2012年 12月 06日

長沼毅『長沼先生、エイリアンって地球にもいるんですか?』

c0155474_0483535.jpg京都に行くときに持っていったのが「吟遊科学者」であり、「科学界のインディ・ジョーンズ」という異名を持つ辺境生物学者・長沼毅さんの対談集、『長沼先生、エイリアンって地球にもいるんですか?』(新潮文庫 2012年10月刊 親本は2009年7月NTT出版)。

これは、2008年3月~5月に行われた、日本科学未来館の企画展「エイリアン展──モシモシ、応答ネガイマス。」の関連トーク・イベント全4回の記録に、ラジオ番組J-waveの取材記録を加えて再構成したもので、地球外生命の存在する可能性について、長沼さんが6人のゲストと語りあっている。

長沼センセイはなにしろ野口聡一さんが宇宙飛行士に選ばれたときの第二次選考まで残ったほどの宇宙ファンで、才気煥発で、話がうまいヘンな人。生命とは何か、エイリアンっているんだろうか? なんてことをテーマにホスト役をさせるに、この人ほどピッタシなひとはいないんじゃないだろうか。

構成は次の通り。

はじめに 深沢秀一(日本科学未来館)

第0章 エイリアンって地球にもいるんですか?
山田五郎 中川翔子

第1章 エイリアンはひきこもり?
佐々木晶(惑星科学、国立天文台教授)

第2章 生物と生命のあいだ
福岡伸一(生物学者 動的平衡のひと)

第3章 生命は遊びだ!
池上高志(東大の複雑系の人。コンピュータで動く半生命などの研究をしている

第4章 茶の湯とエイリアン
千宗屋 

あとがき 長沼毅
エイリアンはお前じゃないのか? 高橋秀実(ノンフィクション作家)

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国立天文台の佐々木さんとの対談では、地球の生命は火星からきたという説が披露される。我々のような生命ができるためには、炭素や酸素のような比較的重たい元素が必要であって、そのためには素粒子同士が引き合う力などの素粒子の物理的な性質が、今の宇宙物理法則とちょっとでも狂うとうまくいかないらしい。でも佐々木さん自身は、「違う宇宙には違った生命がいてもいい」と考える。
でも、では他の生命から何かコンタクトがあるだろうかと考えると、現状だけで満足しちゃうひきこもりタイプだっているはずで、彼らがわざわざ外の宇宙のことまで知りたいと思う必然性はないんじゃないか? また文明が誕生してせいぜい5000年、電波を使いだしてからはわずか数十年ぐらいのスパン。たとえば太陽系の歴史ひとつとっても45・5億年だから、そんなちょっとの間に、他の文明と出会えるタイミングがあったろうかと考えると、けっこうビミョーだったりする。

なぁんて話が矢継ぎ早に語られる。

福岡さんとの話でおもしろかったのは、宇宙において最も大量に存在して、最も不思議な分子は水だということ。H2Oは折れ曲がった「へ」の字のような格好をしていて、それは酸素原子が同じ方向にスピンが巻いているからで、そのために酸素分子がものを酸化するパワーを持ち、進化の爆発を生んだんだって。

また、分裂して増える微生物は分裂していくとどっちがコピーでどっちがオリジナルかわからないけど、どんどん分裂してバタバタ死んでいっても、たった一個残っていれば、不老不死だといえる。それなのに多細胞生物になった我々がどうして不老不死になれないのか? (あっ、がん細胞は不老不死ね)。
多細胞生物にとってはアポトーシスをはじめ、死に向かうベクトルが重要であり、生命を考える上では、こうした時間の矢について考えることがキーになってくる。

生命と時間の話は、東大の池上先生との話題でも出てくる。
人間の脳にとっての「一瞬」は0.08秒から0.1秒ぐらい。その間に描法が失われた部分があると、さかのぼって「今」と思うメカニズムを持っている。また、脳の電流を計測すると、人間は何かをしようとする前にすでに体が動き始めているから、そこでの「意思」は何かをしようとするのをやめることなのだ、という一見、逆説的な話にへーえと思ったり。

池上さんは、「プログラムした人工生命ってなかなか死なないけど、死んだほうが生命っほい」とおっしゃる。そういえば、パソコンも、言うことを聞いてくれないほうか、なんか自分の仲間みたいな気がするよね。

