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2014年 06月 26日

『なにわの華 文楽へのいざない―人形遣い桐竹勘十郎』

c0155474_2354585.jpg桐竹勘十郎の舞台写真と、生い立ちから人形遣いの第一人者になるまで、芸談をまとめた『なにわの華 文楽へのいざない―人形遣い桐竹勘十郎』(2014年5月 淡交社刊)を読む。タイトルだけを読むと、文楽の入門書みたいだけど、文楽で勘十郎のすごさにびっくりした人が、どんな人物なんだろう・・?と読むべき本であります。舞台の撮影は、ヒロセマリコさん。文章は落語作家の小佐田定雄さん。

勘十郎は、人形遣いの中では一番好きなひと。1953年に二世桐竹勘十郎の息子として生まれ、14歳のときに文楽協会人形部研修生となり、簑助の弟子に。2003年に勘十郎を襲名し、立役と女方の両方を遣う。

子どもの頃の夢は漫画家になること。ご本人によると、小さいときから楽屋で遊んでいて、中学2年のときに人形遣いが足りないからと公演の手伝いに駆り出されて学校を休んでいるうちに、このままでは上の学校にもいけないということになり、どうせ勉強が大嫌いだからと人形遣いになると宣言したという。親の元では甘えるからと、簑助に入門し、足、左と修業を積み、目標を定め、思いがけぬ代役でひとまわり大きくなりながら、実力をつけていく。

なるほどと思った話はいろいろある。たとえば、修業時代にじっとしている役が大変だったという話。
動かないときは、主遣いも左遣いも足遣いも一緒にじっとしていなければならない。簑助師匠は「いつ息してんのかな」というぐらい呼吸しているかどうかわからない。それが足遣いが胸で息をすると足が動いてしまうので「じっとせぇ」といわれる。足を遣っていたとき、むやみに息ができないので酸欠で倒れそうになったこともあったという。

主遣いの腕は、人形のコントロールはもちろんのこと、足や左をいかようにも遣えること。だから、うまい主遣いの足や左を遣わせてもらうと、急に自分がうまくなったような気になるくらい十分な芸をさせてもらえるのだという。空間と間の取り方を主遣いがつくるのだ。

勘十郎は簑助のもとで修業したので立役と女方どちらもとても上手だ。しかし、両方やるのは実は非常に難しい。まず「構え」が違うし、遣う筋肉も違う。たとえば寺子屋の段の松王丸など、衣装もビロードで首が重たいので十キロはある。まっすぐ持っている分にはそれねど重みを感じないが、首実検の場面ではずっと前にかたむけていなければならない。なのでちゃんとペース配分できていないと、元の位置に人形の姿勢を戻せなくなるのだそうだ。

勘十郎は、じっとしている役より動きのある役、心情あふれる泣く芝居、手負いの役が好きだという。沼津の段の平作のときは、腹を突いてからの息遣いや、体の角度を考えたという。人間は痛いほうに傾く、無理して喋ったあとは息が早く、またゆっくりになる。そういう息遣いを、肩なのか、胸なのか、女形や立役によって研究していく。

あとがきで、玉男から、「父親の真似も簑助の真似もしたらいかん」と言われたことが載っている。修業は真似から入るが、表面に現れ出たものではなく、形の奥にあるなにかを学べということを言ったのだろうと述懐する。

巻末の「思い出の舞台拾遺」によると、2010年7~8月に国立文楽劇場で演じたとき、実は腎臓がんが見つかってその1カ月前の6月に手術をしたということがさらりと載っていた。休演したくないので筋肉を傷つけないように手術してもらい、リハビリして初日に間に合わせたのだという。びっくりー。

ヒロセさんの舞台写真の多くは、実際に観た舞台だったから、そうなのだ、この人の人形は本当に生きているのだ!と舞台を思い出したことだった。

勘十郎さんのこと 竹下景子

傾城恋飛脚(孫右衛門)
寿式三番叟(三番叟)
新版歌祭文(おみつ)
妹背山婦女庭訓(お三輪)
本朝廿四孝(八重垣姫)
壇浦兜軍記(遊君阿古屋)
心中天網島(紙屋治兵衛・紀の国屋小春)
絵本太功記(武智光秀)
菅原伝授手習鑑(松王丸)
大塔宮曦鎧(斎藤太郎左衛門利行)
伊賀越道中双六(親平作・山田幸兵衛)
夏祭浪花鑑(団七九郎兵衛)

勘十郎ばなし その一
誕生の段/簑太郎入門の段/かけだしの段/あこがれの段

義経千本桜(狐忠信、実は源九郎狐)

勘十郎ばなし その二
一大事の段/襲名の段/人形は恋人の段/小割苦心の段/海外公演の段/海外普及の段/高津小学校の段/鹿角座の段/子どもたちに文楽をの段/杉本文楽の段/人形役割の段/好きな役の段/役いろいろの段
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by sustena | 2014-06-26 00:17 | 読んだ本のこと | Comments(0)


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