2013年 08月 18日
Bunkamuraのシアターコクーンで、市川海老蔵の自主公演『ABKAI-えびかい-』が開かれるというニュースを聞いた時、勘三郎と串田和美が新しい歌舞伎ファンを開拓したように、新たな試みになるのかなぁと期待したのだが、実際に見ていささか失望してしまった。 演目は2つ。 1763(宝暦13)年に4代目市川團十郎が初演した『蛇柳(じゃやなぎ)』を、舞踊劇にした、どちらかといえば正統派のプログラムと、宮沢章夫の脚本、宮本亜門演出による新作歌舞伎、『花咲じいさん』。日本昔話をやりたい!というのは海老蔵の構想のようなんだけど、宮沢章夫のホンが、ちょっとね・・・・。 ストーリーは・・・ 人間が豊かになろうと自然破壊を繰り返してきた結果、あるとき大水がおこって、村は一面灰色の景色になり、食べ物も少なくなってしまう。 そんなおり、正直者の正造爺は、森の中で動物たちにいじめられケガをしていた白いイヌを助け、家に連れ帰り、シロと名付けて、妻のセツ婆とともに可愛がる。しかし、その犬は、鬼ヶ島の鬼退治で手柄を立てた桃太郎とその一味が暴徒化し、各地で狼藉を働いてきた仲間らしい。その犬を捕えたら懸賞金が出るということで、隣に住む性悪の得松爺は村人たちとシロを殺そうとする。正造爺はシロを赤く染め、アカと名前をかえて匿い続けるが、やがて正体がバレてしまう・・・・ 愛之助サンが正直ものの正造爺に、海老蔵は性悪の得松爺と、シロ(それともう一役)である。 冒頭の大水のシーンで、観客席の上も布が覆ってしまう場面は迫力があったけど、(そして、それは先の東日本大震災を否が応にも連想させて、そのあとの展開に期待させるんだけど)、期待に胸がふくらんだのはここまで。 そのあとは、まるで金がかかった学芸会ではありませぬか。 たしかに歌舞伎のお約束の殺陣のシーンや、宙乗りもあったし、海老蔵がメインで演じるシロは、まるで義経千本桜に出てくる源九郎狐みたいな、変な浴衣を着た白犬で、ビミョーなワケアリの表情が似合ってたけど、ただそれだけ。 悪い爺さんがあまりに中途半端だし、途中で出てくる一寸法師は意味不明だし、最後に明かされる、桃太郎は実は暴徒化したわけでなくて、悪いやつが騙ってたんだってところもなぁ・・・・。 いかにも口先だけ、小手先で環境問題をネタにしたところが、このホンをつまらなくしてるんだと思う。 悪い人間のおろかしさが描かれるわけでもなく、大きな自然や運命に抗った人間を描くのでもなく、卑小な人間の滑稽さを描くのでもなく、なんとなくの歌舞伎らしさで小さくまとめてしまった感じなのである。それに、せっかく鍛えた役者たちのハッとするような身体表現がほしいよねぇ。 もっとも、ファンは海老蔵を見に来たかったのだろうから、これで大満足なのかもしれないけど。 そうそう、虫役の市川福太郎くんが堂々としててリッパ。見たことある子だなぁと思ったら、盛綱陣屋で名子役だった秋山悠介クンである。團十郎の部屋子となったのだという。 《歌舞伎十八番の内》 「蛇柳」 脚本・・・・・松岡 亮 振付・演出・・・・・藤間 勘十郎 《新作歌舞伎》 「疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。」(はやてのごときしろいぬ どとうのはなさきおきなのものがたり) はなさかじいさん 脚本・・・・・・宮沢 章夫 演出・・・・・宮本 亜門 美術・・・・・金井 勇一郎 作曲・・・・・鶴沢 慎治 出演 海老蔵 片岡愛之助 上村 吉弥 片岡 市蔵ほか
by sustena
| 2013-08-18 22:13
| Theatre/Cinema
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Comments(8)
うわ、都内で5羽もサギがまとまってるの初めて見ました。
今まで最高で3羽、たいていは2羽で、しかも仲はよくない。 珍しいです。
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esiko1837 at 2013-08-19 20:28
歌舞伎三昧、音楽会、読書、いったいサステナさんは何時寝ているんだろうと不思議です。
ただ見て終わりじゃなく、ちゃんとこうやって記録を残しながらですから、 普通の人の何倍かの濃密な時間の使い方をしているんですよね。 しかも猛暑の続く東京で。 たまにはゆっくり休んでくださいね。
続編もやるそうですね。
どんな脚本になるのやら。
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sustena at 2013-08-19 23:59
Cakeaterさん,杭の上にズラッーと並んでるのは珍しいですけど、7羽ぐらいならよくいます。杭の上は、いつもカワウが占領してるけど、このときは控えてました。
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sustena at 2013-08-20 00:01
esikoさん、本や芝居の話はつい後回しにしてて、備忘録に演目だけでもアップしとこうと思って、まとめてドドッと載せるから精力的に見えるだけですー。
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sustena at 2013-08-20 00:04
Lucianさん、お伽話はうまく風刺を効かせるか、あるいはここまで翻案できるのかーと思うくらいにしないと、むずかしいんじゃないかなぁという気がしました。新作は、いずれにせよ冒険ではあるわけですけど、見る側がチャレンジ精神に拍手したくなるようなものだといいなー、と思います。
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at 2013-08-23 11:01
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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sustena at 2013-08-23 20:50
鍵コメさま、「あのばかばかしさがたまらん」とのこと。楽しめる方がいっぱいいるならそれで成功でしょう。それに楽しそうな海老蔵は可愛かったしね。ご指摘の通り、私は頭がカタイ古いやつです。クドカンのゾンビも脱力感は笑えたんだけど、ちょっとなぁ・・の口だったので。でも宮沢さんの脚本なら、もっとブッ飛んだものを期待してたんですよー。
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