いつもココロに?マーク

sustena.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2011年 06月 19日

「バビロンの陽光」

「バビロンの陽光」_c0155474_22454980.jpgイラクのモハメド・アルダラジー監督の「バビロンの陽光」(2010年)を見た。

フセイン政権が崩壊してから3週間後のイラク。戦地に出向いたまま戻らない息子イブラヒムを探すため、イラク北部のクルド地区から、年老いた母と12歳の孫アーメッドが旅に出る。クルド語しかわからない老母にかわって、通訳をつとめるアーメット少年。少年は父の顔を知らない。父が音楽家だったこと、父が残した縦笛があるだけだ。

イブラヒムが収監されていると思われる刑務所のあるナシリヤまでは約900km。荒涼とした風景が果てしなく続く。道路にはごくまれにクルマが通るだけ。ようやくトラックを拾い、バクダットに到着するが、ナシリア行きのバスはいつ来るともしれない。ようよう到着した刑務所でも手がかりはつかめない。イブラヒムの生死を確かめるために、二人は集団墓地へと向かう。

途中、二人を気にかける元兵士と出会う。彼は心ならずもクルド人虐殺にかかわったことを悔いている。アーメッド少年は彼になつくが、老母は近づかないで、と彼を拒絶する。

二人のイブラヒムを探す旅の行方は・・・。

-------------------

息子を探す母を演じる女性は、プロの俳優ではなく、政治的な理由から、2度にわたり計5年以上も収監され、その間に子どもを失い、夫は彼女の服役中に収監され、その後20年以上も夫を探し続けたという、映画と同様の過酷な人生を送ったひとだ。

アーメッドを演じるヤッセル・タリーブ少年、監督は彼の目を見て、起用を決めたという。時折、大人のような表情になるのが印象的。

イラクでは過去40年間で、150万人以上の人々が行方不明となり、これまでに300の集団墓地から何十万もの遺体が見つかっているとのこと。名前のわからない遺体も多いという。

ベルリン映画祭に出品され、アムネスティ国際映画賞・平和映画賞を受賞。重い、悲しい話だけれども、余韻は決して暗くない。ましてや退屈ではない。イラクオールロケの風景の力、老母と少年の存在感がすばらしい。
「バビロンの陽光」_c0155474_22463651.jpg


by sustena | 2011-06-19 01:04 | Theatre/Cinema | Comments(8)
Commented by Lucian at 2011-06-19 20:53 x
イラク戦争はアメリカによる大義のない侵略と占領でした。
派遣された自衛隊員は35名も亡くなっています。
今月イラクを訪問中だった米国の議員団は、「民主化してやったのだから戦費の一部をイラク政府が負担すべきだ」と発言してマリキ首相から激怒され追い出されてしまいました。
日本政府のように思いやり予算でもくれると思ったのだとしたら狂気の沙汰ですね。
Commented by sustena at 2011-06-19 22:07
Lucianさん、たった今ピューリツア賞作家のお父さんと沖縄戦の話のNHKのドキュメンタリーを見たところです。戦争に大義というのはあるはずもなく、しかし戦争や内戦がなくなることはない。 なぜなんでせうか・・・・。
Commented by jmiin at 2011-06-20 05:21
この赤いハネが、いかにも長距離を飛んでいる最中です。と言う感じ
です。
こう言う風景、ここ最近全然見てないなぁ.....
Commented by sustena at 2011-06-20 21:44
jmiinさん、時折無性に旅に出たくなります。しかも、会社からのジャマが入らないケータイも通じないようなところに。今年は無理かな・・・。
Commented by iwamoto at 2011-06-21 21:06 x
飛行機が好きで、写真もよく見るのですが、相変わらず「イイトコ突いてますね」。
練られたものでないことは感じますが、それを魅力に変えることが出来る、って羨ましいなぁ。

我が家ではイラン映画の人気が高いので、イラク映画も人気が出るでしょう。
Commented by higphotos at 2011-06-23 13:19
カッコイイ写真ですねぇ。
飛行機に乗るたびに、頑張って撮ってますが、なかなか上手くいきません。
旅情があって素晴らしいです。
Commented by sustena at 2011-06-24 21:58
iwamotoさん、イラン映画ってアッバス・キアロスタミとか、バフマン・ゴバディとか??  ほんとはリビアの写真を載っけようと見返したらら、風景がだいぶ違うので、リビアから戻ってきたときの飛行機をひょいっと入れたのー。私はちゃんと練ったタメシがありません。
Commented by sustena at 2011-06-24 21:59
higphotosさん、このところ私は飛行機に乗ると(国内線の場合)、だいたい翼の上ってことが多いのです。遠くのときは、基本的には通路側に坐るので、短い距離のところだけですね、窓際になるのは。


<< 横丁の朝市      松本大洋『100』 >>