの滝/落命≫≪イカロスの落水/水落≫と題する2点の作品は、友人のトレーダーに日本の経済見通しを予測してもらった作品で、前者が日本の長期金利(10年物国債の金利)を、後者が米ドル/円相場の、それぞれ過去20年と未来20年を予測したグラフを、壁一面をに描いたもの(壁を削ったのだとか)。それがまるで滝のよう!

≪千の太陽の光が一時に天空に輝きを放ったならば≫と題されたインスタレーションは3点。写真撮影用の8×10インチの銀塩フィルムを福島の土の中に埋め、数か月後に取り出し引き延ばした作品。それぞれ、放射線量によって色が違うのだが、淡く実にきれいな色だった。

もうひとつ興味深かったのが、≪The God of the Labyrinth 迷宮の神≫という映像サウンド作品。ボルヘスの『ハーバートクェインの作品の検討』という短編作品の文字の順番をシャッフルして新たな物語を創り出し、画面では英語、ヘッドホンの左耳からは日本語、右耳からはスペイン語でナレーションが流れる。人類滅亡後に、星を人類の居住地にするために探査を行うという話なんだけど、3つの言語がぐるぐる頭の中でまわって、クラクラしてしまった。

写真は、この展示とはまるで関係がない。会社近くのショーウィンドウ。いつも靴やカバンを、別のものに見立てて表現してる。前回は、食卓で、靴が料理のひとつだった。

今回は宇宙遊泳?
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by sustena | 2016-02-08 21:02 | Art/Museum | Comments(2)
2016年 01月 10日

壽初春大歌舞伎・昼の部

c0155474_21523934.jpg歌舞伎座で1月公演・昼の部を観てきた。今回のお目当ては、吉右衛門の梶原石切と、玉三郎の茨木。

一番安い3階のB席だったが、その中では最前列で、4階の幕見席で昼の部を全部見ると同じ値段であることを考えると、はるかに見やすいので、最近はゼッタイにゲットしたい演目ではないときは、3階席にしてる。

私の視力で3階席だと、さすがに役者の表情は悲しいかな、ちゃんとは見えない。でも役者の声の張りや、どんなお話なのかを知るには、見るのが一番。そして、生でいいのは大向こうの声だ。

今回もあちこちから、二代目!と声がかかる。最後の石切の場面で、「刀も刀」という吉右衛門のセリフを受けて、間髪を入れず「役者も役者!」とあったときは、いいなぁとゾクゾクしちゃった。

玉三郎は鬼婆の役で、最後目を剥きながら花道を引っ込む場面、3階からだとチラとしか見えないんだけど、ド迫力なのだった。


刀も刀、そこに役者も役者

一、廓三番叟

傾城千歳太夫・・・・孝太郎
新造松ヶ枝・・・・・・・種之助・
太鼓持藤中・・・・・・染五郎

二、義経千本桜/鳥居前

佐藤忠信実は源九郎狐・・・・橋之助
源義経・・・・・・・・・・・・・・・・・・門之助
静御前・・・・・・・・・・・・・・・・・・児太郎
逸見藤太・・・・・・・・・・・・・・・・松江
武蔵坊弁慶・・・・・・・・・・・・・・彌十郎

三、梶原平三誉石切/鶴ヶ岡八幡社頭の場

梶原平三景時・・・・・・・・・・・・吉右衛門
梢・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・芝雀
俣野五郎景久・・・・・・・・・・・・歌昇
奴菊平・・・・・・・・・・・・・・・・・・種之助
山口十郎・・・・・・・・・・・・・・・・由次郎
川島八平・・・・・・・・・・・・・・・・桂三
岡崎将監・・・・・・・・・・・・・・・・宗之助
剣菱呑助・・・・・・・・・・・・・・・・男女蔵
大庭三郎景親・・・・・・・・・・・・又五郎
六郎太夫・・・・・・・・・・・・・・・・歌六

四、新古演劇十種の内 茨木

伯母真柴実は茨木童子・・・・玉三郎
士卒運藤・・・・・・・・・・・・・・・・鴈治郎
士卒軍藤・・・・・・・・・・・・・・・・門之助
太刀持音若・・・・・・・・・・・・・・左近
家臣宇源太・・・・・・・・・・・・・・歌昇
渡辺源次綱・・・・・・・・・・・・・・松緑

