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2015年 01月 27日

長谷部浩『菊之助の礼儀』

c0155474_2254024.jpg東京藝術大学美術学部教授で東京新聞で歌舞伎評を担当している演劇評論家の長谷部浩さんの『菊之助の礼儀』(新潮社 2014年11月刊)を読む。

長谷部さんはもともとは現代演劇が専門で、『4秒の革命 東京の演劇1982-1992』『野田秀樹論』、蜷川幸雄の共著『演出術』などの著書がある。
それが1990年代になって、小さいころから見ていたという歌舞伎にも目を向けるようになり、坂東三津五郎に聞き書きをし、『歌舞伎の愉しみ』『踊りの愉しみ』、そして『菊五郎の色気』などを次々に上梓した。

寺島しのぶから菊之助を紹介されたことをきっかけに、菊之助と歌舞伎について議論したり、『NINAGAWA十二夜』などのプロジジェクトをともに進めるようになるなど親交を深め、菊之助を中心とした平成歌舞伎への思いと、菊之助の成長を、私的なエッセイ風に綴ったのが本書である。

子どものころから歌舞伎にどっぷりつかってきた三津五郎や勘三郎と、中年になってから歌舞伎を評論の対象とするようになった自分とでは「歌舞伎年齢」が違いすぎる。菊之助とはたまたまうまがあったのか、「歌舞伎年齢」がちょうど同じぐらいだったのかはわからないが、歌舞伎の話になると話題がつきなかったという。

私の歌舞伎年齢は3歳ぐらいで、ようようこの本に出てくる演目について説明なしでもだいたいわかるようになってきたとはいえ、舞踊はワカラナイし、過去の名優たちの話もハテー?なので、いきなり深い芸談になってしまったらついていけないんだけど、菊之助の舞台は比較的多く見ていることもあり、なるほど~と思うことも多かったな。

この本に出てくる菊之助は御曹司の自惚れなどまるで感じさせない。まっすぐて、勉強熱心な青年である。そして「僕はびびりなんです」といいながら、新しい挑戦を続けるひとでもある。

あとがきで長谷部さんは言う。
「私は、彼が年少期から今までに、大変な自制心を以て身につけた人生の態度を『菊之助の礼儀』と呼びたいのです」

美しいし、すぐれた女方が払底している昨今、菊之助には女方の大役が次々に舞い込むけれど、音羽屋として菊五郎を継ぐとなれば立役もこなせなければならない。なので最近は立役も少しずつ増えている。私は華麗な女役を見たいけれども芸域を広げるのは必須なのだ。

興味深かったのが最終章。吉右衛門の四女と結婚し、男の子が生まれ、音羽屋と播磨屋の藝統がひとつになったことを語って、未来を展望するシメで、菊之助は「役者に生まれた以上弁慶をやりたい」と語っている。音羽屋は、富樫か義経を勤めるのが通例で、菊五郎も弁慶は勤めていないのだそうだ。(配役にしても、何月にだれが歌舞伎座に出るとか、いろいろ決まりごとがあって面倒) 、
菊之助の弁慶は想像もできないけど、去年の11月に染五郎が初めて挑戦した弁慶、ニンじゃないのにすごくがんばったこともあるし、いっぺん見てみたい気も・・・・。

それと、近松の曾根崎心中を、野田の脚本でデヴィッド・ルヴォーが演出し、勘三郎と菊之助が出る企画が、勘三郎の急逝でおじゃんになった話はつくづく惜しい!

目次
美しさの謎『京鹿子娘二人道成寺』 / 京・四季・南座『弁天娘女男白浪』 / 初対面の日『グリークス』 / アッピアの夜『弁天娘女男白浪』 / 立役への道『児雷也豪傑譚話』 / 海老蔵襲名『助六由縁江戸桜』 / 早朝のパリ『鳥辺山心中』 / 菊之助の礼儀『NINAGAWA十二夜』 / 仲違い『加賀見山旧錦絵』 / 去りゆく人と『二人椀久』 / アスリートの体力『春興鏡獅子』 / ブロマイドの中の親子『与話情浮名横櫛』 / 大顔合わせ『仮名手本忠臣蔵』 / 赤坂・ロンドン・銀座『曾根崎心中』 / 平成中村座の菊之助『菅原伝授手習鑑』 / 立女方への道『伽羅先代萩』 / 立役への挑戦『盟三五大切』 / 真実の恋『摂州合邦辻』 / 東日本大震災を受けて『うかれ坊主』『藤娘』 / 初役の一年『籠釣瓶花街酔醒』 / 歌舞伎座新開場『熊谷陣屋』 / 哀れな女『東海道四谷怪談』 / 弁天小僧を生きる『青砥縞花紅彩画』 / 桜の花の舞い散る頃に『京鹿子娘道成寺』 / 新しい命『勧進帳』

写真は銀座よしひろの野菜のおでんのランチ。刺身と小鉢がついて800円也。
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by sustena | 2015-01-27 23:18 | 読んだ本のこと | Comments(0)


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