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2015年 01月 25日

辻 惟雄/村上 隆『熱闘(バトルロイヤル)!!日本美術史』

c0155474_253345.jpg『奇想の系譜』で又兵衛、山雪、若冲、蕭白、国芳らを「奇想の画家」として再評価し、近世絵画の見方を大きく変えた美術史家でMIHO MUSEUM館長の辻惟雄が、近世日本美術史の中からお気に入りの絵師と作品を選んで、その読み解き方をじっくり解説した文章をもとに、世界で活躍する売れっ子の村上隆がその絵師の作品を換骨奪胎しムラカミ流にアレンジして新作を描きおろした絵合せ『熱闘(バトルロイヤル)!!日本美術史』(とんぼの本新潮社2014年11月刊)がおもしろい。これは、「芸術新潮」誌上で2009年10月から2011年12月まで、途中で休載があるので計21回にわたって「ニッポン絵合せ展開」として展開した連載をまとめたもの。

ラインナップは次の通り。

〈絵合せ 一番〉 狩野永徳
〈絵合せ 二番〉 伊藤若冲
〈絵合せ 三番〉 葛飾北斎
〈絵合せ 四番〉 ふたたび伊藤若冲
〈絵合せ 五番〉 絵難房
〈絵合せ 六番〉 曾我蕭白
〈絵合せ 七番〉 白隠慧鶴
〈絵合せ 八番〉 ファリシズム
〈絵合せ 九番〉 鳥居強右衛門勝高逆磔之図
〈絵合せ 十番〉 井上有一
〈絵合せ 十一番〉荒川修作
〈絵合せ 十二番〉インドの女神
〈絵合せ 十三番〉リンガ
〈絵合せ 十四番〉赤塚不二夫
〈絵合せ 十五番〉長沢芦雪
〈絵合せ 十六番〉ふたたび長沢芦雪
〈絵合せ 十七番〉村上春樹ほか
〈絵合せ 十八番〉逸品画風
〈絵合せ 十九番〉狩野一信
〈絵合せ 二十番〉禅月様羅漢図
〈絵合せ 二十一番〉羅漢と震災
〈絵合せ 千秋楽〉 100m五百羅漢図

第1回の狩野永徳の《唐獅子図屏風》を受けて村上が描いたのが、この表紙の村上隆そっくりのウロンな顔をしたぶきみかわいい獅子である(表紙は絵の一部)。そういえば、村上隆の会社「カイカイキキ」は、狩野山雪の遺稿をもとに子の永納が編んだ『本朝画史』の中で狩野永徳の晩年の画作を評した「其の筆法皆粗にして草なり。・・忸々奇々、自ずから前輩伝えざるの妙を得て一時に独歩す・・・五百年来未曾有のものなり」という「忸々奇々」からとったものなんだそうだ。、

絵ばかりじゃなくて、鳥居強右衛門勝高逆磔之図などでは、村上自身が体を真っ赤に塗り込められて隈取りをされ、胸毛や腋毛、腹毛、陰毛と植毛されて、ふんどし姿で十字架に逆さ磔にされた姿を写真に撮ったりしてる(そのために広告宣伝チームが動員されている)。雑誌の連載にこんなに労力をつぎ込んでいいんだうか?と読者がアッケにとられるほど、村上さん、リキ入りまくりである。(それが高じて撮影のオモシロサにハマり、村上隆は後にスタッフと映画まで撮ってしまう)

しかーし。辻センセイは世界のムラカミに対しても容赦ない。
「貴下の春画はたしかにギョッとさせられますが、失礼ながら芸術的なギョッととはちょっとちがいますね。村上さんらしいイマジネーションの飛躍が感じられませんし、色調も幕末浮世絵みたいに暗い。村上さん本来のとは違います。
お弟子さんに任せすぎじゃないですか。
それより村上さんご自身の肉声が聞きたい。(略)私の文章などさらりとかわして、落書きされていはいかがですか。私はそれを予感し、期待していました」

と挑発するんである。それに応えて村上も伊藤若冲と河鍋暁斎の《新富座妖怪引幕》を模した4m×9mの《象とクジラ》をどーんと描きあげる。

辻先生はさらに日本美術だけでなく、井上有一や荒川修作、インドの女神、リンガ、赤塚不二夫、そして村上春樹までぐいぐいと展開していく。ちょっと離れすぎでは・・・と思うけど、コラボはそれなりにおもしろい。

村上春樹の回では、村上の『ダンス・ダンス・ダンス』の一節から「長い橋」を連想し、北斎の《足利行道山くものかけはし》《飛越の境つりはし》の絵を紹介、『1Q84』からはサルヴィアーティの《ダビデのもとへゆくバテシバ》の外階段を連想する。これを受けて村上は,北斎のくものかけはしの山の間をぐるぐるめぐる高速道路と2つの月を描くのだ。

その後辻先生は、長沢芦雪のミクロの五百羅漢の発見に始まり、狩野一信、禅月様羅漢図、羅漢と震災と、羅漢図をずっと取り上げていく。狩野一信の《五百羅漢図》100幅を江戸東京博物館で展示しようという企画の開催直前で、3.11が起きたのだ。そして村上も、タテ3メートル、横なんと100メートルの五百羅漢図制作へと突き進んでいく。この作品が、2012年カタールの首都ドーハで開かれた大規模な個展の目玉作品となっていったのだから、このコラボ企画を立ち上げた編集者は感無量だったことだろう。

巻末に千秋楽として「100m五百羅漢図」が折り込まれている。これまでの絵合せから想を得た動物なども登場し、ごきコラボが五百羅漢図へと結実していったことがわかる。そのスケール感たるやすごい。
(辻先生の文章を受けての村上の返信で制作のたいへんさがうかがえたことも興味深かった。
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トーハクの若冲の鶏の屏風はいつも人気。

by sustena | 2015-01-25 02:04 | 読んだ本のこと | Comments(0)


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