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2012年 12月 23日

西 加奈子『ふくわらい』

c0155474_1344835.jpg西 加奈子さんの『ふくわらい』(朝日新聞出版 2012年8月刊)を読む。

主人公は書籍編集者の鳴木戸定。25歳。紀行作家の父の栄蔵がマルキ・ド・サドをもじって名づけたのだ。母親を早くになくし、父も鰐に体の半分を食いちぎられて死に、乳母の悦子に育てられた。

人肉食の風習のある秘境で人肉を食べたことを父がエッセイで書いてから、人肉を食べた女として世間に名前を知られてしまい、友人は一人もいない。喜怒哀楽の感情をほとんど示さず、唯一の趣味は子どもの頃からの福笑い。相手の顔のパーツをばらばらにして位置をずらして眺めているのだ。

定が担当しているのは、一癖も二癖もある作家ばかり。
ニートのひきこもりだった過去のある之賀(これが)さいこ(雨が降り続いているから書けない。雨をやませろ、なんて無茶な要求をする)、些細なことで編集者を罵倒したり困らせる91歳の老作家の水森康人、そして、鬱病で、すさまじい人相(眼窩骨折をそのままにしたために左目が脱落したように下に落ちていて、鼻は大きく左に曲がり、眉筋はハッキリしているが眉毛がない、いわば失敗した福笑いの顔)プロレスラー守口廃尊の担当になってから、少しずつ変化があらわれていく。
そしてある日、新宿で白杖をもって暴れている盲目のイタリア人と日本人のハーフの武智次郎に会って・・・・

不思議な感覚の小説であります。
とってもヘンテコな主人公で、ありえねー、と思うんだけど、読み進むうちにどんどん作者の術中にハマっちゃう。

おしまいのほう、出版社の屋上で雨乞いをしてるときに大泣きしている姿に接して以来、仲良くなった美人の同僚編集者の小暮しずくが、ヨッパーになりながら定にいうセリフがよかった。
「・・・今いる定ちゃんが、先っちょで、すべてなんだよ。・・・あのさ、定ちゃんさ、長生きしてね。先っちょの後ろに、どんどん、すべて、が大きくなるんだよね。だから、ねぇ、長生きしてよ。ね、私もするから、長生き。絶対ふたりで、長く、生き、ようよ、ねぇ」

西加奈子さんは1977年テヘラン生まれ。関西大学法学部卒業。2004年にデビュー。2007年『通天閣』で織田作之助賞を受賞したひと。
写真は本日図書館からの帰りにケータイでぱちり。
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ついでに初歩的な顔写真を。
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by sustena | 2012-12-23 01:42 | 読んだ本のこと | Comments(4)
Commented by iwamoto at 2012-12-23 09:59 x
織田作之助のカレー、大阪まで食べにいきました。
Commented by sustena at 2012-12-24 00:21
自由軒のカレーは食べたことがありません。吉田健一の好きだったという銀座「よし田」のコロッケ蕎麦は食べたことがあるんだけど。
Commented by Cakeater at 2012-12-30 17:40 x
うわあ、やばかった。うっかり、西条奈加(URLに入れてる記事です)と間違えてコメントを書くところでした。てっきり同じ人が漢字のアナグラムでペンネームにしてるのかと思っておりました。とすれば、この西さん、ちゃんと読まねば。あぶない、あぶない。lolololol
Commented by sustena at 2013-01-01 14:50
西条奈加さんのこと、初めて知りました。読んでみようッと。でもほんと、漢字アナグラムと見間違っちゃいそうですね。


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