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2017年 08月 21日

納涼歌舞伎第3部「野田版 桜の森の満開の下」

先日歌舞伎座で『野田版 桜の森の満開の下』を観た。『野田版 研辰の討たれ』、『野田版 鼠小僧』、『野田版 愛陀姫』に続く野田版歌舞伎の第4弾。勘三郎とは『野田版 研辰の討たれ』のころから、次はこの『桜の森・・』と何度も話が出ていたものという。

もともと、坂口安吾の「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」を下敷きに、夢の遊眠社時代の野田が書き下ろしたものを、歌舞伎用にアレンジしているのだが、戯曲の基本的な構造はほとんど同じだ。

天智天皇のが治める時代。ヒダの王のもとに、耳男、マナコ、オオアマの3人の匠が集められ、ヒダの王の二人の娘、夜長姫と早寝姫を守る仏像づくりを言い渡される。しかし、マナコは盗賊であり、耳男はひょんなことから師匠を殺してしまい、もう一人のオオアマもいわくありげ。実はオオアマは鬼門をあけ、鬼たちの力を借りて天下を統べらんとたくらむ大海人皇子だった。約束の3年がたち、三人は仏像を彫り上げるが・・・・

野田流の奇想天外なストーリーと、言葉遊び、機関銃のように言葉がほとばしるかと思うと、抒情的なフレーズがうたいあげられ、異空間にひたるのだ。

かつて野田が演じた耳男を演じるのは勘九郎。野田はピュアな少年性とトリックスターをあわせもつキャラクターだったけれど、勘九郎は純朴な青年といった感じ。
それが七之助の演じる、残酷な夜長姫に恋をする。七之助の冷たーい激情にかられるサディストぶりがほんとピッタリ。青空のもと、世の中には戦争や人殺し、悲惨なことが多いけど、実はマイッタマイッタなんて言いながらみんなそれが好きなんじゃないか。プッチーニの「ある晴れた日に」が流れるなかで、夜長姫はそんな意味のことをつぶやく。

前半は、登場人物の関係性を把握するのにいっぱいいっぱいで、野田戯曲だから歌舞伎役者まだもが早口になることもあるまいに、何を言っているのかいまひとつわかりくい部分もあって少々しんどい。でも、後半はどんどん物語に引き込まれていく。

最後の桜が舞うシーンは実に美しい。
歌舞伎座の横に広い舞台がとても生きていたな。

巳之助のハンニャが生き生きして言葉もすっと耳に飛び込んできてよかった。とくに白粉をつけた顔が三津五郎にそっくりで、ちょっと胸をつかれた。
芝のぶは、本来とてもうまい人なのに、いつも大勢の一人でほんともったいない。今回のエナコは最高だった。

美術は堀尾幸男、衣装はひびのこづえ。

納涼歌舞伎第3部「野田版 桜の森の満開の下」_c0155474_17562259.jpg
耳男………………………勘九郎
オオアマ………………………染五郎
夜長姫………………………七之助
早寝姫……………………… 梅枝
ハンニャ………………………巳之助
ビッコの女………………………児太郎
アナマロ……………………… 新悟
山賊……………………… 虎之介
山賊………………………弘太郎
エナコ………………………芝のぶ
マネマロ……………………… 梅花
青名人………………………吉之丞
マナコ………………………猿弥
赤名人………………………片岡亀蔵
エンマ………………………彌十郎
ヒダの王……………………… 扇雀


by sustena | 2017-08-21 15:29 | Theatre/Cinema | Comments(0)


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