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2017年 10月 19日 ( 1 )


2017年 10月 19日

上村修孝『昆虫の交尾は、味わい深い・・・。』

c0155474_22093019.jpg慶應義塾大学商学部・上村修孝准教授の『昆虫の交尾は、味わい深い・・・。』(岩波科学ライブラリー 2017年08月刊)を読む。

ページを繰るとまず目に飛び込んでくるのが6枚の写真だ。オニヤンマ、大カマキリ、ミンミンゼミ、アゲハチョウ、コクワガタ、クロヤマアリのオスの交尾器がどれかというクイズで、くねったチューブや左右非対称なトゲのついたもの、整然と並ぶノコギリの歯など、いずれも実に奇ッ怪な形で、それぞれまったく違う! 

正解は本文を読んでいく途中でちょっとずつ明かされていくが、読み進むうち、生き物にとって性とは何かやオスとメスそれぞれの遺伝子を残す戦略のユニークさ、進化の不思議に「おお!」と感嘆せずにはおれない。

ちなみに、交尾器の進化は、形の進化の中では最も速いんだそうだ。このため交尾器を観察しない限り種を見分けられないことも多いという。1000万種といわれる昆虫それぞれがオンリーワンの交尾器を持っているわけ。
            
形だけじゃない、昆虫の交尾姿勢もさまざまだ。例えばカブトムシはオスがメスの上に乗る。逆にコオロギやキリギリスの仲間の多くは、メスがオスの背後から背中に乗る。するとオスはフック状になった交尾器でメスの腹部をひっかけて自分の体に引き寄せる・・・と、今度はこれが刺激になってメスは小さなペニスみたいな突起をオスへと押し当てて精子の詰まった精包を受け取るのだ。

バッタの交尾は、メスの上にオスが乗っかるのだが、オスの腹部はS字を描き、その先端がメスの下側に絡み合っているし、トンボの場合は特有のハート型の姿勢だ(みんな、見たことある? これは、メスの腹端の交尾器とオスの副性器(ここに精子が移動している)がかみあって、オスが腹端でメスの頭部をつかまえるとこの形になるんだって。こう書いても、絵がないとわからないよいね。

交尾を成立を知るために「お尻にも眼がある」アゲハチョウのオスの話や、今年イグノーベル賞にも輝いたメスにペニスがあるトリカヘチャタテなど、へーえと思う話題がいっぱいだ。

上村先生が昆虫の交尾の研究にハマったのは、腹部の先にはさみを持つ、ハサミムシというマイナーな昆虫に出会ったこと。このハサミムシの交尾を邪魔すると、あわてて交尾を中断した二匹の間に何やら極細のピアノ線のようなチューブが見える。これはいったい何か?を探ることから研究がスタートした。それこそ、メスに挿入されて精子を渡すための射精管端枝だ。この先端を電子顕微鏡で見ると、耳かきのようなカエシがついている。研究の結果、これで別のオスの精子をかき出しているのだが、メスの受精嚢は細長くくねくねした迷路のようにひたすら長く、カエシはすべてをかき出せるほど長くはない。それはなぜなのか・・?

マレーシアに留学してトコジラミの交尾器を研究したときの話も興味深かった。
オスは動くものに見さかいなくとびかかって交尾を挑む。そしてメスの背中に乗った状態で、メスの右わき腹のスリットがある副生殖器めがけて、腹の先をカールさせ「スパーマリッジ」と呼ばれる器官に精子を注入する。ここは精子を捕食して消化する血球細胞のいるところなのだ。

さて、トコジラミの研究にあたっては、飼育するために必要なものがある。それは血! それまでは飼育担当の学生が血を提供していたのだが、就職で研究室を離れたため、先生が研究をしたいならご自分の腕を差し出さなければならなかった! トコジラミにさされながら研究を続けるうち、上村先生は左右にスパーマリッジのあるトコジラミを見つけ、左側のスパーマリッジの役割の探求にチャレンジする。有力な仮説を立てたところで、マレーシアを去ることになり、時間切れで仮説は検証できなかったらしいが・・・

ところで、交尾を研究するときどうするか。液体窒素を用意して、交尾のさまざまなタイミングでターゲットの昆虫を瞬間凍結するのだ!! 昆虫の身になると可哀そうなのか、交尾の途中での昇天でシアワセなのか・・・?


最終ページは袋とじ。ネコやイヌ、イノシシ、ヤマアラシ、ヒツジ、ワラビー、ガラゴの交尾器のイラストとその謎が載っている。でも哺乳類の交尾器の形の謎を解き明かすのは、寿命サイクルや交尾時期なども関係しているから、相当ムズカシイだろうな。
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この写真は、アミメが世界一美しいといわれるクモらしいんだけど(サツマノミダマシ?)、アミがきれいに撮れなかった。秋はジョロウグモの大きなメスが目立ちますね。近くに小さいオスが交尾のチャンスを狙っているけど、メスは動くものをすぐ食べちゃうので、食べられないようにメスの食事のときの交尾を狙うんだって。おっと、クモは昆虫じゃなかったっけ。



第1章 オスとは? メスとは? 交尾とは?
 [コラム] そこまでするか! ゲニタリ屋

第2章 交尾をめぐる飽くなき攻防
 [コラム] 昆虫の性転換と雌雄モザイク

第3章 パズルは解けるか? 長―――い、交尾器の秘密

第4章 北へ南へ、新たな謎との出会い
 [コラム] 現場をおさえろ! 交尾中の昆虫の固定法・観察法

第5章 主役はメス!――交尾器研究の最前線へ

あとがき
付録 昆虫の交尾器・精子を見てみよう



by sustena | 2017-10-19 22:10 | 読んだ本のこと | Comments(4)