2010年 07月 23日
柳 広司さんの『ダブル・ジョーカー』(角川書店(2009年8月刊)を読む。 帝国陸軍内に設置されたスパイ養成学校“D機関”をめぐる連作短編。吉川英治文学新人賞&日本推理作家協会賞をW受賞した『ジョーカー・ゲーム』シリーズ第2弾である。ジョーカー・ゲームのほうは読んでいないんだけど、まずまず評判がよかったので、図書館から借りたのであります(なんとまぁ、予約してから順番がまわってくるまで、10カ月近くかかった)。 D機関に属するスパイたちがたたき込まれるモットーは「死ぬな、殺すな」ということ。ふつう、スパイというと「躊躇なく殺せ、潔く死ね」がお定まりだけど、このD機関は、実にクールで知的で戦略的なのである。発案者は結城中佐で、この連作のなかでも、「柩」という作品で、彼の過去が語られる。超スーパーマンでカッコよすぎ。 表題作は、陸軍内で、もう一つの秘密諜報組織“風機関”が設立された。しかし、一つの組織に同じカードは二枚も要らない。どちらかがスペア。風機関とD機関はまったく対照的。どちらが勝つか?というお話。 このほか、北支前線の野戦病院を訪れた笑わし隊という慰問団の中にスパイ・ハンター「笑わぬ男」が紛れ込んでいるとの情報を得たモスクワのスパイ、脇坂軍医は・・・(蠅の王)、暗号電文の打電を任された高林は、ある夜、何者かに襲われ、九死に一生を得る。助けてくれた男の頼みに応じて仕事を引き受けるが・・(仏印作戦)、ベルリン郊外で起きた列車事故で事故死した日本人がスパイだとヴォルフ大佐は見抜く。犬たちをあぶり出すために罠をしかけるが・・(柩)、 「D機関」のスパイ・仲根にはバードウォッチングという共通の趣味を持つアメリカ人の妻がいる。アメリカの情勢を分析する彼を待っていたのは・・・。(ブラックバード) つるつる読める。うーむ、こんなに優秀なスパイ組織がいたら、戦争に突入なんてしなかったよねぇ・・・。 現実のみじめさ、重さとは別世界のクールなスパイものであります。ミステリだけど、作者の出す情報で謎解きはできない。ストーリーの軽やかさにほほぉと読む感じね。深みを求めるひとには向かない。
by sustena
| 2010-07-23 22:17
| 読んだ本のこと
|
Comments(2)
Commented
at 2010-07-24 06:58
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
sustena at 2010-07-25 21:24
Pくん、坂東 眞砂子みたいなまがまがしさはないですよー。
0
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
全体 GRDIIレッスン LX3 カメラ・レンズ・写真レッスン 看板・サイン・ポスター Theatre/Cinema/Music Art/Museum 読んだ本のこと 食べ物 旅 小さな自然 まち散歩 つれづれ 以前の記事
最新のコメント
お気に入りブログ
みてみてリンク
タグ
銀座(597)
花(373) 鳥(226) GRDII(189) ランチ(172) ショーウィンドウ(164) 顔(133) 酒肴(88) 京都(88) モノクロ(83) 公園(81) 西荻窪(76) 空(74) 工事中(57) 桜(52) 中国(48) 建築(47) 新宿(47) 夕景(44) 渋谷(41) 記事ランキング
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||