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2012年 05月 27日

5月花形歌舞伎夜の部

五月花形歌舞伎の夜の部は、曲亭馬琴の原作に、三島由紀夫が構想を得て書き下ろし、自ら演出もしたという『通し狂言 椿説弓張月』だった。国立劇場で初演されたのが昭和44年11月とのことで、三島の割腹自殺はその1年後。だからこの歌舞伎の主人公・源為朝は、スーパーヒーローの威勢のよい勧善懲悪のストーリーではなく、崇徳上皇への忠誠を抱きつづけ、死に憧れる憂国の士といった趣だった。
そーゆー意味では、クラーイ貴公子の風情のある染五郎は、スケールはいまいちだけど、役としてはピッタリ。

とはいえなんだかヘンテコな芝居なんである。やたら人がいっぱい死ぬしー。ハデな怪魚が登場するかと思えば、いいオトコの拷問シーンがあるしー。

こんな話です。

「上の巻」では、保元の乱に敗れ、伊豆国大嶋に流された為朝が、家臣の紀平治太夫(歌六)や高間太郎(愛之助)、その妻磯萩(福助)らとともに再挙の時を窺っているが、平家軍に襲われる。父と夫が戦うことに絶望した妻の簓江(ささらえ・芝雀)は身を投げて死に、源氏の末裔としての誇りを忘れるなと教えた息子・為頼(玉太郎)は為朝の教えを守り雄々しく戦うが、瀕死のところを為朝に介錯を求める。苦悶する為朝。その後為朝は紀平治太夫と共に小舟で西へと向かう。

「中の巻」では、讃岐で死のうとしていた為朝だったが、上皇の霊のお告げに従い、九州肥後へ向かう。そこで、妻白縫姫(七之助)と息子舜天丸(鷹之資)と再会する。一行は平家討伐をめざして船出するが、嵐に見舞われてしまう。そこで白縫姫は海神の怒りを鎮めるために海に身を投げる。海に投げ出された高間は妻を殺したあと割腹自殺する(ここの血がドバーッはめちゃ派手)。紀平治太夫と舜天丸は黒蝶になった白縫姫の霊に助けられ、怪魚の背に乗り難を逃れる。平家と戦う前にこんな目に遭っちゃうんである。怪魚がとんでもなくハデでインパクトがあったな。

そうそう、中の巻でめちゃエグイ場面があるのであります。白縫姫が自分で旗揚げしようと隠れ家で準備を進めている。そこに引っ立てられてきたのが、為朝を裏切った武藤太(薪車)。そこで、白縫姫は殺害を命じるんだけど、実にサディスティックなんだよー。
姫が為朝の好きな曲を琴で爪弾くあいだ、裸にされた武藤太の体や足に腰元たちが順番に竹釘を打ち込むのであります。竹釘から血が流れだし、雪が染まっていくのー。ワーッ三島っぽい~。(七之助がもっと、平然としたすごみが出てるとよかったのに)

そして「下の巻」では舞台は琉球に。王位継承でモメているところ(ここでは、突然世話物になって、お涙ちょうだいの場面がある)に登場し、琉球国再興に一役買うものの、国王になることはせずに、最後天馬で去っていく。

馬はスッポンから登場するから、上皇のもとへと旅立つ、つまり死へ向かうことを表してるんだと思うんだけど、エンディングは宙乗りのほうが雰囲気だったように思うなー。

かくて、なんだか焦点の定まらないヘンテコリンな舞台だったという印象が勝ってしまったのだった。


  上の巻 伊豆国大嶋の場
  中の巻 讃岐国白峯の場
      肥後国木原山中の場
      同じく山塞の場
      薩南海上の場
  下の巻 琉球国北谷斎場の場
      北谷夫婦宿の場
      運天海浜宵宮の場

                        源為朝  染五郎
            白縫姫/寧王女(ねいわんにょ)  七之助
                       高間太郎  愛之助
               陶松寿(とうしょうじゅ)  獅 童
                          鶴  松 江
                          亀  松 也
                     左府頼長の霊  廣太郎
  舜天丸(すてまる)冠者後に舜天王(しゅんてんおう)  鷹之資
                     為朝の子為頼  玉太郎
                        武藤太  薪 車
                       大臣利勇  由次郎
                       為義の霊  友右衛門
      阿公(くまぎみ)/崇徳(しゅとく)上皇の霊  翫 雀
                      高間妻磯萩  福 助
                為朝妻簓江(ささらえ)  芝 雀
                      紀平治太夫  歌 六
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by sustena | 2012-05-27 23:21 | Theatre/Cinema | Comments(0)


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