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2013年 05月 05日

「絵本 化鳥」がすばらしい!

c0155474_036675.jpg泉鏡花が23歳のときに書いた『化鳥』が絵本になった。

橋のたもとの番小屋で、橋銭で暮らす母と息子の廉が主人公。少年は、いつも橋をわたる人を見ている。
雨の日、笠と蓑をきて橋をわたっていくのはいのしし、つりをしてるのは、きのこだ、なんて見立てて遊んでいる。

学校の先生は人間が一番偉いというけど、鳥や獣や魚だって、人間と同じように知恵もあるし、人間だけが立派なものだなんてことはないと廉は思う。「先生より花のほうがうつくしゅうございます」って言った、と告げる少年に母は語りかける。「そんなこと人のまえでいうのではありません。おまえと、母様のほかには、こんないいことしってるものはないのだから」

あるとき橋の近くの棒くいにつながれている猿をからかっているとき、少年は川に落ちてしまう。おぼれそうになったとき、「五色のはねのはえたうつくしいねえさん」が助けてくれる。もう一度、そのねえさんに会いたくて、少年は鳥屋や、桜山と桃谷と菖蒲の池のある梅林に出かけていく。だんだん日が暮れていき、自分も鳥のように見えてこわい思いをしたとき、帰りが遅いので探しにきてくれた母様が後ろからしっかり抱きとめてくれて、ああ、あのはねのはえたうつくしい人は、母ではなかったかと思う。

──かいつまんでいうとそんなストーリーである。

B5判71ページ、横長で文字は縦書き(読みやすいように、原文の漢字の多くをひらがなにしてある)

絵を描いたのは京都市の瑞泉寺の僧侶でもあるイラストレーターの中川学さん。これまで鏡花の「龍潭譚」の絵本を自費出版したこともある人。とくに冒頭の、少年が橋を通る人を動物に見立てている場面の絵がすばらしく、そのまますーっと鏡花の物語に入っていける。

この絵本は泉鏡花文学賞制定40周年を記念する事業の一環として出版されたもの。文章はもちろん泉鏡花のものだが、ちょっと長いので、筋はそのままに、「けずる」のではなく「とりだす」形で編集したそうだ。
巻末に、鏡花の原文が新字・現代仮名遣いで掲載してある。、

国書刊行会から2012年11月に発行。泉屋宏樹さんの装丁もすてき。とくに見返しの紙がぴったり。
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by sustena | 2013-05-05 00:36 | 読んだ本のこと | Comments(2)
Commented by Lucian at 2013-05-06 22:48 x
大切なものは目に見えない…。
星の王子様よりも昔に書かれていたんですね。
イメージの中で少年とリリー・フランキーさんが重なります。
Commented by sustena at 2013-05-07 23:40
私も、生物多様性がどーのこーのという遙か昔に書かれたんだなぁと思いました。


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