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銀座にはおサルがいっぱい。着かざる、というコピーとともに晴れ着を着たサルもいたけど、撮り忘れちゃった。
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by sustena | 2016-01-10 00:21 | Theatre/Cinema | Comments(2)
2015年 12月 12日

石川直樹写真展「K2」

c0155474_1141770.jpg銀座のシャネル・ネクサスホールで、石川直樹がK2にチャレンジした際の写真展を開催していた。

石川直樹は、2001年、23歳でエベレストに登頂し、2011年には別ルートから二度目の登頂を果たす。その後も中判フィルムカメラを持ち、ヒマラヤの高峰に挑み、その写真を発表しているのだが、2015年夏、シャネルにスポンサードしてもらい、K2に遠征したのだ。

K2は高さ8611メートル、世界第二位の高さで、パキスタン、中国、インドと国境を接するカラコルム山脈の奥地にある独立峰、くるくると変わる気候から、危険きわまりない難峰とされる。

今回は2か月間に及ぶ遠征で、入念な準備をへて頂上をめざすも、天候に恵まれず登頂は果たせなかった。

しかし、氷に閉ざされた山、その写真の美しく気高いこと、厳しさに、圧倒されてしまった。(ことにビデオがすごいー)

何が石川さんをこんなに突き動かしてるんだろう。

それと、写真展を条件に、遠征費をスポンサードするシャネルも太っ腹。気高さ、孤高の高みへのチャレンジが企業精神とシンクロしているからだろうか。

http://www.straightree.com/


写真はシャネルのショーウィンドウ
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by sustena | 2015-12-12 18:10 | Art/Museum | Comments(0)
2015年 10月 06日

川上 量生『鈴木さんにも分かるネットの未来』

c0155474_1271295.jpg川上量生さんの『鈴木さんにも分かるネットの未来』(岩波新書 2015年6月刊)を読む。

川上さんは、1968年生まれ。京都大学工学部を卒業後、ソフトウェア会社を経て1997年にドワンゴを起業。2006年にニコニコ動画をスタートさせ、いまや一般会員5000万人規模にまで育てあげたネット業界の有名経営者。現在、KADOKAWA・DWANGOの代表取締役会長であり、スタジオジブリプロデューサー見習いという経歴の持ち主だ。

そんな川上さんが、スタジオジブリの機関誌の『熱風』に、2012年11月号から2014年6月まで連載した記事をもとに再構成し、加筆修正してできあがったのがこの本。「ジブリの鈴木敏夫プロデューサーにも、ネットの今とこれからが分かるように書け」という命題のもと、なるべくネット業界のジャーゴンやこけおどしを排除して、ひらたく素直に解説してる。

ところでワタクシめ、数年前、ネットのプロモーションを企画する部署に所属した際、社内のデジタル旧人類に向けて、ネットを使った広告のいろんな手法や最新事情をまとめ、1週間に一度メールニュースの形で発信するという役を買って出て、2年ばかりネットを使った販促や広告のあれこれを追っかけていたんだけど、いやはや、次第に頭がぐるぐる、そして半分虚しくなっちゃった。なぜって、どうあがいてもついていけそうになかったから。

そんな旧世代の私に、川上さんは、ネットのことがよく分からない理由は二つある。一つには、ネットの概念のほとんどが外国から輸入したもので、偉そうにしゃべってる人もその概念の受け売りをしてるだけで、実は本人もあんまり整理ができてないからという「IT舶来主義」のせい。もう一つは、ネットというものがこれまでの社会とは異なる文化を持つ新しい社会をつくっているから。IT舶来主義はともかく、今後デジタルネイティブが増えていくなかで、どんな社会になっていくのかは、気になるよねぇ・・ということで読み進めていくと──。

まず川上さんはネットを利用している人には、ネットを便利なツールだと思っている人とネットを自分の居場所だと思っている人の2種類があることに注意すべきだ、という。ネット住民はネット利用者の中では少数派になりつつあるが、ネットで起きることを理解するには彼らの存在は重要で、ヒマでネットに浸っているのでネットの世論やムードをつくっているというのである。

