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2012年 07月 10日

アースダイバー

c0155474_23111441.jpg建築家が最近読んで感銘を受けた本を挙げると、3人のうち一人は決まって中沢新一の『アースダイバー』(2005年6月刊 講談社)を挙げてるので、読んでみた。

おもしろくて、知的好奇心がむくむく湧き上がってくる一方で、中沢節にちょっとゲンナリして、食あたりした気分も半分以上である。

一言でいうと、今の東京に、縄文海進期と呼ばれる時代に陸地だった洪積層と、水が浸入していた沖積層の分布マップを重ね合わせて、新宿や渋谷、麻布~赤坂、東京タワー近辺、浅草など、東京の土地やその来歴、土地にまつわるイメージなどを読み解いたもの。

たとえば新宿は伊勢丹や紀伊国屋あたりを別にすれば、いたるところ湿地帯で、西新宿は暗い森に包まれた十二社の池がありジメジメした一帯で、そこから大ガードを越えて大久保に近づくとそこも沼地が広がっていた。沼地の中心には弁天様を祀った湧水池があり、そこが水源地となって、一本の川が東大久保村、戸山村を抜けて神田川に合流していた。
明治30年代になって、淀橋に浄水場をつくる計画が持ち上がり、淀橋の大量の土で湿地帯を埋め立てて形作られて行ったのが、歌舞伎町であって(ここに歌舞伎座を持ってこようという気宇壮大な計画が立てられたので歌舞伎町と命名された)、だからこそ歌舞伎町は湿地のエロチシズムで満ち満ちているのであーる。

あるいは、

東京タワーは縄文時代以来の死霊の王国のあった場所に建てられている。ここはかつて、東京湾という海原に突きだした大きな半島だった。そこは縄文人たちによって「サッ」と呼ばれた、超越的な領域、死の領域との境の地帯であり、聖地だった。縄文時代の人たちは、岬のような地形に、強い霊性を感じて、そこに墓地をつくったり、石棒などを立てて神様を祀る聖地を設けた。その極めつけが、東京タワーであり、聖地のアンテナなのだ。
中沢によれば、東京タワーだけでなく、愛宕山のNHKもそうだし、TBSなども日枝神社にある岬に向かい合った赤坂一ツ木通りの裏手にあった。電波塔はことごとくこういった岬に建てられ、大地の霊力を媒介にして情報資本が巨大化していく(ほんまかいな)。

浅草のお酉さまで有名な鷲(おおとり)神社の熊手から鷲が消えたのは日露戦争から、なんて豆知識は楽しかったよ。

でもちょっと全体が図式的すぎるし、女性的なものを湿地のエロティシズムとつなげて謳いあげる箇所などはとてもついていけない。
それと最終章、アジールを支配して守る存在としての皇居にふれながら、21世紀の森の天皇を構想した箇所
「いまの世界の支配者は押しつけがましい西欧育ちの資本主義経済で、この支配者は自分の原理にしたがわないアジールを、どんどんつぶしてきた。それに対抗できる原理が天皇制にはあるかもしれないのである。
もしも天皇制がグローバリズムに対抗するアジールとして、自分の存在をはっきりと意識するとき、この国は変われるかもしれない。そのとき天皇は、この列島に生きる人間の抱いている、グローバリズムにこたいする否定の気持ちを表明する、真実の『国民の象徴』となるのではないだろうか」
という文章などは、あまりに不用意で、解釈のされかたによっては、危ういんじゃないかなぁ。

第1章 ウォーミングアップ―東京鳥瞰
第2章 湿った土地と乾いた土地―新宿~四谷
第3章 死と森―渋谷~明治神宮
第4章 タナトスの塔 異文/東京タワー―東京タワー
第5章 湯と水―麻布~赤坂
第6章 間奏曲―坂と崖下
第7章 大学・ファッション・墓地―三田、早稲田、青山
第8章 職人の浮島―銀座~新橋
第9章 モダニズムから超モダニズムへ―浅草~上野~秋葉原
第10章 東京低地の神話学―下町
第11章 森番の天皇―皇居

