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2013年 04月 08日

池澤夏樹『双頭の船』

c0155474_177116.jpg池澤夏樹さんの『双頭の船』(2013年2月刊)を読む。3.11後、たびたび現地を訪れ、朝日新聞の「終わりと始まり」のコラムでも定期的に大震災や原発について発言を続けている池澤さんによるファンタジーである。

主人公の海津知洋は何事も自分で決められない性格で、恋人にフラれてぼんやりしているときに、恩師の風巻先生から、ぴったりのボランティアの仕事があると紹介され、瀬戸内の小さなフェリーに乗り込む。それは、舳先も船尾の区別がなくどちらにも進める双頭の船で、放置自転車を修理して被災地に届ける役目の船だった。知洋は自転車修理の腕を活かし、北へと向かうことになる。

被災地で、船は次第に変容していく。銭湯がわりの「お湯っこ」になり、ボランティアの宿泊所になり、やがては500戸の仮設住宅の建設が始まり、多くの被災者が集い、新しい家族が誕生する。死者さえもこの船でいっしょのときを過ごしていた。
こうして、船はさくら丸と名前を変え、集う人たちが生計を立てることができる機能をそなえ、次第に大きくなってゆく。

マンションに熊を連れ込んだベアマンを助けて、熊をもとのすみかに放してやった千鶴さんや、被災地のペットを連れて旅してきた獣医、金庫をあける天才的な腕をもつ金庫ピアニスト、津波で九死に一生を得た才蔵、そして住民の心を掴み、新しい世界へ繰り出そうとアジる荒垣源太郎など、さまざまな人が船に乗り合わせる。

さくら丸という名前を目にすると、私は反射的に安部公房の『方舟さくら丸』を連想しちゃう。あれは核戦争の恐怖に駆られた男が妄想した巨大シェルター内の話だった。池澤夏樹さんの構想したさくら丸は、震災後のノアの方舟だろう。

震災を体験した人はこの小説を読んで甘ったるいと思うのだろうか。希望と癒しの物語として読むのだろうか。

今年は大好きなコブシを見ないうちに終わってしまって、旅行から戻ってから散歩したらショレショレの花がほんのわずかに枝割きに残ってるだけだった。早くもハナカイドウが咲いて、それももうオシマイ。
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by sustena | 2013-04-08 17:08 | 読んだ本のこと | Comments(0)


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