ではネット世論の実際はどうか。たとえば総選挙の時などに行われる「ネット人口調査」を見てみると、これはニコニコ動画の登録者に1回だけ半強制的に表示され、100万人以上がアンケートに回答するとんでもないc調査なのだが、回答者の情報源が主として新聞かテレビかネットかで、投票先の政党の割合が明確に違うという。
2012年11月27日に実施した調査では次の結果だった(ニコ動のユーザーということを念頭に置く必要がある)。

「新聞」が最大の情報源という人の回答・・・自民38.0 民主15.2 日本維新の会11.3
同「テレビ」・・・自民26.8 日本維新の会18.5 民主9.2
同「ネット」・・・自民56.6 日本維新の会9.9 民主3.2 みんな3.3

なんとこんなに違うのだ!

つまり、世間で世論と呼ばれているものは、自然発生したものでなく新聞とテレビというマスメディアの強い営業を受けた世論である。一方、ネット世論は、新聞とテレビという既存マスメディアのほかに、ネットメディアに強い影響を受けている。

ネットが情報の提供に多様性を与えたのは事実であって、少数のすばらしい意見や情報が載っている。しかし、情報の海のなか、まとめサイトとソーシャルメディアで情報をループさせることなどによって、偏った情報が跋扈する皮肉な状況も生まれているのだ。

コンテンツが無料になるかどうかを論じた章で印象的だったのは、広告モデルでコンテンツをつくるというビジネスモデルがコンテンツをつくる側にとって不利であるということ。コンテンツホルダーとグーグルやアマゾンなどのプラットフォーム側の駆け引きについて、それぞれの機能と強みが明快に整理されていて「なるほどー」と得心がいった。

また、オープン化を志向してきたネットが、スマホ時代に入って「クローズド」になりつつある話、集合知は頭がよくないし、基本的に計算が遅くなる。集合知は、人間の集合から計算されるデータを機械的知性が利用するためのものという話、ビットキャッシュのしくみなども興味深かったが、一番個人的に気になったのが、電子書籍の未来について語ったパートだ。

おお!もう紙の本の運命は風前のともしびなのか・・・

電子書籍はまだまだ、という人の挙げる理由としては
すべての本、特に過去に出版された本が電子書籍化されていない、原価の安さにかかわらず電子書籍の価格優位性が発揮されていない、電子書籍のデバイスは充電が必要・・といった問題だが、これは長期的には解決される。解決が難しいのは、「多くの読者は紙で文字を読むのに慣れている」「電子書籍は紙の本のような存在感がない」ということだが、紙にこだわる旧世代が去るころには、紙が主流の文化は過去のものになると断言する。
いまは、活字のデータを単に電子化しているだけだが, 音声や動画などのデータを取り込んでマルチメディアの電子パッケージになったり、参考文献や注釈など、別の本にハイパーリンクしたりと、電子書籍の可能性こそに注目うすべしという。

コンテンツを創造する力こそが必要だよなぁ。シミジミ思ったことだった。
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目次は─

はじめに ネットがわからないという現象が生み出すもの
1 ネット住民とはなにか
2 ネット世論とはなにか
3 コンテンツは無料になるのか
4 コンテンツとプラットフォーム
5 コンテンツのプラットフォーム化
6 オープンからクローズドへ
7 インターネットの中の国境
8 グローバルプラットフォームと国家
9 機械が棲むネット
10 電子書籍の未来
11 テレビの未来
12 機械知性と集合知
13 ネットが生み出す貨幣
14 インターネットが生み出す貨幣
15 リアルとネット

by sustena | 2015-10-06 16:57 | 読んだ本のこと | Comments(0)
2015年 07月 23日

七月大歌舞伎は超満員

c0155474_23531213.jpg歌舞伎座の七月大歌舞伎の昼の部を見た。

演目は、「南総里見八犬伝」と「与話情浮名横櫛」「蜘蛛絲梓弦」。海老蔵と玉三郎、そして歌舞伎座ではなかなか演じられない猿之助が出るとあって、今月の切符争奪戦はものすごかった。とくに昼の部は、会員むけの売り出し日にはほぼ完売状態。売り出し日は出張だったから、今回は諦めていたんだけど、たぶんいろんな理由で確保しておいた席がいくつかあって、それが不要になった場合直前になって市場に放出するんだろう。たまさかいい席がポッと売り出されていることがあって、今回はそれをゲットした。7列目のセンターなので、うれしい♪(それに一幕見も、今回は早々と売り切れの札が出ていた)

