2014年 08月 25日
アーティストで、MITメディアラボで助教をつとめるスプツニ子!(どんな人なのかは、彼女のサイトをみるとわかる)の「はみだす力」(2013年12月刊 宝島社)を読む。 保育園時代からはみだし続け、やがて、この超パワフルな「はみだす力」を武器に自分をプロテュースし、世界を広げてきた人生をたどった、28歳のはやすぎる自叙伝であります。 父は日本人、母は英国人で、両親ともに数学者。家では日本語と英語が飛び交っていたから、保育園でもつい英語が混じってしまい、最初から自分は異分子だと自覚していた。「普通はこうだ」という前提があると、直感的によくないことだと思うようになる。いじめられたり、陰口を叩かれても「リスペクトもしていない人にどうこう言われても、心底どうでもいいじゃん!と気にしなかった。いじめられていたころ、13歳の誕生日プレゼントにもらったiMacのText to Speechというソフトを使って「君はブサイクじゃないよ」とか「I love you!」なんて告白させたりしてたんだって。 そんな変わり者の女の子にも友達ができる。「フランス語と英語と日本語とインドネシア語でドラえもんが歌える」ユリ。彼女が、背が高くて理系なところがロシア人ぽい、ロシアといえば宇宙だというわけでつけてくれたのが「スプートニク」というニックネーム。略してスプ子。 こうして、自分のことをわかってくれる相手に出会い、美術館で出会ったマン・レイやデュシャンなどとも、時空を超えて妄想の中で友だちになることができることに気づき、どんどん自分の世界を歩いていく。 インターナショナルスクール対抗の数学大会でチャンピオンになる。(女性だというだけで能力が下だと見くびられることもあるけど、ナンバーワになると誰も見くびることがないから頑張ったのだ!) その後、アメリカンスクールを1年飛び級して、ロンドン大学インペリアル・カレッジの数学部数学科に進学。そこでプログラミングに力を入れる一方、メディアアートやデジタルアートにハマり、作曲という表現ツールを手に入れる。そして、インターンをきっかけに、デザインやアーティストの世界に足を踏み入れていく。卒業後は就職はせず、3Dエンジンなど理系脳が要求されるフリーランスのプログラマーとしてロンドンで働きながら、音楽活動を継続するも、「型を知らないと型破りになれない」ことに思い至り、英国王立芸術学院(RCA)修士課程に入学。このときは、歌う理系女子という突飛さが受けたのだった。 しかし、芸術の素養はないからはじめは苦労する。でも、アイデアを実現し、クオリティを担保するためには、何から何まで一人でやって疲労困憊するのではなく、チームを組むことが大事と悟ってから、ブレイクする。もし自分にペニスがあったらどう変わるかをテーマにして《チンボーグ》(心臓がドキドキするとモーターが動いて棒状メカが立ち上がる装置!)を、このほか、人とコミュニケーションが苦手な理系女子がカラスと交流する《カラスポット☆ジェニー》、テクノロジーでジェンダーを超越するというテーマから発想した、男性が女性になりたくて生理を体験する《生理マシーン、タカシの場合》など、次々に独自のコンセプトの映像アートを生み出し、それがMOTやMoMAに展示されることになる。こうして、アーティスト活動の一方、その発想を求められてMITメディアラボの助教職をゲットする。 なんというサクセス・ストーリー! でも、自分の枠を超えるために全力でぶつかり、前進のない「楽しい今」にキッパリ別れを告げて、次のステージへとチャレンジしてきた人だからこそだなぁ・・と、アッバレ、と思うのだった。 この本を読んで、よし私も!と思うひとはどれくらいいるかどうかわからないけれども、自分の人生の主人公は自分だ!と、ちょっとでも勇気を得られたらいいね。 1 はみだしはじまり―The Very Beginning (あらゆる体液を垂れ流すカニの話;初めての駄目出し;牛乳とブルマと私;角刈り少女のiMac;スプ子流・いじめをやり過ごす方法;私が生徒会長になったら;生涯の友・パトリック1000万;妄想の中の友だち;17歳、ロンドンへ) 2 はみだす力―The Power of Odd One Out (新しい生活;ハッピーなフェミニズムを探して;歩道橋を全力疾走した夏;(チンコのうた)誕生への道;綿の勉強法;「スプツニ子!」という進路;サブカルの海を出て;数学オタク、芸大へ;《 寿司ボーグ☆ユカリ》;究極の低予算;アルバム作りに学んだこと;コラボレーションの作法) 3 はみだす未来―The Future of Odd One Out (疾走;先生と生徒の幸せな関係;インド; 二通のメール;夢を実現させる小さなコツ;ソーシャルメディアの力;「現実」からの脱出;物足りなさ;MITメディアラボの異分子;スキルの八割を決めるもの;アーティストにできること) きのう味の素スタジアムで、浦和レッズ対FC東京の試合を見る。武藤嘉紀が2得点目をあげ、ガッツポーズ。審判がしょぼい試合だったなー。
by sustena
| 2014-08-25 00:49
| 読んだ本のこと
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Comments(2)
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higphotos at 2014-08-25 18:35
なんとも忙しい人生の方ですね。
なるべく省エネで暮らしたいと思っている自分には強烈です。 写真はサッカーですか。スポーツ写真は珍しくないですか。 雰囲気ばっちりのスナップで素晴らしい。 私も久しぶりの更新をしましたよろしければ、お立ち寄りください。
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sustena at 2014-08-26 23:01
higphotos さん、たしかに強烈すぎる生き方で、ひっくりかえってもマネできません。サッカー観戦は2回目で、素人にしてみれば、4対4というのはPKで3点入ったとはいえ、前半と後半で戦い方の修正の仕方とか、いろいろ楽しめました。
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