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by sustena | 2012-07-10 22:01 | 読んだ本のこと | Comments(10)
Commented by Lucian at 2012-07-10 22:35 x
ファンタジーノベルと割り切れば、中身は好みの問題だけかもしれません。
Commented by Cakeater at 2012-07-11 21:52 x
昔から、中沢の本は真由鍔もの扱いしてます。lolololol
Rachell Garniez という女トムウエイツを見つけました。歌詞も、トム同様ひねりが利いて、にやりというよりは笑わせてくれる、いかにもNY。
これは真物。最初にTEDの注目アーチスト動画で見つけたときは、フランス人かと思ったくらい。
Commented by sustena at 2012-07-15 22:56
Lucianさん、肌合いの合わない人っているんですよー。もっとも中身がよくわからなくて、,苦手だ、と思っちゃう人も私の場合、いっぱいあるんですけど。
Commented by sustena at 2012-07-15 22:57
女トムウェイツ!Cakeaterさんは新しいアーティスト狩猟のパワーがあってすごいなぁ。
Commented by jmiin at 2012-07-15 23:16
危うい解釈をやってみたくなる文章ですねぇ.....
ダメだって、こう言う文章は^^;
Commented by sustena at 2012-07-16 17:49
jmiinさん、でしょー?? 私は中沢の本は対談集以外は読み通したことがないんですけど、今回は時間がかかったけど、なんとか最後までたどりついたと思ったら、これですもん。
Commented by Cakeater at 2012-07-16 23:14 x
探しに行かなくても、ひょいと出会うんです。昔、ブレイクする前の山本リンダや山口百恵、ルー・リードとであったときみたいに。トム・ウエイツもそうだったけど、なにかのついでに目の隅に飛び込んでくるんですね。レイチェル・ガルニエを見つけたTEDというのは、オピニオン収集サイトみたいなもので、英語で雑誌が読めるなら集中すれば聞き取れる発言集なんです。後ろにアングロサクソンの言論操作集団が隠れてるかもしれないと思って聞くとちょうどいいかなあってサイトです。そこの音楽関係は、グローバルに新しい才能を拾い集めてきてくれてるので、けっこう重宝します。アート関係も芝居映画関係もありますから、(好きなジャンルなら言葉が分らなくてもいい悪いは判るもの)時々のぞいてみると面白いかもです。
Commented by sustena at 2012-07-17 22:22
ふむむ。何かの拍子にフト出会って、芋づる式におもしろいアーティストを見つける・・というのが若いときの常でしたが、やっぱりそういう感度が高くないとひっかかってこないんですよー。
関係ないけど息子がTOEICの前に、超速で英語を聞いていたら、普通のテンポの英語がめちゃ遅く聞こえるはずと、秘策?を練ってたけど、そんなに単純に聞き取れるものかしらね。
Commented by Cakeater at 2012-07-19 09:22 x
昔のFENのニュースを使って、いくつエピソードが語られたかというのが、駒場のリスニングの毎週のテストでした。あれは、英語ニュースの中でも速過ぎるという悪評がありましたし、ルーリードのライブもめちゃ速かったですけど、TEDで聞けるのは、講演の「プロ」の練りこまれたトークですからずっとわかり易く聞きやすいと思います。そういう伝達の達人のものじゃないとTEDはよほど面白いものでないかぎり、取り上げないようです。
聞き取り能力は結局聞いた量(時間と文数)ですから、早回しで聞くのも効果はあるはずです。アルバムの中の一曲を繰り返し聞くのと全部通しで聞くのは、目的が違うわけです。繰り返し聞くのは歌うためコピーするためで発話する能力開発には有効ですが、即解力は通し聞きの方がよさそうと思います。
教材を聞くくらいなら、喉自慢歌番組聞く方をぼくは選択しますね。審査員の誉め方を聞くのと、ハッピーなときのハッピーな表現をいっぱい聞けますから。
Commented by sustena at 2012-07-19 22:07
先日の世界ののど自慢のブラジルのひとがよかったなー。


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