2015年 08月 20日

銀座メゾンエルメス「Demarcation 境界 高山宏+小泉明郎」

銀座のメゾンエルメスで開催中の「Demarcation 境界 高山宏+小泉明郎」が興味深い。

二人の作家による作品で、まったく異なる表現なのに、私たちのいまの不確かさを伝えている。

演出家である高山明は、会場に5台だったかしらん、もう3週間以上前に見たのでうろ覚えなのだが、牧場で草をはむ牛たちの映像(たしか「希望の牧場」というところ)がエンエン流れる。もうひとつは、その牛の一頭をひいて歩くだけの映像が流れるのだが、この「希望の牧場」が浪江町の旧警戒区域だと知って曰くいいがたい気分になる。タイトルは『ハッピー・アイランド――義人たちのメシア的な宴』で、このビデオインスタレーションを見ながら、バックにもう一台の小さなディスプレイで、子どもがバッハの「羊は安らかに草を食み」を弾く映像と音楽---どこかたどたどしく、ときどきつっかえてしまうのだが、その音楽が繰り返し繰り返し流れる。実はその子は、うまくできなかったのでもう一度一生懸命練習して2週間後に、今度はちゃんと弾けたのに、最初に録ったほうを使ったそうなのである。

一方、小泉明郎の作品は窓辺で文章を語る一人の男が登場する。男は、田中伸弘さん。交通事故で記憶障害になった人という。田中さんは最初は比較的すらすらと文章を口にするのだが、次第に、次のフレーズがなかなか出てこなくなり、うなるように、吼えるように、動物じみた声を出す。

その文章は、天気のいい青空が広がっている日、飛行機が近づいてくる。それを見ようと近づいてきた4~5歳ぐらいのかわいい男の子を命令によって窓から突き落とす。頭から落ちたら即死だったろうが、お尻から落ちたのでワーワーないている・・・といった内容で(もっと長い)、田中さんがなかなか思い出せなくなるのは、その男の子を突き落とさなくてはならないといったあたりからで、最初単に窓辺で何かを話していると思ったときは、どんなシーンか分からす、この人の実体験を思い出そうとしているのかと、ちょっと怖かった。(詰まると、横から女の人が助け舟を出し、ああ、架空の話なのかと思うわけなんだけど)。

もう一つの映像は、水面をヨットが走り、途中その映像が燃える火になるというもの。バックでは同じ田中さんの声が聞こえるヴィデオ作品。

どきどきしちゃたよ。
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by sustena | 2015-08-20 23:01 | Art/Museum | Comments(0)


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