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2015年 03月 02日

「アメリカン・スナイパー」

c0155474_005143.jpgクリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」(原題American Sniper 2014年 アメリカ 132分)を息子と見てきた。どんな映画かの説明は不要だろう。

父に「人間には3種類ある。羊か、狼か、番犬か。番犬になれ」といわれて育ち、米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの隊員となったクリス・カイル。4度にわたるイラク遠征で160名を狙撃し、「レジェンド」の異名を取る。そんな伝説の狙撃手を通して見た、戦争のリアルと、家族への愛の一方で戦争でむしばまれていく心を追っていく映画だ。

当初、この映画の撮影が進んでいるという情報を知ったとき、いくらイーストウッドといえども、実在の天才的な狙撃手を描くとなれば、アメリカ万歳までとはいかないにしろ、アメリカ的な価値観に支配された映画になっちゃうのではという危惧があって、見に行くつもりはなかったのだが、映画館で何度か予告編を目にするうちに、やはり見なくてはと出かけたのだった。

遠くから「アッラーフ・アクバル」と繰り返されるアザーンが聞こえてくるシーンからこの映画は始まる。そして予告編で何度も流れた、女性と子どもが出てきて、カイルが撃つべきかどうか逡巡する場面に。のっけから、緊迫したなかに放り出され、狙撃手と同様、こちらも息をこらして画面を見つめることになる。

とにかくイラクでのシーン(カリフォルニア州でのセットのほか一部はモロッコで撮影されたという) の緊張感は圧倒的。アメリカ軍と話をした者は殺すとして、虐殺者が男の子が頭にドリルを突きつける場面、射殺した男のバズーカを少年が手にとろうとする場面、砂嵐のなか脱出をはかるシーン、敵の天才狙撃手ムスタファにねらわれるシーンなど、いまもいくつかのシーンが目に浮かぶ。
主演のブラッドリー・クーパーの、当初の天真爛漫な笑顔が、次第に苦渋に満ちていく、その表情の変化もイタかった。帰還後、家にいて銃声や爆撃音が響いてくるのだが、最初はテレビゲームをしているか、ニュースかビデオを見ているのかと思っていたのだが、次の場面でテレビは真っ暗で、彼の頭の中で爆音が響いていたことがわかるのだ。立ち直ったあと、妻のタヤにふざけて銃を向けるシーンなど、ここで暴発しちゃったら・・と、そんなことはないとわかっていてもドキドキしたなぁ。

もっとも、すごい映像だ、巧みな映画術だと舌を巻く一方で、いかに9.11があったとしても、保安官気取りではじめたイラク戦争が、いまのイスラム国を生んだ要因のひとつともなったんだという苦い気持ちもふとよぎる。

そんないろんな思いが、ラスト、無音のエンドロールを見つめているときに沸き上がってくる。そのひとつ前が、クリス・カイルの葬送の場面でエンニオ・モリコーネの「The Funeral」が響くので(そして大半はイラクでの銃撃、爆撃音が続いていたわけなので)、いっそうこの無音がこたえるのだ。

イーストウッドの映画は音楽のセンスはバツグンで、いつもどんな音楽が使われていて、誰が作曲したものかなど、エンドロールをじっと見るのだが、今回クレジットで出たのは、イーストウッド作曲による「タヤのテーマ」とヴァン・モリスンの「Someone like you」のみだったっけ。

この映画を単純にアメリカ賛美だ、いや反戦映画だとレッテルを張るのは馬鹿げている。人の評価ではなく、お前は何を見、何を感じたかを問いかけてくる映画だなーと思った。とはいえ、アメリカで大ヒットを記録しているらしいけど、アメリカの人は、この映画をどう受け止めているのだろうか?

監督 クリント・イーストウッド
脚本 ジェイソン・ホール
撮影 トム・スターン
キャスト
ブラッドリー・クーパー クリス・カイル
シエナ・ミラー タヤ・カイル
ルーク・グライムス マーク・リー
ジェイク・マクドーマン ビグルス
ケビン・ラーチ ドーバー
コリー・ハードリクト “D”(ダンドリッジ)
ナビド・ネガーバン アル=オボーディ師
キーア・オドネル ジェフ・カイル

公園も少しずつ春の気配。
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by sustena | 2015-03-02 00:06 | Theatre/Cinema | Comments(6)
Commented by iwamoto at 2015-03-02 07:45 x
そう、彼等はこの映画をどのように見るのでしょうね。

sustenaさん、ヴァン・モリソンが聞いて分かるの? たいしたものだわ、と言っては失礼ですね。
映画では、オリジナルの演奏が使われたのでしょうね。 綺麗なピアノの音。
知ってる人がベースを始めたいっと言ったら、この曲を勧めたいような(笑)
Commented by esiko1837 at 2015-03-02 20:26
この映画、私はとても見に行かれません。
小心者だからです。
いかにもアメリカ的な映画なんだろうと想像はしていました。
クリントイーストウッドが監督・・・サステナさんの骨太な感想に感心しました。
息子さんと見に行かれたそうで、親子でも家族でも地域でも、みんな仲良く出来たらいいのにと、単純なオバハンは思いました。
Commented by sustena at 2015-03-03 00:08
iwamoto さん、もちろん、エンドロールで確かめたんですよー。
マイケル・ムーアはこきおろし、ジェーン・フォンダは称賛などと一部だけを取り出して賛否両論なんて紹介されてるのを見るけど、どうも違和感があるんですよね。もっとも、いろんなブログを探索するガッツも英語力もないので、どうなのかなーなんて言ってるだけ。
Commented by sustena at 2015-03-03 00:11
esikoさん、わが息子は、ボクと映画を見に行けるのもあとちょっとだなんて言って、ワタシにたかってくるのであります。
Commented by Cakeater at 2015-03-04 23:15 x
ええと、Google に Rotten Tomatoes と入れると、英語圏の映画評をほとんどカバーしたものが出てきます。で、american Sniper と入れると、評価が読めます。
僕は、第二次大戦以降の軍用機乗りと狙撃屋というのが大嫌いなもので、(戦うなら白兵戦やってくれい。物陰や、高空から狙い撃ちなんて卑怯極まる。てなわけで、ニコのファンなものでドロンも嫌いだけれど、ドローンはもっと嫌いです、はい。あ、脱線、lol)この映画のone phrase コーナーの腐ったトマトマークがついたところばかり拾い読みしております。
Commented by sustena at 2015-03-05 00:45
Cakeaterさん、ありがとうございます。私は実は敵のスナイパーがけっこうかっこ良かったと思ってマス。
私の知り合いは、いくら自爆テロの子どもだと言っても、殺すことはない、声を上げるかなんかしてねらっていることを気づかせるべきだと毒づいてました。
最後のほうの、雨のなか、葬儀の車が進む場面の映像がヨカッタです。


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