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2013年 09月 24日

彩の国シェイクスピア・シリーズ第28弾『ヴェニスの商人』

彩の国シェイクスピア・シリーズ第28弾『ヴェニスの商人』_c0155474_20422113.jpg松井今朝子さんが、ブログで「ヴェニスの商人」の猿之助を絶賛していたので、どーしても見たくなって、埼玉まで遠征してきた。

蜷川幸雄演出による、すべて男性の俳優によるシェイクスピアシリーズ。猿之助は以前「じゃじゃ馬馴らし」でキャタリーナを演じて喝采を浴びていたので、今回もオール・メールシリーズで登場するというから勝手にポーシャをやるのかと思っていたら、なんとシャイロックを演じているという。

シャイロックをどんな人物像として観客に提示するかは、この芝居の眼目で、以前から、自分の利益だけを追究する悪辣なユダヤ人というより、合理的な考え方の持ち主ながら、宗教が違い、多数派の中で孤立している悲劇の人といった演出はよくみられたのだけれども、今回ほど芝居の骨格がクリアになったことはないのではなかろうか。猿之助一人が歌舞伎的な発声で、シャイロックの異端ぶりが際立っていたなぁ。

とにかく、猿之助シャイロックの圧倒的な存在感で、ほかがかすんでしまうくらい。鍛えられたからだ、発声、大仰に心情を吐露する見得。長ゼリフの一言一言が、きっちり観客に届くのである。

いちばん最後で蜷川が付け加えた動作・・裁判に負けたシャイロックが、首にかけさせられた十字架をむしりとって手をギューッと握りしめる場面。手が真っ赤な血でそまって幕になる。どうしたって、シャイロックの恨みの強さ、9.11や終わりのない宗教対立を連想させずにはおかない。

バサーニオはアントーニオが肉を担保として提供するほどの親友にはちと思えなかった軽薄ぶりで、アントーニオも高潔な男というより、一緒にシャイロックをいじめていた高みから人を見下すイヤなジコチュー男の面が強いように思えたけど、これは演出の計算かな?

ポーシャとネリッサの配役はマル。とくに裁判での変身ぶり。男性が配役ならではの自然さ、キュートさだった。

演出:蜷川幸雄
作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
出演:
市川猿之助(シャイロック)、中村倫也(ポーシャ)、横田栄司(バサーニオ)、大野拓朗(ジェシカ/シスター)、間宮啓行(グラシアーノ/僧侶)、石井愃一(老ゴボー/テューバル/僧侶/シスター/高官)、高橋克実(アントーニオ)
青山達三(ヴェニスの公爵/僧侶/モロッコ大公多雨の従者)、手塚秀彰(モロッコ大公、僧侶/高官)、木村靖司(アラゴン大公、僧侶/シスター/高官)、大川ヒロキ(ソラーニオ/僧侶)、岡田 正(ネリッサ)、清家栄一(ランスロット・ゴボー/僧侶/シスター)、新川將人(サレーリオ/僧侶)、鈴木 豊(ロレンゾー/シスター)、福田潔(ポーシャの召使/僧侶/楽師/シスター/高官)、市川段一郎(アントーニオの召使/僧侶/シスター/バサーニオの従者/高官)、鈴木彰紀*(ステファノー/僧侶/シスター/バサーニオの従者/ポーシャの侍女/アラゴン大公の従者/牢番/高官)、隼太*(僧侶/モロッコ大公の従者/ポーシャの侍女/シスター/高官)、坂辺一海*(リオナード/僧侶/シスター/ポーシャの侍女/アラゴン大公の従者/高官)、白川大*(僧侶/モロッコ大公の従者/ポーシャの侍女/シスター/高官)、丸茂 睦(楽師・アコーディオン/僧侶)
*さいたまネクスト・シアター
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追記
写真は、瀬戸内国際芸術祭の豊島にあった作品。スイスのアーティスト、ピピロッティ・リストの「あなたの最初の色(私の頭の中の解-私の胃の中の溶液)」という映像作品。円形のスクリーンに投影されていたのー

by sustena | 2013-09-24 23:27 | Theatre/Cinema | Comments(8)
Commented by higphotos at 2013-09-25 10:21
何の写真でしょう。全く分からん。
実に淡くて複雑な色ですね。

昔からお芝居と言うものになかなか縁がありません。
音楽とかだと、クラッシック好きなんでヒョイヒョイ聞きに
行っていましたが、最近は全く。。。

お芝居、音楽もそうですが、スナップにしても田舎だと良い機会が少なく、
つまらんなぁとも思います。

が、実はそれも本人次第なんでしょうね。
今は子供と遊ぶので手イッパイ。クリエイティブとは真逆に生きています。
Commented by sirokabu2011 at 2013-09-25 16:32
歌舞伎俳優さんも歌舞伎だけでなくいろいろなお芝居に出られるのですね 綺麗な楕円形の玉ですかね
Commented by Lucian at 2013-09-25 21:53 x
本物のユダヤ金融と比べたら、シャイロックなんてかわいい小悪党ですね。
Commented by sustena at 2013-09-26 13:15
higphotosさん、ワカラナイのも無理はないです。これは、ピピロッティ・リストのアート作品で、あわてて追記しました<(_ _)>
子どものクリエイティビティには脱帽しちゃうので、しょっちゅう一緒に行動しているhigphotosさんは、無縁なんてことはないです。
Commented by sustena at 2013-09-26 13:18
sirokabu2011さん、とくに猿之助の多彩さはオドロキです。でも歌舞伎役者さんたちのカラダの鍛え方はすごくて、あれだけカラダを使える人は、ふつーの芝居の役者さんにはそんなにいっぱいいないと思います。
Commented by sustena at 2013-09-26 13:18
Lucianさん、グローバル資本主義下の腕こき商人を主人公にしたら、いったいどんな芝居になるんでしょうか???
Commented by エリザベス at 2013-09-29 10:47 x
やっぱり、どうしても観たくなって、千秋楽いってきました。
猿之助の能力の高さに、皆さんついてきてくださいねという感じでしたわ。蜷川さんも登場してのスタンヂングオベーショん、固い握手で信頼感すごいんだなあ。
Commented by sustena at 2013-09-29 20:44
エリザベスさんも遠征なさいましたか!さすがー、でしょ??
でも歌舞伎のほうは、襲名のあと、まだ新歌舞伎座にはお目見えしてないし、やっぱり外様だからか・・と、ちょっとカナシイです。


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