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2010年 09月 04日

本間千枝子『誇り高き老女たちの食卓』

c0155474_11131178.jpgタイトルにひかれて、本間千枝子さんの『誇り高き老女たちの食卓』(2009年12月刊 NTT出版)を読んだ。
きっと私のことだよねぇと想像して手にとったのである。

著者の本間さんの夫は、アメリカ研究者の本間長世氏である。ああ、もっとあの先生になついて、お宅におじゃまして、千枝子さんのお料理をごちそうになるのだった、と私はこの本を読んで悔やんだのであるが、後の祭りどころの話じゃない。

さて、どんな本かを私があれこれ書き連ねるより、この本の章立てを眺めるだけで、ずっと読みたくなる気持ちがおきるに違いない。

   幼女から老女へ―ままごと遊びの数かず
   鶉料理は究極の男女愛を育てる
   鱈の白子はぜったい山葵で
   出会わなかった祖母と虎杖・のれそれの味
   たすき掛け鮟鱇の肝酢和え
   「鮭神話」とわが花咲猫の思い出
   レバノンの名菜タブーリと「キリストのオリーヴオイル」
   蛸残酷物語のギリシアから
   雉は十字軍の勝鳥・そいつを日本酒で!
   いごっそうのものづくり―生きとし生けるものへの愛
   豚による世界貢献
   ピュア・フードという前衛
   誇り高き老女たちの食卓

どの章もいろんな発見があるのだが、私がことに好きなのは、鮟鱇の肝酢和えについての話である。

千枝子さんの育った家では、鮟鱇といえば鮟鱇鍋だった。ある日、千枝子さんが魚屋さんで鮟鱇を手に入れて、今日は鮟鱇と話していると、同居している夫君の長世氏の祖母であるうたさんが、「自分が作る」と部屋から出てくる。ふだんは料理には手出しをせずに、千枝子さんのつくる料理を、気に入ったときは「珍しくて、おいしいものは七十七日生き延びる」と呟くが、たいていは「物の中に味を見つけて食べる」と謎のようなことを(要はちょっと気にくわない、おいしいとは思えぬときの表現であるらしい)言うのが常なのだが、俄然たすきがけをして陣頭指揮をふるったのである。そして出てきた鮟鱇の肝酢だが、これがおそろしく甘かった。お汁粉みたいに甘いのである!
千枝子さんはなんとかしてこの肝酢を自分流に酒の肴として楽しめるものにアレンジしたいものだと思う。

ところで、このうたさんは、ウーマンリブの先駆けのような人で、女は嫌い。男とを男と思わぬ唯我独尊の人で、自分の生きた時代に属さぬ日本の女、と千枝子さんは評する。女子医専進学をめざすが、入試の目前に父親が突然亡くなり、意に染まぬ結婚を強いられ、子に望みを託すが自分ほどの才覚はないと悟るや、妻と母の役割を次にしてお家再興をめざして必死に努力を重ねた女傑であるらしい。

そのうたさんの秘蔵っ子が長世氏なのだ。「私が自分で嫁にいきたいような人に育てたんだから、それをあなたにくれてやった私を大切にして欲しいわね」と千枝子さんに向かっていう。その一方で、睡眠不足のいらいらした母親では大らかないい子が育たないから「お皿洗いでも、おむつの洗濯でも何でも、長世が帰ってきたらさせておしまい!」と命じるのだ。う~ん、すてきなうたさん♪

千枝子さんは、その後「つきぢ田村」の初代・田村平治氏に日本料理のてほどきを受け、料理の腕をあげる。その頃から千枝子さんはうたさんの信頼を得、ついには「敵にとって不足はない人だね!」と言わしめるのである。
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by sustena | 2010-09-04 10:57 | 読んだ本のこと | Comments(0)


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