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2017年 04月 27日

苅谷夏子『フクロウが来た』

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苅谷夏子さんの『フクロウが来た ぽーのいる暮らし』を読んだ。

クリームイエローの表紙に、中島良二さんの描いた、本の上にちょこんとのった愛らしいフクロウのイラストがひたとこっちを見てる。かわいい♪ それだけで、この本の温かさが伝わってくるんだけど、工藤直子さんの腰巻きがまたいいのだ。

ふわふわ・・・もふもふ・・・じみじみ
せつなく・・・いとしく・・・あたふた
そんな肌ざわりと想いに満ちた本です。フクロウを育てた気持ちになりました。

これ以上、何を付け加える必要があるだろう!!

でも、久しぶりのブログのエントリーなのでちょっとだけ書く。

ふっふっふ、この本の主人公、「ぽー」に私は会ったことがあるのだよ。
以前、写真で紹介もしたことがある。この子です!

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でも、もう4歳になったぽーは、ずいぶんたくましくなったに違いない。

この本は、2012年の初夏、作者が家の近くにあるフクロウカフェに出かけ、猛禽類のいる暮らしにふれるところから話が始まる。
そこに繰り返し通ううち、ウラルフクロウとモリフクロウのハイブリッドの赤ちゃんを見て、飼わないというカターイ決意はどこへやら、フクロウを迎え入れることになる。

といってもペット、という存在とはちょっと違う。
フクロウが自然界に属するものだからこそ、作者はフクロウに惹かれ、深く知りたい、いっしょに暮らそうと思う。その一方で、手に入れてしまえば、フクロウは自然から離されてしまう。その矛盾を抱えながら、自分の都合に合わせるのではなく、ぽーにとっての自然を大事に大事にしようと作者は決意するのだ。

ところで、夏子さんがぽーに初めて出会ったとき、同じ箱に入っていた"箱きょうだい"の「小豆ちゃん」の飼い主は、理系の勉強をした人で、毎日欠かさず餌をどれだけ食べたかや体重をしっかり記録する。かたや夏子さんは国文出身で、大村はまに鍛えられた人だから、理系的な客観データは望めない代わりに、主観的な観察を丁寧にし、かつ、読者がまるで自分がぽーをしかと観察している気分になるくらい、ありありと眼に浮かぶように教えてくれる。

シャープの液晶テレビのアクオスが好きなこと、うんちをするときは、すり足でしずしずと15cmくらい後ずさりすること、リビングの高い位置にあるカーテンレールがお気に入りで、初めてそこに立つことができ、さらに食器棚に飛び乗ることができたときは本当に誇らしそうだったこと、雨が好きで、窓の外を飽きることなく眺めていること。。。。

夏子さんが実家の階段から落ちて全治3ヶ月の重傷を負い、リビングにベッドを置いてぽーと一緒に過ごした日々の記述も忘れがたい。
うんちの始末がすぐにできるよう部屋に置いてあったトイレットペーパーをつかんで感触を楽しんでいたぽーが、何かのはずみで床に転がったロールをつかんで一気に飛び立った場面。トイレットペーパーがおもしろいようにほどけて、
「ぽーの慌てたような羽音と私のくすくす笑いが、白い紙の渦の中に広がった」

いつもは一気読みする私だが、ゆっくりじっくり、夏子さんの記すひとことひとことを、味わいながら読む。

ぽーが初めて雪を見た日。
「・・・見ても見ても、雪はとめどなく降り、ぽーはそれでもまた見ている。不思議なのだろう。窓辺に寄りかかる私の肩の上に飛び移って、並んで一緒に雪を見続けた。ぽーの顔のあたりの和毛と私の耳のうぶ毛が触れ合う音が、世にも繊細な音として耳の奥に伝わってきて、無音の雪景色に添えられた。ポップコーンに似たぽーの体臭がふんわりと香る」。

いかん、いかん、いくらでも引用を続けたくなってしまうなあ。
宝物のような本ですー

そうそう、ぽーのアルバムが4ページぶんあるのだが、残念なことにモノクロ。
(もっともこの本の雰囲気にはカラーがいまいち似合わない部分もあるからやむなし、かな)
そんな人にはインスタグラムとブログがある。

ブログはこちら→poowl.wordpress.com

腰巻きの隅の応募券で先着200名にぽーの羽根のプレゼントもうれしいところ。応募しちゃおうかなー



by sustena | 2017-04-27 16:17 | 読んだ本のこと | Comments(0)


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