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2014年 09月 14日

SPAC-静岡県舞台芸術センター『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』

c0155474_22502054.jpg今年7月に世界最大の演劇祭であるアヴィニョン演劇祭に招聘された、静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「マハーバーラタ」の凱旋公演が、KAAT神奈川芸術劇場で行われた。ピーター・ブルックが同演劇祭で「マハーバーラタ」を演じて話題になったのは1985年のこと。たしか日没に始まり、翌日の日の出前に終わったのではなかったか。

それと同じ「マハーバーラタ」を、SPACの芸術総監督で、かつてク・ナウカを率いていた宮城聰がオリジナルに編集した2時間の芝居とし、ピーター・ブルックと同じブルボン石切場で演じ、大きな反響を巻き起こしたという。その話を耳にし、ぜひ見てみたいと願っていた舞台だ。

KAATの劇場に入ってまず驚いたのが、客席をぐるりと取り囲んだ円形舞台だ。アヴィニョン公演をできるだけ再現したとのことで、通常客席がある側をパーカッションとメインのストーリーが進行する正面舞台として、通常のステージは客席。観客はステージの両袖に抱かれるように、円形の舞台の真ん中に配置された座席に座る。

とはいえ、たった2日間、3回公演のために、KAATにこんな舞台を再現させたなんて、それだけでも驚きだったが、実にすてきな、祝祭感に満ち満ちた舞台だった!

歌舞伎や文楽、アジア演劇のいくつものエッセンスを取り入れていて、登場人物たちが着ている一見、紙の服と思えるような生成りの衣装は、まるで、インドネシアを人形劇のよう。そしてアジアやアフリカ?をルーツとするさまざまな打楽器が、登場人物の怒りや悲しみ、喜びを奏で、コロスや常磐津、能を連想させる語りにあわせて、ストーリーが進行してゆく。

ストーリーは、古代インドの国民的叙事詩マハーバーラタの中の、ナラ王とダマヤンティ姫の物語。
類まれなる美貌のダマヤンティ姫は、徳高いナラ王と結ばれる。しかし、それを妬んだ悪魔カリの呪いによって、ナラ王は弟との賭博に負けて、国を追われる。デマヤンティは夫と行動を共にしようとするが、姫が眠っている間にナラ王は姫の片袖を切りとり、森へと消える。夫を捜して森をさまようダマヤンティ。大蛇を逃れ、隊商とともに旅をし、やがては父の治める国にたどりつく。ナラ王も、御者に身をやつし、ある王のもとに。そして、最後二人は再開を果たす。孤独と向き合う魂と、愛の力を描いたものだ。

役者は、円形舞台を歩き、あるときは走る(ブルボン石切場は、1周100メートルぐらいだったとか。KAATの円形舞台は、直径がフランスでの公演より約5メートルぐらい狭いらしい)。

ブルボンの石切場はまわりに白い壁がそそり立っているのだが、KAATのバックは、赤。登場人物たちが白く浮き上がり、とても印象的だ。そして、バックに映し出された影のゆらめきときたら!
4人の神々、大蛇、ゾウ、隊商とそれぞれのシーンがすばらしく、とくにゾウの鼻と牙の平面パーツで、獰猛なゾウを表現した場面にはうなった(観客を巻き込んだダマヤン茶の宣伝シーンもほどよい感じ)。パーカッションはすべて役者が担当したのだとか。いったいこうしたアンサンブルを築き上げるのに、どれくらいの稽古が必要だったろう。

阿部一徳の耳にしみ入る語り、ダマヤンティを演じた美加里の透き通った声もすてきだったなぁ。

終演後の神奈川芸術劇場アーティスティック・スーパーバイザーに就任した白井晃と宮城聰のアフタートークも興味深かった。

衣装が真っ白でなく生成りで、ブルボンの石切場で切り取られた登場人物たちが、劇が終わって再び、また壁へと戻っていく感じがしたこと。円形劇場で上から見下ろすと、舞台の奥行きはちょうど上下に見えて、そんな蓄積があるヨーロッパの芝居と太刀打ちするために、宮城さんが二次元で勝負しようと思ったこと。そして、見下ろすのではなく、観客が舞台の役者を見上げる形にし、ライティングも下からあてるようにしたんだって。

