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2011年 07月 10日

村上隆『芸術闘争論』

c0155474_043298.jpg村上隆が、『芸術起業論』に続いて、物議をかもしそうな挑戦的な本を半年以上前に出して、ようよう順番がまわってきたので読んだ。『芸術闘争論』(幻冬舎 2010年11月刊)である。

実のところ私は村上隆はあんまり好きではないんだけど、現代アートの第一線で、海外を相手に勝負して、エネルギーはたんとあるひとなんだなぁ・・・というところは、この本でもシミジミ感じるのだった。

なぜ日本のアーティストが、世界に出て闘おうとしないのか!世界のアートシーンに、日本人アーティストをイッキに200人輩出させることができれば世界は変わる、アートのルールを変えることができる。でも、そのためには、日本芸術界の欺瞞の歴史と、その安楽な生き方と、闘わねば! 何よりもアートのルールを知らなければならない。闘う技術と理論武装が必要だ、と村上隆は吠える。

アートのルールとは何か。それは、歴史を重層化し、コンテクストを串刺しにすることが大事だということ。こんな明解な行くべき方向や傾向と対策があるにもかかわらず、日本の美大生やアート界は、「貧=芸術=正義」「自由=芸術=正義」の2つの神話に囚われ、私小説的な作品ばかりを生み出してしまう。それじゃあダメなのだ!

そのためにも、今日のアートの状況を知ろう。そして、鑑賞術を伝授し、自作をもとに実制作のプロセスを開示し、アーティストデビューをいかに果たすべきか、どんな画廊と組むのがいいかをアドバイスする。

鑑賞の4要素は(1)構図、(2)圧力、(3)コンテクスト、(4)個性である。実制作にあたっても同様。たとえば、構図を考えるときは、視線誘導を行い、絵画の四角い画面いっぱいにスケール感を醸成し、見る人の目を釘付けにせよ。

さて西欧における現代美術のコンテクストは、(1)自画像(2)エロス(3)死(4)フォーマリズム(=ざっくりいうと、歴史を意識すること)(5)時事
この5つをシャッフルし、レイヤーにする。こうして作品を生み出し続け、自己の振り幅を広げて、マルチプルなイメージを展開していく。そして文脈を説明する力をつけ、理解者を創造し、ネットワークを広げていけ。

あるときはまくしたて、あるときは、今どきの若者を嘆くおじさんになり、あるときは、これでもかと手の内を見せながら、懇切丁寧にアーティスト予備軍に向けてメッセージする。

うちの息子などはこんなおタクなフィギュアがなんであんな高い価格で取引されるのかがわからないと呆れているけれど、好き嫌いはともかく、戦略的ガッツは見習うべきなのであーる。

第1章 今日のアート―情況と歴史
第2章 鑑賞編
第3章 実作編
第4章 未来編―アーティストへの道
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by sustena | 2011-07-10 22:50 | 読んだ本のこと | Comments(4)
Commented by Cakeater at 2011-07-14 21:26 x
確かに、売り仕掛けの発想がこの人はすごいです。等身大のフィギュアどころか、2m越すフィギュアを(基本イメージは本物のオタク世界のイメージのパクリなんだけど)どーんと作って、さあ買え!と。。。この人、見せるんじゃなくて、買えって出すんですよね。そこが食えない骨董屋と共通するいかがわしさを感じるけど、うんアートで商売してるなあと感心してアートの創造部分の有無の検証なんか忘れて見逃してしまう。。。それにしても16億円なんて値段は驚きますね。
(アニメキャラのフィギュアは、さっき数えたら、部屋に1ダース近く転がってました。。。埃被ってlol海洋堂のプラものを加えると数ダースはあるけど、せいぜい幼稚園児の小遣い程度の値段のものばかりです)
Commented by ken_kisaragi at 2011-07-14 21:52
ほんと、その通り!
したたかな計画性や人脈、傾向と対策。
優秀なプロデューサー・・・
考えてみるとマーケティングに近いかも。
もちろん、それ以前にズバ抜けた才能が必要な訳ですが。

しかし鑑賞の4要素とかコンテクストとか・・・内訳見るとちょっと80年代?
Commented by sustena at 2011-07-15 12:51
Cakeaterさん、あれだけ大きなフィギュアを作れば、そりゃ材料費はかかるだろうけど・・。あの説明の強引なところで、それでコンテキストっていわれてもって気もするんだけど、迫力(=圧力)というかオシの強さは天下一品なのに違いないと思うわけであります。
Commented by sustena at 2011-07-15 12:52
kenさま、私は芸術家は貧しいほうが尊いなんてことは思わないけれど、やはり顔は大事だと思うわけです。ヨーゼフ・ヴォイスとか。あと詩人は痩せてるほうがイメージ。関係ないけど。


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