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2012年 02月 19日

三山喬『ホームレス歌人のいた冬』

c0155474_1136098.jpg月曜日の朝日歌壇を欠かさず眺めるようになったのは、2008年の暮れ、肩書に「ホームレス」とあった公田耕一さんの歌を目にしたときからだ。歌心のない私が気になったくらいだから、そのあと「ホームレス歌人さん 連絡求ム」という三段見出しのコラムが掲載されるに及んで、異色の投稿歌人の名前はイッキに知れ渡ることになる。
9カ月間に28首の当選を果たし、2009年9月の歌を最後に、公田さんの歌はこのコーナーから姿を消す。いったいどうしているのだろう、ひょっとして、また投稿を再開していることもあるかと、なんとなく気になって、以来、通勤の満員電車の中で、新聞をタテ四つ折りにして入選作を眺めているわけなのだった。

だから、三山さんの『ホームレス歌人のいた冬』(東海教育研究所 東海大学出版会〔発売〕2011年3月刊)が出てすぐに、あっ、読みたいと思って図書館に申し込んだら、なんと同じ思いのひとが多かったのであろう、10カ月以上かかったのだった。(買えよーという声がする)

作者の三山喬さんは、1961年神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。その後フリージャーナリストとして、リマに住み、南米の移民問題などを中心に取材。2007年に帰国し、取材・執筆活動を続けているひと。

公田さんを追い求め 公開された36首を頼りにキーワードを抜き出し、横浜の寿町やその界隈を歩きまわる。ホームレスに取材し、選者や、公田さんにまつわる歌が掲載された投稿歌人に話を聞き、殺人罪でアメリカの刑務所にいる牢獄にいる郷隼人に手紙を出し、公田さんの人生に迫ろうとする。

ホームレスになるきっかけは人それぞれで、そんな暮しの中でいかに矜恃を保つことができるか、表現することの意味を問いかける。文中、フリーランスとして食べていくことの厳しさがこのルポの中でも綴られるが、いまだ派遣切りやリストラが続くご時世で、転落する危うさ、一抹の不安と重ね合わせるようにて読む読者も多いかもしれない。

第1章 まるで写楽のように
第2章 ドヤ街の人群れのなかを
第3章 「公田です」と名乗った電話
第4章 もうひとりの「消えた歌人」
第5章 奇縁の邂逅。(ここで実名で描かれる一人のホームレスの話には驚いた)
第6章 獄中歌人・郷隼人からの手紙
第7章 人それぞれの「公田耕一」
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by sustena | 2012-02-19 16:10 | 読んだ本のこと | Comments(0)


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