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2011年 07月 17日

おどくみ

おどくみ_c0155474_16342975.jpg新国立劇場で、宮田慶子演出の「おどくみ」を見る。

80年代半ば。横須賀のはずれにある総菜屋「畑中」では、弁当や総菜作りに忙しい。先代がやっていた乾物屋を、長男・幸広(小野武彦)の妻の美枝(高橋恵子)が、料理の腕を発揮して総菜屋にし、繁昌しているのだ。

幸広は配達ぐらいしかせず、家でごろごろして、いつも妻に文句をいわれている。この店を切り盛りしているのは、妻と皇室おたくのパートの酒田さん(根岸季江)なのだ。
妻の美枝を悩ませるのが、幸広の弟で、コンビニを経営しているが商才がないためつぶれそうで、何かと実家を頼り借金を重ねる二郎(谷川昭一朗)である。同居する幸広の母・カツ(樋田慶子)は、次郎にめちゃ甘い。私が一生懸命立ち働いているのは何のためよッと、美枝は大いに不満だ。

畑中家にはこどもが二人いる。学習院大学に入学した長男・剛(浅利陽介)と、妹の郁美(黒川芽以)である。剛は映画研究部に所属し、政治家志望の長崎君(東迎昂史郎)と石綿君(下村マヒロ)ともに8ミリ映画をつくっている。その映画は、なんと天皇を暗殺するテロリストをテーマにしたものだが、脚本をめぐってぎくしゃくしている。

ある日、店に宮内庁から、葉山の御用邸への弁当の仕出しの注文が入る。これで畑中も宮内庁御用達の弁当屋になれる!とはりきる幸広と美枝と酒田さん。しかしインド帰りの次男の下痢騒ぎで、畑中家に大きな危機が・・・。

ホンがなかなかよくて、それぞれの人物造形もくっきりしていて、笑いながら現代ニッポンの家族や、その背後にうっすらと横たわる天皇制について思いをはせる芝居である。

天皇制についてはそれほど声高ではない。皇室おたくのパートの酒田さんと、高等科のとき、写真部の先輩に礼宮がいて、東宮御所で夕食に招待されたことがあるという石綿くん、今のニッポンをがんじがらめにしてる目に見えない中心を問いたいと映画製作にかかるが、どつぼにはまってしまう長男と、皇室御用達に舞い上がる一家という、どこにでもありそうな設定。

でも、長男だから家長としてみんなの面倒を見なくちゃいけないという父(病に臥せっていて、姿はあらわさない)の教えに従い(通りに、妻に頼りきりなくせに、問題児の弟をなんとかしようと、妻とやりあう幸広などを見ていると、こんな価値観こそが、プチ天皇制だよねぇ・・って思っちゃう。

映画の脚本は、天皇の侍医との出会いによって、テロリストが暗殺を思い止まる話に変更することになって、ちっとも進まなくなって、完成を見ないのだが、おしまいのほうで、天皇を語ることは死を語ることと同じだと剛が語る場面がある。なんだかわかるようなわからないような、あまり収まりがよいとばいえなかったのだけれど、家庭劇の部分は大いに共感できて笑えたよ。

樋田慶子と根岸季衣がはまり役。

作:青木 豪
演出:宮田慶子
美術:伊藤雅子
キャスト
高橋惠子 浅利陽介 黒川芽以 下村マヒロ 東迎昂史郎 谷川昭一朗 樋田慶子
/根岸季衣/小野武彦
おどくみ_c0155474_14112095.jpg


by sustena | 2011-07-17 23:50 | Theatre/Cinema | Comments(0)


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