宮城さんが「マハーバーラタ」を初演したのは、ク・ナウカ時代の2003年、東京国立博物館の東洋館の地下で、そのときから基本コンセプトは変わっていない。
世界にある叙事詩は、そのほとんどが戦争のシーンで、マハーバーラタもそう。でも、宮城さんは膨大なストーリーの中に散りばめられた戦争のシーンは採用せず、愛の物語の骨格となるエピソードだけを選び出し、ストーリーを役者たちとのリーディングで、コレクティブワーク的につくり上げた。それが戦争を放棄した日本だからこそ発信できるメッセージだという思いもあったとのこと。

ストライキの中でもアヴィニョンで演じたタこと、地方で劇団をつくる意味なども話題に出た。
多くの人にみてもらいたい芝居だった。

演出:宮城聰
台本:久保田梓美 音楽:棚川寛子 空間構成:木津潤平
出演:
語り/阿部一徳、ダマヤンティ/美加理、ナラ王/大高浩一、漁師・ピーマ王/渡辺敬彦、リッパルナ王/大道無門優也、御者バールシュネーヤ/大内米治、ナラの弟プシュカラ/牧山祐大、僧侶ステーヴァ/牧野隆二、母后/本多麻紀、母后の娘スナンダー/石井萌水、乳母ケーシニー/赤松直美、悪魔カリ/横山央、帝釈天/舘野百代(M).榊原有美(S)、火天/本田麻紀(M).桜内結う(S)、水天/鈴木麻里(M).山本実幸(S)、閻魔/片岡佐知子(M).木内琴子(S)、カルコータカ/榊原有美(M).鈴木麻里(S)、
演奏/寺内亜矢子、石井萌水、加藤幸夫、桜内結う、佐藤ゆず、仲村悠希、森山冬子、山本実幸、吉見亮、若宮羊市、
美術:深沢襟
衣裳デザイン:高橋佳代 
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by sustena | 2014-09-14 22:47 | Theatre/Cinema | Comments(7)
Commented by iwamoto at 2014-09-15 06:55 x
いかにも芝居らしい「芝居」のようで、ご覧になれて良かったですね。
相変わらず、説明がうまいので、見た気になってしまいます。
Commented by jmiin at 2014-09-15 22:41
ウチの近所にも、急に彼岸花 出てきました。
秋ですよねぇ~
Commented by iwamoto at 2014-09-16 14:30 x
我が家、かなり揺れました。
棚からモノが落ちました、あの日以来のことです。
そちらは大丈夫でしたか。
Commented by higphotos at 2014-09-16 19:27
情けないことに静岡県舞台芸術センターも静岡芸術劇場も知りませんでした。
そういえば演劇にも芸術にも縁がありません。
もっぱら公園命の屋外で遊ぶのが好きな小僧さんの相手ばかり。
まぁ、それが性に合ってるんですけどね。
Commented by sustena at 2014-09-16 22:47
iwamotoさん、ありがとうございます。埼玉や東京の西の方が揺れが大きかったようですね。私は銀座で食事をしているときに揺れました。けっこう長くて、どこが震源なのかなぁと漠然と思っていました。最近携帯の緊急時芯側方がゼンゼン鳴りませんね。あれが一斉に鳴るのもブキミですが。
Commented by sustena at 2014-09-16 22:48
jmiinさん、ヒガンバナって、本当にお彼岸が近くなると一斉に咲き始めますね。満開まであとちょっとです。
Commented by sustena at 2014-09-16 22:50
higphotosさん、私の知り合いは、ふじのくに世界演劇祭があると、東京から遠征しています。ほかにもこども向けのおもしろいものもあるようなので、これはと思うプログラムがあるときに、一度おでかけになってみては。


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