こんなふうにいろんな人としゃべりながら、では長沼先生はどんなエイリアンをイメージしているかというと、千さんの対談で明かしている。

「頭でっかちで、頭の中にスーパーコンピュータが入ってる。それから僕の想像する宇宙人は、記録と記憶が全部同じなの。自分が生まれてから死ぬまでが全部記録されている。これはお互いに共有可能」

自他の区別もなくて、戦争も起きないんだって。
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GRD3

by sustena | 2012-12-06 00:49 | 読んだ本のこと | Comments(10)
Commented by GOLD-BOY at 2012-12-06 02:33 x
面白かったです。

特に、
「人間の脳にとっての『一瞬』は0.08秒から0.1秒ぐらい・・・『意思』は何かをしようとするのをやめること・・・」←人の意識のメカニズムを究明するヒントになり得る「気」がしながら読ませて頂きました。

長沼氏のエイリアンイメージも面白いです。
「記録と記憶が全部同じで全部記録され共有可能」←アカシックレコードとの接続を具現化しているイメージをしてしまいます。
「自他の区別もなくて、戦争も起きない」 ←う〜む、 禅に「他人(ひと)をも我と知るならば、これぞ菩薩の境地なり」というフレーズがありますが、氏のエイリアンイメージは「悟りの境地」もしくは「神」に見えますわw
肉体という制約を持って可能か否か微妙な気もしますけど、案外三次元の前提条件無しで語っているのか?とも想像したり。

いずれにせよ面白く、参考になりました。
Commented by iwamoto at 2012-12-06 07:13 x
「水の角度」この話を高校生のときに聞いて、これって奇跡の角度だと思いました。
一瞬は物理的には、1/30秒くらいでしょうか。 漢の字の意味は瞬きですよね。
Commented by Lucian at 2012-12-06 21:02 x
人間より知的に進化したエイリアンは頭でっかちではないと思います。
大量の記憶を脳に入れておくと大きな容量を必要とするので、外部に普遍的に保存してアクセスしたほうが合理的です。
演繹と帰納を受け持つ"CPU"だけを進化させればいいのでコンパクトになるはずですね。
自他の区別は、物質の身体を持つ限りは生物学的に付随するものです。
メンタル部分のソフトウェアをアップグレードして補正は可能ですが(笑)
Commented by ken_kisaragi at 2012-12-06 21:53
「もちも~ち。こちら地球星、日本国、シロ隊員…」
微妙であれ、出会える可能性が有ると思うだけで楽しいですね。

「記録と記憶が全部同じで全部記録され共有可能」
ここで言われているのは普遍的な真理かな?
脳の神経ネットに素子(デバイス)を直接接続する電脳化、、、まさしく攻殻機動隊の世界!
読んでみたいです。
Commented by jmiin at 2012-12-09 12:59
お久しぶりです。エイリアンのjmiinです^^;
また、ぼちぼちで再開しますのでよろしくお願いします。

科学の世界は突き詰めていくと神様の存在を意識しないと説明が
出来ない事が沢山あるのですが、実はこの世は科学で成り立っている
訳で、それって神様の存在で成り立っている。とも言えると結構真面目
に思っています。
Commented by sustena at 2012-12-10 16:54
GOLD-BOYさん、池上センセイは、動きや時間から生命を考えているおもしろい方です。センサーの背後に心はあるのか?をロボットを通して実験したり。もっかセンセイの別の本を読んでるんですが、難しすぎてついていけません(T_T)
Commented by sustena at 2012-12-10 16:55
iwamotoさんは物理や化学に強いのでウラヤマシイです。私は取材に行ってもハテー???って顔をしています(T_T)
Commented by sustena at 2012-12-10 16:58
Lucianさん、大量の記憶を脳に入れておくと大きな容量を必要とするのはたしかですが、最近どんどん小さくなっているので、外部にアクセスしなくてもダイジョウブになったりして。私は、記憶を自在にシャッフルして見せてくれるロボットはいい奴かいやな奴か、ぼけっと考えたりします。
Commented by sustena at 2012-12-10 16:59
kenさん、おひさしぶりです~。最近、ひょんなことからAKIRAを読み返したりしてます。
Commented by sustena at 2012-12-10 17:02
jmiinさん、まだまだ無理はなさらないでくださいね。撮影はいいリハビリになるのでしょうか?
進化や生命のことは考え始めるとワカラナイことだらけで、わかりやすい本があると、つい手に取ってしまいますが、感動しても最近はすぐ忘れてしまって悲しい・・・・


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