「南総里見八犬伝」はいきなり大立ち回りのある「芳流閣屋上の場」からで、右近が出てきてキレのある動きをしてグッと芝居が締まった。

「与話情浮名横櫛」は、与三郎が海老蔵、お富が玉三郎のコンビで、見染めのシーンで、海老蔵がなよなよしすぎかなぁという印象があったけど、二人が目を合せるシーンには引き込まれたよ。いかに玉三郎が美しくても、海老蔵と並ぶとトシを感じちゃうかな、と思っていたらなんのなんの、登場シーンなど驚くほど若々しくてハッとしてしまった。しかーし、源氏店のシーンでは、海老蔵の声がこもっているのがやっぱり気になっちゃったな。わりとニンに合う役なんだけど。
びっくりしたのは、獅童の蝙蝠安がよかったこと。八犬伝でも犬塚信乃を演じてなかなかサマになっていたけど、蝙蝠安のやさぐれたチンピラぶりが実にうまかった。お富を救った和泉屋多左衛門は中車だったんだけど、誠実で男気のある雰囲気が出てたよ。

「蜘蛛絲梓弦」では猿之助が6v i早変わりで、いつもながら実に鮮やか。からだのキレもやわらかさも、体力も尋常ではなくて、反り返ったり、くるくると動くたびに女性陣(9割以上じゃないかな)がどよめくのだった。
最後、海老蔵が平井保昌で出てくるシーンは、二人のミエ(こういうミエは、目の大きい海老蔵はほんとにはまる) に、後見が蜘蛛の糸をこれでもかと投げて、ちょっとやりすぎー(派手でウケてたけど)
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一、南総里見八犬伝
芳流閣屋上の場
円塚山の場

〈芳流閣屋上の場〉    
犬塚信乃・・・・獅 童
犬飼現八・・・・市川右近
  
〈円塚山の場〉      
犬山道節・・・・梅 玉
犬飼現八・・・・市川右近
犬川荘助・・・・歌 昇
犬江親兵衛・・・・巳之助
犬村角太郎・・・・種之助
浜路・・・・笑三郎
犬田小文吾・・・・猿 弥
犬坂毛野・・・・笑 也
網干左母二郎・・・・松 江
犬塚信乃・・・・獅 童

二、与話情浮名横櫛
見染め
源氏店

与三郎・・・・海老蔵
蝙蝠安・・・・獅 童
番頭藤八・・・・猿 弥
お岸・・・・歌女之丞
鳶頭金五郎・・・・九團次
和泉屋多左衛門・・・・中 車
お富・・・・玉三郎

三、蜘蛛絲梓弦

童熨斗丸&薬売り彦作&番頭新造八重里&座頭亀市&傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精・・・・猿之助
源頼光・・・・門之助
坂田金時・・・・市川右近
渡辺綱・・・・巳之助
碓井貞光・・・・獅 童
平井保昌・・・・海老蔵

by sustena | 2015-07-23 23:57 | Theatre/Cinema | Comments(0)
2015年 06月 05日

資生堂ギャラリー「The voice behind me」

資生堂ギャラリーで台北在住の香港人アーティスト、李傑(リー・キット)の個展「The voice behind me」が開かれている。

私はリー・キットの作品を見たのは初めて。リーは1978年香港生まれで、布やダンボールに描いた絵画、机やタオルハンガー、クッションのような身の回りの品を使い、絵画と組み合わせたり、映像と絵画を並べたものなど、一見これが作品?と思うような、さりげない作品を制作。色合いも、淡いパステル調だったり、壁のちょっとしたグラデーションの差に陰影を感じさせるような作品が得意なのだという。

