2016年 01月 31日
ベタな恋物語かな・・・と恐れながらも、猿之助が出るので、Bunkamuraのシアターコクーンで上演中の(東京公演は本日まで)を見てきた。 いやぁ、想像以上によかった。もう泣き泣きである。 「近松心中物語」はこれまでたしか2回l見たんだけど、80年に上演された、同じ蜷川×秋元松代コンビのこの作品は今回が初めて。36年ぶりの復活といっても、なぜいまわざわざ、こんなに情念どろどろの古くさい話を・・・・、と実のところ思っていたのだけど、ギリシャ悲劇にも、シェークスピアの悲劇にも連なる骨太の話ではないか、と思わせてくれたのは、なんといっても、今回の配役によるのではなかろうか。 三味線を弾きながら諸国を経巡る瞽女の一行が播州の港町にやってくる。ここで一番の廻船問屋の大店が筑前屋。丁稚あがりで一家の長にのぼりつめた平兵衛(市川猿弥)とお浜(新橋耐子)には信助(段田安則 )と万次郎(高橋一生) と二人の息子がいた。江戸から戻ってきたばかりの長男の信助は仕事熱心で誠実だが、次男の万次郎はけんか犂で遊び人なので、平兵衛は信助を跡継ぎにと考えているが、妻のお浜は実子の万次郎がかわいくてならない。信助もそんな事情をうすうす勘づいている。 瞽女の一行の座長が糸栄(猿之助)。瞽女たちが筑前屋の座敷で弾き語る「葛の葉子別れ」は、千年の森の奥から白狐となって人里に住む恋する男に会いに来た女が、生まれた子と別れなければならないという物語(歌舞伎で猿之助の演じる葛の葉を見たことがある♪)。歌いながら泣く糸栄に、信助は胸騒ぎを覚える。 瞽女の糸栄がわが子同然に可愛がっているのが、同じく盲目で、小さいときに阿弥陀堂に捨てられていた初音(宮沢りえ)と、快活で越後屋の次男の万次郎と恋仲の歌春(鈴木杏)。歌春は、身分違いの万次郎との恋に終止符をうち、職人の和吉(大石継太)との結婚を承諾する。一方初音と信助も運命的な恋に落ちる・・・・。 決してまじわってはならぬ芸能の民と常民の世界。そのルールを超えてしまった悲劇であります。 最後、人々の魂を救済する念仏を唱える、常の生活からこぼれこぼれ落ち底辺を生きる念仏信徒たちのパワーが、ぐぐーんと迫ってくるのだ。 猿之助演じる瞽女の座元はさすがの存在感で、彼の歌う葛の葉が、からだから発せられるよう。宮沢りえの澄んだ高い声と、いつもはうますぎてちょっとうるさい感じすらする段田の響く声とが重なりあってすばらしい。 新橋耐子もうまいー。この人、20年ぐらい全然トシをとっていないんじゃないの、と思ってしまった。 念仏信徒衆を率いる悲田院法師は青山達三。 、 芝居の間中、舞台の上から椿がひとつ、またひとつと降ってくる。二組の恋人たちの運命を象徴するような 真っ赤な椿だった。 作=秋元松代 演出=蜷川幸雄 音楽=猪俣公章 劇中歌=美空ひばり 衣裳=辻村寿三郎 本日は天気がよかったので、久しぶりに善福寺公園を散歩。最近、ツグミがどうだ!というポーズでたたずんでいたり、地面を歩き回って虫をつついている姿をみかけるようになった。メジロはびっくりまなこ。ロウバイの葉もすっかり落ちて、いい香り。梅も咲き始めた。光の春だー。
by sustena
| 2016-01-31 16:15
| Theatre/Cinema
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