今回の個展のタイトルは「The voice behind me」。
案内によると「自分が慣れ親しんでいると同時に疎外されていると感じる声が常に背後にあり、その存在はほとんど耐え難いが、閉塞感のある状況の中で深呼吸はできなくとも、呼吸を続けることはできる、そこにまだ希望はあるとリーは考えている」のだそうだ

これまでの代表作のほか、ギャラリーの空間に合わせたやわらかい光と影が印象的な映像作品や、段ボールに描いた絵画、It really doesn't matterと刺繍された白と青のクッションが置いてあるソファ、人間には2つのタイプがある、Type AとType Bで・・と絵のある壁を映しながら文字だけが流れていく映像作品、自宅のテーブルの表面をひっかき続ける様子を映像や写真に撮ったリーの代表作「Scratching the table surface」で登場したテーブルとイスがポンと置かれた空間など、静かな展示が印象的だった。

写真は、バーニーズニューヨークのウィンドウ。
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by sustena | 2015-06-05 17:10 | Art/Museum | Comments(0)
2015年 05月 28日

育ちつつあるソーシャルビジネス

きょう日経ホールで、第3回「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」の表彰式とシンポジウムがあった。

同賞は、さまざまな社会的課題をビジネスの手法で解決する「ソーシャルビジネス」に取り組むNGOや企業を顕彰するもので、今年で3回目。
今年度の結果は、下手くそな説明を連ねるより、このページを見ていただいた方がわかりやすい→http://social.nikkei.co.jp/result03.html途上国への社会的投資に取り組むARUN合同会社や、コミュニティのためになる社会性の高い活動や起業を支援するコミュニティ金融を行うコミュニティ・ユース・バンクmomo、企業では耕作放棄地などを活用して茶産地育成事業を行う伊藤園や、途上国の栄養失調のこどもを支援するため、離乳期のこども向けの栄養サプリメント「KOKO Plus」を開発し、国際的NGOやアフリカの大学などと組んでBOPビジネスに取り組む味の素など7団体と、特別賞として竹下景子さんが表彰されたのだが、単純に表彰状を読み上げてスピーチがあってオシマイではなく、入念に演出されていて驚いてしまった

まずどんな活動をしている団体か、ミッションやスタートの思い、活動内容と社会へのインパクトをわかりやすくまとめた映像が流れる。その後に3分ぐらいの受賞スピーチ、そして、受賞者へのお祝いメッセージとして、ビデオレターあり、団体といろんなかかわりを持った方が登場するサプライズなどもあるのだ。

たとえば、新人賞を受賞したNPO法人Homedoorは、理事長の川口加奈さんが登壇。川口さんはまだ24歳なのだが、ホームレスはただ怠惰な人たちと思っていた加奈さんが14歳のときに炊き出しを経験し、おっちゃんたちと言葉をかわすうち、ホームレス状態を生み出さない社会をつくるために、なんとかしたい!と思ったことを語る。就労の機会を提供し、ネームレスへの偏見をなくそうと、彼らの特技である自転車修理を生かしたシェアサイクルを始めたほかさまざまな活動を展開していることを紹介。ビデオメッセージは、ここでの就労の第1号で、いまはトラック運転手として自立しているおっちゃんからのあたたかいおめでとうメッセージだった。

石巻市雄勝町で、廃校を複合体験施設「モリウミアス」としてスタートさせるというsweet treat 311には、黒木瞳さんが登場したほか, 妹さんも登場し、お母様と息子さんからの手紙の朗読もあった。

ARUN合同会社代表の効能聡子さんのバイタリティと人を巻き込む力とあたたかさもすごくて、彼女のエネルギーやアツい想いが、壇上から離れたこちらまでびんびん伝わってくるのだった。

こんな例ばかり聞いていると、日本もなかなか捨てたもんじゃないな、という元気がわいてくる。

写真は、銀座のエルメスのショーウィンドウ。光っていてわかりにくいけど、げっ巨大スズメバチでは・・。小さなウィンドウは、商品がまるでクモの巣にからめとられているようなのだった。
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by sustena | 2015-05-28 23:36 | つれづれ | Comments(4)